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ここの人達は皆ルーイ派だろう。成就を願っている者ばかり。
「・・・(いや、あの人はどうだろう?)」
みやの中で一人浮かんだ。
きっと一部は居るはずだ。自分をよく思っていない者が。
こんな平凡な娘で、どこの誰とも分からぬ上に、異なる世界から来た者を、大事な王子様に嫁がせるのには反対だと思っても当然だ。
きっとあの人なら違う意見を持っているのでは?と思い、みやは会いに行く事にした。
パラディンに聞けば、竜王様の執務室に居る可能性が高いと言うのでそこに向かう。
「・・失礼します・・」
扉を開けてもらい入ると、確かに居た。竜王様と一緒に居る。
クリーム色の髪を緩く三つ編みにした、線の細い身体つきのその人が。
「おぉ。ミヤ、どうしたのだね? ルーイはここには居ないが?」
逸早く席を立って迎え入れてくれたのは竜王様のアイル。
「あーいえ・・その、、お仕事中すみません」
「いやいや良いのだよ。顔を見れて嬉しい。 さ、取り敢えず座って。お茶でも飲むかね?」
王様自ら接待して歓迎してくれる。
最初のインパクトが大きいが、今は抱きついて来なくなったのでホッとしている。
「あ~のいえっ、、お邪魔をしに来た訳ではなくてー。ちょっとお伺いを立てに来たんです。その・・、ベルネさんに・・」
「? ベルネに用なのかい?」
「?」
「はい。 その、、手が空いた時に、少しお時間を頂けないかと。 ちょっとだけ、お話をお聞きしたくて・・」
「私と話、ですか 」
「はい。 あの、急ぎではないので、お忙しければ、日を改めて、都合の良い時で構いませんから」
手をもじもじとさせて伺うみや。
ベルネはどうしましょうか?とアイルに目で問う。
アイルはみやの様子を見て、一つ頷いた。それにベルネも返す。
「では近くの個室に行きましょう。お茶もそこで」
「え、いいんですか?今からで?」
「良いのだよ。私も息抜きがしたかったのだ。仕事もウイリスがおるし、さして忙しい訳ではないからね。ただ、今度は私と一緒にお茶をしてくれると嬉しいかな」
気遣いをさせないように促してくれ、みやはお礼を言うとベルネに案内されて一室へ通された。
「さぁどうぞ。こちらにお掛け下さい」
ちょっとした会議が出来そうな部屋。長テーブルとそれを囲む様に置かれた椅子の一つに座る。
パラディンが直ぐにお茶を用意して、傍に居ようとしたがそれは断って扉の外で待ってもらった。
取り敢えずお茶を頂く。こちらのお茶は、フルーティーなハーブティーが一般的なようだ。
「それで、私から何をお聞きになりたいのですか?」
ベルネはちゃんと聞いていた。話がしたいではなく、自分から何か聞きたいと言うことを。ウイリスでもルーイでもパラディンでもなく。
みやは言葉を探しながら口を開く。
「あの、・・・、正直なところをお聞きしたいんです。・・・、私の事を、、どう 思いますか?」
「・・・。どう、とは?」
「えと・・そのままですけど・・?」
ベルネは少し考えた後に答える。
「ー。 そうですね。 お可愛らしく、才有る方と思います」
「・・・花嫁としては、どうでしょうか・・?」
「・・・。 それは私の意志で決める事ではありません。 が・・、良いご縁だとは思います。ー、何がご心配なのですか?宜しければご相談下さい」
みやはスカートを拳で握る。
「ーー、私・・・ 私・・・・・・、 すみません・・」
「ー。いいえ、焦らなくても良いです。 ゆっくりで構いませんよ」
思い詰めるみやの手を上からそっと包む。
みやはゆっくりと深く息を吐き、聞いてみた。
「・・・ベルネさんは、私が花嫁になる事を、、良い・・と、思っているんですか?」
「? まぁ、そうですね。 何故です?」
