15
“ ピピピピピ ” “ チチチチ ”
外から小鳥のさえずりが聴こえる。
「・・・・・・・・・・・・ ! 」
みやはバッと起きた。
「(今何時っ?)」
窓を開ける。陽はまだ横にある。
朝の空気に深呼吸。良い天気に気分はサッパリだ。
軽くストレッチしてからベッドメイキングする。
掃除道具が無いので、誰かがやるのだろうと思う。
するとナッチも起きた。
「お早うございます、ナッチさん」
「あぁ・・ はよぅ・・」
と大きく欠伸。
「私先にご飯食べてくるので、その間に着替えといて下さいね」
「んー」
生返事にみやは笑い食堂へ。
寝間着だが日本で言うジャージ的な感じなので、他の人でも着替える前に居る人もいる。要は何かあってもそのまま外に出れるようにと言う事だ。
朝食を食べたその後は、櫛を1本借りてきて部屋に戻った。
一応ノックをして入ると、ナッチは荷造りを終えたところだった。
「ナッチさん、朝と昼の半ばって後どの位かなぁ」
「ん?んんー。 まだ大丈夫だろ。後どうせ服だけだろ?余裕じゃないか?」
「うん。でも今日は念入りにしないと。身嗜みは大切だし」
「そっかそっか。まぁ空飛んでる内にそんなの分からなくなるんじゃないかと思うけどな。俺はよく知らないけど」
微笑ましい目で指摘する。
「・・・、あ~~~っ そうなのかっ う~~~・・ どうしよう こんな事ならピンとかワックスとかもっと携帯しとけば良かったぁー 」
「? まぁ、精々励め。 準備出来たら降りて来いよ。忘れ物すんなよ?」
「はぁーい」
ナッチがドアを閉めて行くと、みやは着替えを開始した。
サイズが気になっていたが何とか着れた。
「あ~、ちゃんとした鏡欲しい~」
そう言いつつ髪を梳かす。念入りに櫛を入れてから、一部を三つ編みにし、それごと今度は編み込みをする。右から左へと作り、始めから付けていた3本のピンでバチバチっと留め、止めに髪飾りを付けた。
髪飾りの位置は昨晩、浴室の小さな鏡で試着済みだ。
服の上をパンパンと払い、変じゃないかなぁと裾をひらひらしたり、髪に手を当てたりして確認。
「下の鏡でチェックするか」
とみやは荷物を持って部屋を出払った。
ここにはもう大体が朝一で居なくなっており、昼まで居る者はいないので、もう数人しかいない状態だった。
みやは服をカゴの中に入れると、鏡の前で最終チェック。何せ小さいので近づいたり遠のいたりと忙しく動く。
「ま、靴は仕様がないし、いいよねっ。 よしっ♪」
行くぞ! と気合いを入れてナッチの所へ。
ひょこっと顔だけを食堂に覗かせて見たが、2名程が遅めの食事を取っているだけでそこにはいなかった。なので外へ。
探すとナッチは木の木陰で何やら古そうな紙を広げて見ていた。
「ナッチさん、お待たせしましたっ」
「あぁ、じゃ・・あ・・・? ええっ!? 」
みやを見たナッチはその場でフリーズし、驚く。
上から下へ。下から上へ。視線を往復させて口をあんぐり。それ以上の反応が出来ていない。
「え?・・・・・変?」
「うん・・・ ! いやっ そうじゃなくてっ そ、・・その服は一体・・・?」
思わず頷いてしまって慌てて訂正するナッチ。
「これ?カワイイよね。 パラディンの人が昨日持って来てくれたの。ルーイからだって。あ、王子様ね。 この髪飾りもなんだよ。 結構頑張ったんだけど・・、これじゃあダメかなぁ?」
「・・・いや、可愛い・・ 全然ダメじゃない・・」
「本当? 良かったぁ」
「!ぐっ・・・ ! い、いや、いやいやいやいやいやっ ちょっ ちょっと待ってぇ・・ ーー どういう事なんだ? 俺、もしかしてまだ寝てる??」
笑顔にやられたナッチは冷静になろうとしている。でもパニックだ。
「何でっ? ! あぁごめんっ。 いや、ミヤ・・・ えっとー そのぉー それ、 女の子のだよな?うん、どう見てもそうだよな?だが、それは一体どういう事なんだ?・・・」
一度肩を掴んで慌てて離す。
