第20話:世界は救われ、彼らは帰る。「俺たち、何したんだろうな」の結末
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ザックのまぐれ魔法とジャックの投げやりな(文字通りの)投擲によって、まさかの魔王討伐を成し遂げてしまった三人。
すべてが終わり、伝説の勇者となった彼らが迎える結末とは――?
完結話「世界は救われ、彼らは帰る。『俺たち、何したんだろうな』の結末」、どうぞ最後までお楽しみください!
静まり返った魔王城の玉座の間。
そこには、世界を恐怖のどん底に落とし入れていたはずの魔王が、まるでただ昼寝をしているかのように(しかし完全に動かなくなって)転がっていた。
その傍らで、ミラン、ザック、そしてジャックの三人は、地面にへたり込むようにして荒い息をついていた。
「……終わったのか?」
ミランが、かすれた声でぽつりと言った。
「終わった……みたいだねえ。なんか、魔王様、最後すごく満足そうな顔して消えていった気もするけど」
ザックが自分の指先をフーフーと吹きながら答える。
「まさか、私が投げただけの適当な剣が、あんなピンポイントで急所に刺さるなんて……。い、いや、待てよ? これは私の計算し尽くされた空間把握能力と、貴族としての華麗なフィニッシュブローだったと言えなくもないのでは……?」
ジャックが青ざめた顔で、必死に自分を正当化しようと呟いた。
「いや、どう見てもただのまぐれだろ……!」
ミランはガックリと床に突っ伏した。
だが、そんな彼らの感想などお構いなしに、外の空気がガラリと変わった。
魔王の消滅とともに、魔王城を覆っていた禍々しい黒雲がスルスルと晴れ渡り、地平線の向こうから眩いばかりの朝日が差し込んできたのだ。それはまさに、世界に平和が訪れたことを告げる、あまりにもドラマチックな夜明けの光景だった。
その瞬間――。
魔王城の崩れた正面玄関から、王都の精鋭騎士団や、各地のギルドマスター、そして大陸中のメディア(?)や民衆たちが、一斉に歓声を上げながら雪崩れ込んできた。
「お、おおい! 見ろ! 魔王の気配が消えたぞ……!」
「やったぞ! 魔王討伐だ! 伝説の勇者パーティが、たった三人で魔王を打ち倒したぞ――ッ!!」
「万歳! 世界は救われたぁぁぁーーっ!!」
割れんばかりの大歓声が、玉座の間に轟いた。
あっという間に三人は群衆にもみくちゃにされ、宙に放り投げられ、涙を流して感謝する人々に囲まれてしまった。
「おめでとうございます、勇者様!」
「我が国の、そして世界全体の救世主様だ!」
「いやあ、あの圧倒的な魔王を前にして一歩も引かず、最後は華麗な連携魔法と一撃で葬り去るとは……まさに神業でした!」
(((いや、連携も何もない、ただの事故と勘違いの積み重ねだからな……!?)))
ミランは何度もそう叫びそうになったが、あまりの熱狂的な祝福ムードの前に、その言葉は完全に飲み込まれてしまった。
それから数日後。
三人は、王都のきらびやかな大宮殿の最上階にいた。
玉座に座る国王から直接、かつてないほどの金貨の山と、名誉ある「大陸最高位・真の伝説の勇者」の称号が授与されることになっていた。
「よくぞやってくれた、若者たちよ。お前たちの深謀遠慮、そして類まれなる知勇兼備の冒険譚は、今後千年、歴史の教科書に語り継がれることだろう」
国王が感極まった表情で、三人に黄金のメダルを首にかけていく。
ミランは引きつった笑顔で「は、はあ……光栄です」と答えるのが精一杯だった。
ザックは「なんか、メダルがピカピカしてて美味しそう」と不謹慎なことを考え、ジャックは「ふっ、当然の結果だな(冷や汗ダラダラ)」と気取ったポーズを崩さなかった。
式典が終わり、ようやく自分たちの部屋(王都の一流ホテルの一室)に戻ったとき、三人は全身の力が抜けたようにソファや床に崩れ落ちた。
「……疲れたぁ……」
ミランが天井を見上げながら、大きく長い溜息をついた。
部屋の隅には、使い切れないほどの莫大な金貨の入った宝箱がゴロゴロと転がっている。
「ねえ、ミラン」
ザックがぽりぽりと頭をかきながら言った。
「俺たち、結局何をしたんだっけ?」
「さあ……。村を追い出されて、なんとなく歩いて、盗賊にビビって逃げてたら勝手に街の英雄になって、魔獣にビビってたら勝手に穴に落ちて、貴族の揉め事に巻き込まれて適当にハッタリかましたら和解して、最後は魔王城でビビりながら時間稼ぎしてたら勝手に倒れてた、って感じか?」
「こうして振り返ると、我ながら奇跡的なまでのグダグダっぷりだな」
ジャックが自分の大剣をそっと眺めながら、苦笑いした。
「でもさ」
ミランは、窓の外に広がる、すっかり平和を取り戻した王都の街並みに目を向けた。
街の人々は笑顔で歩き、子供たちが楽しそうに駆け回っている。自分たちのせいで(?)世界は本当に救われてしまったのだ。
「俺たちは、何もしてない。本当に、何一つ実力で成し遂げたわけじゃない」
ミランがそう呟くと、ザックとジャックは顔を見合わせ、そして同時にフッと笑った。
「まあ、いっか。結果オーライってやつでしょ」
「そうだね。少なくとも、今日の夕食のスープの心配をしなくてよくなったのは事実だ。最高級のステーキでも食べようぜ、ミラン」
「……だな。とりあえず、生きてるし、金はあるし、帰って寝よう」
こうして、史上最も「グダグダ」で、本人たちは最後まで全く自覚のないまま、最高峰の「伝説の勇者パーティ」となった三人の冒険は、めでたく――そして最高に不可解なかたちで――幕を閉じたのだった。
彼らの伝説は、後にこう語り継がれることになる。
——「彼らは深い知恵と、揺るがぬ勇気、そして世界を統べる強運の持ち主であった」と。
実際のところ、一番驚いていたのは、他ならぬ彼ら自身だったのだが。
(『自覚なし最強? いや、偶然と運だけです!〜ポンコツ魔法使いと臆病剣士と普通の村人の成り上がり冒険譚〜』・完)
ここまで『自覚なし最強? いや、偶然と運だけです!』をお読みいただき、本当にありがとうございました!
村を追い出された凡人三人組が、運と人柄とタイミング(そして圧倒的な勘違い)だけで、気づけば世界を救う大冒険を完結させてしまいました。