「だって・・・、 私、余所者ですよ? 素性も知れないし・・、 悪い女だったらどうするんですか?」
「!・・・?」
「しかも国を担う王子様に嫁ぐ相手です。もっと慎重になるべきでしょう?そう思いませんか?こんな平凡な娘が、お姫様らしくもない女性がですよ? きっと良く思ってない人だって居るはずです。 皆親切過ぎるんです。ルーイの想い人だからと言うだけで。 パラディン達も私に人員を割きすぎると思います。監視と言う意味合いがあったとしても、客人に対して多いですよね? ルーイは今は好きだと言ってくれていますが、会いたかった想いが募って熱くなっているだけかもしれません。その内、私の事を知っていけば、呆れられるかもしれないし・・。その、私もルーイの事は好きですけど、友達としてですし、カッコイイからドキドキもしてますが、恋なのかは、分かりません。告白されたのは嬉しいです。でも、結婚とかはまだ考えられないし、自信もありません。 皆さんには申し訳ないと思います。 あまり長くお世話にはならないようにしますが、まだ将来的な事は考えてなくて。なので、それまでは滞在させてほしいなと思っています。すみません・・」
みやは今までの気持ちや考えを一気に話した。
ベルネは暫しポカンとして、聞いた事をリピートしながら考えた。そしてはっとする。
「ーー。 ここを、出て行かれる事を視野に入れておいでなのですか?」
最初に聞いたのはそこだ。
「あー、はい。 もし帰れなくても、一人で何とか生活していかないといけないですから。 ですから勉強して、最低限の知識でも付けようと思っています」
「・・・・・・」
ベルネは心の中で少々苦く思った。その為に読み書きを習ったりして本を読んでいるのかと。
普通の女性と同じに考えてはいけなかった。彼女は聡明だと。
「ミヤ姫様、今暫しそのお考えはお待ち下さい。 ルーイ王子に関してもパラディンに関しても、勘違いをしておいでです。」
ベルネは真剣に言い聞かす。
「まずルーイ王子に関してですが、王子の気持ちは固まっておいでかと。その石を贈ると言う事は、そう言う事なのです。貴女以外に娶る女性は居ないとの意志も伺っております。今一度、お話をし合って下さい。 そしてパラディンですが、彼等は決して監視として居るのではありません。貴女に自然と惹かれているのです。命だから、務めだからと言うだけでお傍に居る訳ではないのですよ。ー。期待をかけてしまっている事をお許しください。 ですが、ルーイ王子の事をもっと好んで頂きたい。 今はまだ分からぬ感情も、きっと答えが出るでしょう。 無理をなさらずに、もっと甘えて下さい。 それと、女性に悪い者などおりません。勿論ミヤ姫様もです。あるとするなら、それはそうさせている者が悪いのですよ。 貴女は確かに他の世界からいらした方なのでしょう。ですが、それを余所者と軽蔑したり、見放すような薄情な国ではありませんから、ご安心ください。 女性は全て大切にされるべき存在です。何処から来たかと言うのは、問題ではありません。貴女が来た事は我々にとっては歓迎すべき事なのです。宜しいですね?」
「・・・ はい・・ 」
少々、ベルネの印象が変わった。どちらかと言うと冷たい人なのかもと思っていたので、ちょっと意外だ。冷静で真面目で賢い故に、その厳しい面がそう見えたのかもしれない。
話が終わり席を立つと、ベルネが一つ尋ねた。
「宜しければ伺いたいのですが、何故私に?」
何故自分を選んだのかと問う。
「え。・・あぁー。あの・・、自分の感情だけではなく、冷静にきちんと判断して下さりそうだなぁと思って。 あの、望ましくなければ、いつでも出て行きますから、大丈夫です。覚悟はしてますから。 失礼します」
「・・・・・・」
みやが出て行った後、ベルネは少しの間そこに居て、冷めたお茶を飲んだ。
ベルネも以外と熱い一面を持つ人でした。