問いかけながらも自問している様子は、取り乱して動揺しているのがよく分かる。
「落ち着いてナッチさん。大丈夫ですから。」
「いやいや、だってミヤが女の子になっててな? 何でだ?どうして?」
「やだなぁナッチさんったら。私は始めから女の子ですよ」
「あぁ、そうか、始めから女の子ね。そうかそうか、そうなんだぁー・・・・・・ は? ええぇっ!? ・・ウソ・・・ えええぇ~~~~~~っ!!」
それはそれで大変ショッキングな新事実。その衝撃的な真実はナッチを震撼させて身を崩した。よろよろと木の幹に縋りつかないと支えられない状態だ。
「そこまでしなくても。ちょっと失礼です。 私は私ですからね。何故か皆さんが勘違いしてただけですから」
「 いや・・・ うん・・・ 」
ナッチは当分立ち直れないのではと言う風に呆然としている。それを見てみやはクスクス笑った。
とそこへ。
「失礼します。少し宜しいですか?」
「え? あ・・」
ベアだった。みやに会釈をして断りを入れる。そしてナッチの方を見てちょっと冷ややかに言う。
「ナッチ、ミヤはどうした?まだ中に居るなら呼んで来い。今先程 王子様御一行が到着なされた。」
「え・・・・・・?」
木の幹にコチンと頭を当てて現実逃避していたナッチは、は? と言う顔で振り向いて見た。そしてみやを見て、そこからまたベアを見る。
「何をしている。早くしろ。面倒は最後までみる」
「・・・、いや、 いますけど? 目の前に・・・」
と指差して答える。しかしベアは気付かない。
「? どこにだ?」
「・・・・・・ベア殿・・・」
そこでみやが発言する。
「・・あの、ベアさん。私なら居ますけど。 身支度も終わりましたよ?」
そう言うと。
「・・・・・・・・・・・・」
ベアは固まった。上から下へ。下から上へ。ゆっくり目だけ動かして、瞬き以外微動しなくなった。
「・・・ベアさん?」
それを見てナッチが復活した。
「やっぱそうだよなっ そうなるよなっ? あ~良かったぁ。俺だけじゃなくて」
うんうんと頷き胸を撫で下ろす。そして。
「ミヤぁ~~っ」
「!わっ?」
ナッチはみやに抱きつく。
「何でもっと早く言わなかったんだっ。そしたらもっと愛してたのにぃ~~」
「ええ? な、ナッチさん~?」
「あぁ~、このナッチ一生の不覚ー! 人生最大の大馬鹿野郎ーだっ!」
とギュッと抱き締めてスリスリ。みやはジタバタと手を動かす。
「わ~わぁ~~っ ナッチさんっ もうっ 折角セットしたのにっ。 髪が崩れちゃうじゃないですか!」
「んふふ~♪ かーわーい~~!」
と口を寄せてきたのでみやは慌てて避けて手で防ぐ。
「近い近いっ! 離れてーっ。 ベアさんっ 何とかして下さいっ。 助けてっ」
「っ!」
それまで固まっていたベアは、はっと我に返りナッチからみやを引き離して自分の腕に囲う。そして剣を引き抜く。
「不作法だ。しかも無理強くとは男として最低としか言えんぞ」
「ひょ、ひょえ~~・・・」
剣を向けられ両手挙げ。
ベアは剣を納めると、一歩身を引きみやの前に膝を折る。
「申し訳ありません。私の至らぬところでとんだ事を。しかも女性の身であると気付かなかったのは私の汚点です・・。どうお詫びすれば良いか、本当に・・・」
と拳を硬くする。
「ええ?いえ、いいんですっ、私が決めた事だし、誰も悪くありませんからっ。 短い間でもここに居れて良かったですよ。仕事は大変でも楽しかったです。ありがとうございます」
「・・・・・・」
ベアは目を伏せて頭を下げた。
「で。 お迎えが来たって言ってなかったか?」
「あ」
そうでした。
「えぇ、では行きましょう。 荷物をお持ちします」
「え。いえ、そんな重くないし、大丈夫です」
「いえ、お持ちします」
ベアは譲らない感じだ。
「はあ・・。じゃあ、 お願いします」
手荷物を持ってもらい案内される。
ベアにエスコートされて、ナッチもついてくるようだ。




