第4話:盗賊団リーダーを氷漬けに? 記念すべき最初の「大誤解」
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ひょんなことから迷い込んだ盗賊団のアジトで、ジャックのハッタリとザックの暴走魔法(3回目)により、見事(?)に壊滅させてしまった三人。
証拠隠滅とばかりに慌てて逃げ出した彼らでしたが、世間の見方は全く違う方向に転がり始めます……!
第4話「盗賊団リーダーを氷漬けに? 記念すべき最初の『大誤解』」、どうぞお楽しみください!
「はぁっ、はぁっ……! 逃げ切ったか……?」
ロンドールの街の裏通り、ゴミ箱の陰に隠れるようにして、ミランは荒い息を整えていた。
その隣で、ザックはのんびりと自分の指先を眺め、ジャックはなぜかフンと誇らしげに腕を組んでいる。
「いやあ、焦ったねえ。最後の氷漬けは我ながら見事なタイミングだったわ」
「なにを言うザック、あの状況で敵の動揺を誘い、見事に足元をすくってみせた俺の心理戦こそが勝因だ。元貴族の血が騒いだぜ」
「二人とも、頼むから静かにしてくれ……! あれがバレたら、俺たちは今度こそ牢屋行きか、あるいは追放じゃ済まないぞ。重労働で鉱山送りだ!」
ミランが必死に声を潜めて二人に釘を刺す。
しかし、世間の動きというものは、当事者たちの焦りなどお構いなしに、とんでもないスピードで加速していくものだった。
その日の昼下がり。
三人がこっそり身を潜めていた空き倉庫(兼アジト)の周囲に、大量の衛兵たちが押し寄せた。
「おおい! こっちだ! 昨夜から行方不明だった『黒髭盗賊団』のアジトを発見したぞ!」
「なんだこれ……? 中が……中が完全に凍りついてるぞ!?」
「うわっ、リーダーが、あの凶悪なリーダーが完璧な氷の像になってやがる……!」
街中を恐怖のどん底に落とし入れていた悪名高き盗賊団が、一晩にして、しかも一網打尽に――それも凄まじい一撃によって壊滅させられていたというニュースは、瞬く間にロンドール全域を駆け巡った。
「おい、聞いたか? 街の裏に巣食うあの盗賊団が、たった三人組の旅の者に一瞬で壊滅させられたらしいぞ!」
「本当かよ!? 魔法使いが氷の城壁ごとアジトを凍らせて、剣士が凄まじい威圧で残りを圧倒したとか……!」
「すげぇ……一体何者なんだ、その英雄たちは……!」
街の酒場や広場は、その話題で持ちきりになっていた。
当の本人たちといえば、そんな世間の大騒動など露知らず、街の外れの安いパン屋の売れ残りパンを分け合って食べようとしていたところだった。
「なあ、ミラン……なんかさっきから、街のやつらがやけこっちをジロジロ見てないか?」
ザックがパンをかじりながら、周囲の視線に首を傾げた。
「気のせいだろ。俺たちのボロボロの服を見て、『あいつら、昨日から風呂に入ってないな』って同情の目を向けられてるんだよ」
「いや、待てミラン……。あそこの衛兵の隊長みたいな男が、こっちに向かってまっすぐ歩いてくるぞ。しかも、めっちゃ真面目な顔で……っ!」
ジャックがガタガタと震え出し、いつものチキンモードに戻りかけたその時――。
ガシッ!!
突如、その衛兵の男がミランの前に立ちふ下がり、両手でミランの手をガッチリと掴んだ。
「お、おお……っ! あなた方が、昨夜『黒髭盗賊団』を単身――いや、三人で壊滅させてくれたという、伝説の冒険者の方々ですね!!」
「「「は……??」」」
三人の頭の上に、大きな「?」マークが浮かび上がった。
「えっと……あの、何のことでしょうか?」
ミランが冷や汗を流しながら引きつった笑顔で聞き返すと、衛兵隊長は感極まった表情で力強くうなずいた。
「とぼけないでください! アジトに残された凄まじい冷気魔法の痕跡、そして現場に居合わせた者たちの証言――すべて一致しています! 長年我々が手を焼いていた悪党どもを一網打尽にしてくださり、ロンドール市民を代表して心より感謝申し上げます!」
周りにいた街の人々からも、パラパラと、やがて盛大な拍手が巻き起こった。
「すげぇぞ! あの盗賊団を倒した英雄様だ!」
「ありがとう! これで夜も安心して歩ける!」
――完全に、盛大な勘違いだった。
ザックのまぐれ魔法と、ジャックの謎のハッタリ、そしてミランの「逃げよう」という判断が、なぜか街の住民の脳内で「超絶技巧の完璧な作戦による悪党の討伐劇」に脳内変換されていたのだ。
「ええと……その……どうしよう、ミラン」
ザックが小声でミランに耳打ちする。
「どうしようもこうしようもないだろ! 俺たちはただ不法侵入(?クッション)して逃げ帰ってきただけだぞ!」
「しかし、否定したら不敬罪とか、最悪の場合は詐欺の疑いで捕まらないか……?」
ジャックが青ざめながら呟いた。
ここで否定すれば、昨日食べたスープの代金すら返せなくなり、最悪の場合は「盗賊の仲間」と間違われて処刑されるかもしれない。
ミランは一瞬で頭をフル回転させ、そして決断した。
――ここは、乗っかるしかない。
「あ、ああ……! いやなに、当然のことをしたまでだ。街の平和が守られたなら、我々としても嬉しい限りだよ、うん」
ミランが精一杯の「渋くて頼れるリーダー風の笑み」を作ってうなずいた。
「さすがであります! つぎは、市長より正式に、街の英雄としての表彰と報奨金が下されます! どうか、市庁舎へお越しください!」
こうして、三人は自らの意思とは全く無関係に、街の「英雄」として祭り上げられてしまったのだった。
彼らの冒険は、まだ始まったばかりである。そして、この「勘違いの連鎖」は、ここからさらにエスカレートしていくことになる――。
第4話をお読みいただき、ありがとうございます!
盗賊団アジトの壊滅劇が、街中でとんでもない「大誤解」を生み出し、まさかの英雄扱いされてしまったミランたち。
否定するに否定できず、流されるまま「英雄」の階段を昇り始めてしまいました。
次回、第5話では、そんな彼らが街の人々に祭り上げられ、戸惑いつつも次のトラブルへ向かう姿を描きます!




