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自覚なし最強? いや、偶然と運だけです!〜ポンコツ魔法使いと臆病剣士と普通の村人の成り上がり冒険  作者: 凪塩 未来


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第8話:街の酒場でのひとコマ。じわじわと高まる周囲からの期待

第7話をお読みいただきありがとうございます!


偶然の(というか凄まじい確率の)落とし穴によって、暴れ魔獣を無傷で捕らえてしまったミランたち。

本人たちの必死の弁解もむなしく、街の人々からは「神業のような戦術眼」と勝手に崇められ、彼らの伝説(?)はさらに不気味なスピードで膨れ上がっていきます。


第8話「街の酒場でのひとコマ。じわじわと高まる周囲からの期待」、どうぞお楽しみください!

「カンパーイ!!」


ロンドールの中心街にある、ひときわ賑やかな大衆酒場『酔いどれ亭』。

その一角の特等席で、街の住民たちから次々と差し入れられた極上のエール麦酒と、ジューシーに焼き上げられた大型鳥の丸焼きがテーブルの上に山のように積まれていた。


「ふあーっ……! うまっ! このエール、昨日までの道端の泥水みたいな水とは比べ物にならないくらい美味いぞ!」

ザックはジョッキを両手でわしづかみにし、豪快にビールを喉へと流し込みながら至福の表情を浮かべた。

その隣で、ジャックはフォークとナイフを上品に使いこなしながら、高級な肉料理を味わっている。元貴族の血筋という設定(もはや半分本気かもしれない)をここぞとばかりに発揮し、周囲の冒険者たちから「さすがは歴戦の英雄、テーブルマナーまで完璧だ……」と羨望の眼差しを集めていた。


しかし、当の本人のミランだけは、山積みにされた金貨の入った革袋と、豪勢な料理を交互に見つめながら、深いため息をついていた。


「おい、二人とも……落ち着いて飲み食いしてる場合じゃないだろ、これ」

「ん? どうしたのミラン、そんなに暗い顔して。お肉美味しいよ? 食べる?」

「そういう問題じゃない! 俺たちはな、実力も何もない、ただの村を追い出された凡人三人組だぞ。なのに、盗賊団を壊滅させ、今度は一滴の血も流さずに最強の魔獣を陥落させた『伝説の英雄』として祭り上げられている。これ、いつかメッキが剥がれた瞬間に、街中から石投げられて追放されるどころか、別の意味で命狙われるぞ……!」


ミランの切実な訴えに、ザックはぐびっとビールを飲み干し、けろりとした顔で答えた。

「うーん、でもさミラン。今さら『実は全部まぐれでした、ごめんなさい』って言える雰囲気だったか? あの衛兵隊長の輝かしい瞳を見たか? 市長さんの感動の涙を見たか? ああいう人たちに真実を告げるのは、かえって残酷ってもんさ」

「残酷なのは俺の胃の穴だよ! 胃潰瘍で死ぬわ!」

「まあまあ、ミラン。案ずるより産むが易しってやつさ。ほら、飲め飲め!」


ザックが無理やりミランのグラスにビールを注ぐ。

その時、ガタッと酒場の扉が勢いよく開き、一人の男が血相を変えて飛び込んできた。それはロンドールのギルド職員らしき男だった。


「み、大変だ……っ!! 皆の者、聞いてくれ!」


酒場の喧騒がピタリと止まる。全員の視線がその職員に集まった。

「どうした、そんなに慌てて。またどこかの魔獣でも暴れたのか?」

酒場の親父がビールジョッキを拭きながら声を飛ばす。

職員は荒い息を整えながら、信じられないといった様子で叫んだ。


「たった今、王都からの使者から急報が届いた! 我々が『嘆きの森の魔獣』を討伐した件が、すでに中央の貴族院や騎士団の耳にまで届いたらしい……!」

「ほう、王都にまで! さすが俺たちの英雄様だな!」

「それだけじゃない……! なんと、王都の最高評議会から、我がロンドールの英雄たちへ向けて、正式な『勅書(しょくしょ)』が発令されたんだ……っ!」


酒場の中が、「おおおおっ!」とどよめいた。

一般の街の表彰にとどまらず、ついに王国の中枢からお墨付きがもらえるというのだから、盛り上がらないわけがない。


その言葉を聞いた瞬間、テーブル席でビールを飲んでいたミランの動きが完全にフリーズした。

(((ちょっ……待て待て待て!! 王都からの勅書って……!? 話が大きくなりすぎてないか!?)))


冷や汗が滝のように背中を伝う。

「王都の勅書だと……? ふっ、ついに中央の政府も、我が実力を無視できなくなったか」

ジャックはすまし顔でワイングラスを傾けていたが、その手が微妙にプルプルと震えているのは見なかったことにしておこう。


「で、その勅書の内容はなんだ!? 王都に呼ばれたのか!?」

誰かがそう叫ぶと、ギルド職員はごくりと唾を飲み込み、声を大にして言った。

多様な期待を一身に背負い、職員は胸を張って宣言する。


「うむ! 勅書の内容はこうだ――『近年の魔王軍の不穏な動きに対し、真の勇気と機知をもって民を守りし若者たちを、我が王国の「正式な勇者パーティ」として認定する。速やかに王都へ参内し、魔王討伐の命を受けよ』――とのことだ!!」


静まり返る酒場。

次の瞬間、割れんばかりの絶叫のような大歓声が巻き起こった。


「「「うおおおおおおおおっ!! 勇者様万歳!! 魔王討伐隊万歳!!」」」


酒場の客たちは歓喜のあまりビールを空中に放り投げ、見ず知らずの人と抱き合い、お祭り騒ぎを始めた。

街の英雄から、一躍「国の正式な勇者」へのステップアップである。誰もがこの奇跡的な大抜擢に酔いしれていた。


――ただし、テーブルの隅に固まっていた三人を除いて。


「「「…………」」」


ミランは白目を剥きかけ、

ザックは持っていた鳥の丸焼きをポトリと床に落とし、

ジャックは完全に魂が肉体から抜け出していた。


「……なぁ、ミラン」

ザックが震える声で呟いた。

「俺たち、気づいたら『魔王討伐の命』を受けるところまで来ちゃったんだけど」

「……うん。笑い事じゃなくて、ガチで逃げ出さないと、今度は世界中から追われるお尋ね者になりそうだな」

「どうする? 王都に行く?」

「断ったら確実に不敬罪で即座に処刑されるだろ……」


ミランは天を仰ぎ、ぐったりと椅子にもたれかかった。

自覚なしのポンコツ三人組の運命は、もはや彼らの意思を完全に置き去りにしたまま、壮大で不可解な「魔王討伐の旅」へと突入しようとしていた。

第8話をお読みいただき、ありがとうございます!


魔獣討伐の噂が瞬く間に王都まで届き、ついに「正式な勇者パーティ認定」と「魔王討伐の命」まで下されてしまったミランたち。

本人たちはただただ冷や汗を流すばかりですが、周囲の熱狂は止まりません!


次回、第9話「貴族のいざこざと『平和の使者』」へ続きます!

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