第5話:街の英雄として祭り上げられ、戸惑う三人
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盗賊団を偶然(と大惨事)で壊滅させただけなのに、なぜか街の「英雄」として祭り上げられてしまったミランたち。
否定すれば処刑、肯定すれば詐欺という究極の二択の末、見事に「乗っかる」道を選んだ彼らを待ち受けるのは――?
第5話「街の英雄として祭り上げられ、戸惑う三人」、どうぞお楽しみください!
「――というわけで、ロンドール市民の安全を守ってくださった真の英雄殿方には、この街の特製メダルと、ささやかではありますが報奨金を授与いたします!」
ロンドールの豪華な市庁舎の一室。
ピカピカに磨き上げられた大理石の床の上で、街の市長らしき立派な髭を生やしたおじさんが、感極まった面持ちで三人に重厚な金のメダルを首にかけてくれた。
ザックは「わあ、なんかピカピカしてて綺麗だねえ」と呑気にメダルを指で弾き、
ジャックは「ふっ、当然の報酬だな」と元貴族風の澄ました顔を崩さず、
ミランは内心で「これ、あとで詐欺罪で発覚したら全財産没収どころか一生牢屋行きじゃねえか……!?」と冷や汗を滝のように流していた。
手渡された袋の中身を確認すると、ずっしりと重い金貨がジャラジャラと音を立てた。
村の借金を返してお釣りが来るどころか、これからの人生で一生遊んで暮らせるレベルの金額である。
「お、おいミラン……これ、マジでヤバくないか? 俺たち、一文無しの野良犬から一瞬にしてセレブになっちまったぞ……」
ザックが小声でミランの服を引っ張りながら、震える声で耳打ちした。
「俺に言うな……! もう引き返せないところまで来ちまったんだよ。ここは無言の貫禄を貫くしかないんだ!」
「元貴族の俺から言わせれば、棚からボタ餅とはまさにこのことだな。ふっ、運も実力のうちというやつさ」
「お前はさっきまでスライムの幻覚見てビビってたろ!」
三人が小声でわちゃわちゃと揉めているのを、市長や周りの衛兵たちは「おお、さすがは伝説の英雄たち……。報酬に浮かれることなく、常に次の脅威に備えているかのような冷静な佇まい……!」と、勝手に神々しいフィルターを通して見つめていた。完全に話の噛み合わないまま、事態はあらぬ方向へと美化されていく。
「さて、英雄殿方」
市長が厳かな声で話を切り出した。
「黒髭盗賊団を壊滅させてくださったのは本当にありがたいのですが、実は我がロンドールには、もう一つ……長年頭を悩ませている大きな問題がありましてな」
「……ほう?」
ミランが反射的に低い声で相槌を打つ。
「はい。我が街の北方に広がる『嘆きの森』に、最近、凶悪な魔獣が棲み着いてしまいましてな。交易の馬車が次々と襲われているのです。もしよろしければ……その、我が街の平穏のために、あの魔獣も討伐していただけないでしょうか……っ!」
市長が深々と頭を下げた。
後ろに控えていた衛兵たちも、期待に満ちた熱い視線を三人に向け合っている。
(((魔獣だと……!?)))
三人の脳内で、激しい警報音が鳴り響いた。
盗賊団は「人間」だったからジャックの謎のハッタリでどうにかなったが、相手は正真正銘の「モンスター」である。しかも森を荒らすほどの凶悪な魔獣。
ジャックの足が、早くも嫌な予感にビュンと震え始めた。
「ま、魔獣だって……? ふっ、あんな雑魚モンスター、わざわざこの俺が剣を抜くまでもないが……」
「ジャック、お前さっきから足が小刻みに盆踊りしてるぞ!」
ミランが必死にツッコミを入れつつ、冷や汗を拭う。
断ったら「実は偽物の詐欺師でした」とバレて金貨を没収される。かといって受けたら、本物の魔獣に遭遇して三途の川を渡るハメになる。絶体絶命の二択だった。
しかし、ここでザックが呑気に手を挙げた。
「あのさ、市長さん。その魔獣って、どんな感じのやつなの?」
「おお、ザック殿! それがですね、二足歩行の巨大な猪のような魔獣でして、突進されると石壁すら木端微塵に吹き飛ぶほどの怪力なんです。さらに、全身が硬い甲殻に覆われていて、普通の剣や魔法では一切傷がつかないという……」
「なるほどねぇ。じゃあ、遠くからドカンとやればいいわけだ」
ザックは軽い調子でそう言い放った。
もちろん、彼の魔法は「3回に1回しか発動しないポンコツ仕様」である。本人としては適当にその場しのぎのつもりだったのだが、周囲の人間には「一瞬で敵の弱点を見抜き、圧倒的な自信を見せる最強魔法使いの余裕」にしか映っていなかった。
「さすがは伝説の魔法使い……! なんという頼もしいお言葉……!」
市長は感動のあまり、両目から大粒の涙を流し始めた。
「……もう、引き受けざるを得ない流れだな、これ」
ミランが天を仰いで深い溜息をついた。
「しゃあない、行くか。どうせ人生一寸先は闇だ。一攫千金掴んだんだ、派手に散るのも悪くないさ!」
ザックがケラケラと笑う。
ジャックはもう白目を剥きかけていたが、なぜか「人間以外なら……いや、魔獣なら俺の足が勝手に回避してくれるはずだ……!」という謎の神頼み精神を発揮し始めていた。
こうして、勘違いの英雄パーティは、休む間もなく次のステージ――「暴れ魔獣の待つ嘆きの森」へと向かわされることになったのだった。
彼らの運命やいかに……!?
第5話をお読みいただき、ありがとうございます!
市長から大金(報奨金)をゲットしたのも束の間、今度は「嘆きの森の魔獣討伐」を頼まれてしまったミランたち。
逃げ場のないプレッシャーの中、ポンコツ三人組はどうやってこのピンチ(?)を乗り切るのでしょうか?
次回、第6話「次の街へ到着。今度は暴れ馬ならぬ『暴れ魔獣』の噂」へ続きます!




