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異なる世界から来たと言う少女。そして、竜王の花嫁となるやもしれぬ姫。
習慣の違いから多々難しい所があるようで、先程も一人で入れると湯殿へ入っていった。
どうもミヤ姫様にとってはあり得ぬ事だったようで、非常に取り乱されていた。後で詫びなければ、とエリネは思い一人息をつく。
「(馴染んで下さるだけでも時がかかるか・・・)」
ここに嫁ぐ花嫁は少なからず驚いたりもするし、始めは慣れないと言う。それは“竜王の花嫁”と言う特別な職業からくる役割にある。
普通は嫁ぐ時に呼ばれる花嫁と言う言葉。しかし“竜王の花嫁”とはこの国の職名。嫁ぐ前から次の花嫁まで続くものなのだ。
その役割は主にパラディン達、ひいては竜族と共にある事だ。お互いの関係には切れない絆があり、共にある事が自然な形となる。
恋愛でもなく信頼と敬愛、親愛の情が生まれ、心惹かれる存在なのだ。
竜王様と竜王子様の想いあって今は距離をとっているが、パラディン達の中では既に惹かれている者が少なくない。竜騎士として自制しているが、ミヤ姫様の心がここに、そして我々にないまま去って行かれるかもしれない。そんな時が来なければと願うが、それを思うと心が苦しみ悲しむのは、自分も既に心惹かれていると自覚する。
「(どうか どうかお二人が結ばれますように。 そして、ミヤ姫様のお心を少しでも我々も支える事が出来ますように )」
エリネは総天地竜様に祈る。
「エリネ」
一人思いに耽っていると同士に呼びかけられた。
「何だ?」
「ミヤ姫様が心配なんだが、、中に入っても良いものか・・」
「どうかしたのか?」
「それがお返事が無いのだ。一度声をおかけした時は直ぐに返ってきたのだが、もう随分経つ。流石に長いのではと今先程も声をおかけしたのだが、物音一つしない」
確かに長く思い巡らしていた気がする。
「分かった。私もご様子を伺ってみよう」
湯殿の前には同じように心配する者達がいた。
エリネも前に行き片膝をついて、中に居るだろうみやに声をかけた。
「ミヤ姫様、エリネです。如何されましたか?」
数秒。 確かに静かだ。
「ミヤ姫様? ・・・ 」
おかしい。気配はあるが、静か過ぎる。
「ー。 ミヤ姫様、中に入っても良ろしいですか? ご返答が無ければ入らせてもらいますが」
それから10秒程待ってみたが返答も物音さえ無い。
意を決してエリネは戸に手をかける。
「ミヤ姫様失礼します」
何かあったのでは。若干焦り中へ入る。
そして目に飛び込んできたその姿は・・。
「っ!! ミヤ姫様っ!」
まだ濡れたままで布も巻き途中で倒れている姿に、嫌な予感が的中したのを知った。
慌てて傍まで行ってその身を確認する。呼吸を確かめ脈拍をとった。
「エリネっ・・」
他の者達も息を詰めて見守っている。
「ーーー 大丈夫だ。 だが念の為医竜を」
「分かった」
直ぐに行動する。
エリネはそっとミヤ姫を抱き起した。
「申し訳ありませんっ。・・もっと早く気付くべきでした」
「それはいい。それよりお体を拭いて寝間着を」
「「はいっ」」
3・4人がかりで丁寧に迅速に世話をして、そこからベッドに運ぶ。
そっと静かに横に寝かし、冷えないように布団をかけた。
顔に触れてみると火照っているように思う。
「ジェルゥ、水桶と布の用意を」
「はっ」
気が落ち着かないまま暫く、気を失っているミヤ姫の手を握っていた。
やがてテラスから医竜が3人入って来た。
「倒れられたそうだが、ご様子は?」
「気を失っているままだ」
「原因は分かっているのか?」
「ー、大分長く湯殿におられたが、いつお倒れになられたのかは分からない。直ぐ側に配備させていたが、ミヤ姫様のご習慣で、お一人で入られていたのでな・・」
「・・・」
医竜は何かを言おうとして辞めた。その代わり同じ医竜に指示を出す。
「レミィ、打ち身が無いか確認を」
「 うん 」
「アロン、容体は診断出来そうか?」
「ー。 多分、湯あたりだろう。 特に異常は見られない」
「顔の左側のここを少し打ったようですが、湿布で大丈夫そうです」
「 そうか 」
医竜達は手際よく治療する。
湿布を患部に貼り、水で濡らした布を額に載せると、パラディン達に注意事項を伝え、また明朝来ると去って行った。
取り敢えずホッとして、エリネは後を任せて報告をしに出て行った。
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