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自覚なし最強? いや、偶然と運だけです!〜ポンコツ魔法使いと臆病剣士と普通の村人の成り上がり冒険  作者: 凪塩 未来


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第16話:魔王軍幹部との遭遇。ジャックの『人間相手なら』スキルが炸裂

第16話をお読みいただきありがとうございます!


魔王領への道中で現れた魔王軍幹部・呪術師ガルドを、ザックのマイペースな「3回目魔法」で文字通り地面に叩き伏せたミランたち。

次なる試練として待ち受けていたのは、さらなる強敵の魔王軍幹部――ではなく、なぜか妙に人間臭いトラブルでした!?


第16話「魔王軍幹部との遭遇。ジャックの『人間相手なら』スキルが炸裂」、どうぞお楽しみください!

「……で、ですね。我が魔王軍の今後の予算配分についてですが、どうしても北方の補給部隊への比率が高くなってしまい――」


「おい、待て待て。東の要塞の防衛費を削られては、我々前線部隊の士気に関わるぞ。少しは現場の苦労も考えてもらいたいものだ」


荒涼とした黒曜の谷のさらに奥、魔王領の国境付近にある巨大な野営テントのなか。

本来であれば、恐ろしい魔王軍の幹部たちが世界征服の陰謀を巡らせるはずの極秘会議室が、いまや「深刻な予算不足と経費削減に悩むブラック企業の会議室」のような空気に包まれていた。


その中央の長テーブルで、頭を抱えて激しい口論を繰り広げていたのは、魔王軍最高幹部の一人である強面(こわもて)の獣人将軍ガランと、魔王軍財務最高責任者の悪魔族ヴェルナーだった。


そこに、ガルドを地中に埋めたままやってきたミランたちが、テントの布をバサリと押し開けてズカズカと侵入してきたのだ。


「「「……は?」」」


テントの中にいた魔王軍の精鋭たちと幹部が、一斉に動きを止めて入り口の方を振り返った。

突然乗り込んできたのは、剣もまともに扱えなそうな庶民の格好をしたミラン、呑気に干し肉をもぐもぐ食べているザック、そしてなぜか妙に偉そうな態度を全開にしているジャックの三人である。


「な、なんだ貴様らは……!? ここは魔王軍の最高機密会議室だぞ! 侵入者だ、者ども、叩っ斬れ――ッ!!」

獣人将軍ガランがドッと立ち上がり、凄まじい殺気を放ちながら怒鳴り声を上げた。


(((うわあああ、やっぱり囲まれたぁぁぁーーっ!! 魔王軍の幹部がゴロゴロいるぞここ!)))

ミランは冷や汗を滝のように流し、反射的に後ろのザックの陰に隠れようとした。


しかし、その瞬間である。

「――フッ、そこまでだ、魔王軍の雑魚どもめ」


一歩前へ出たのは、ジャックだった。

普段はスライムを見るだけで失神しかけるほどの極度の臆病者だが、目の前にいるのが「武装した魔族(=二足歩行で言葉が通じる相手=人間っぽいもの)」であると認識した瞬間、彼の中の「元貴族モード(完全なるハッタリ仕様)」が最高潮にリミッターを解除していた。


ジャックはふん、と冷ややかな鼻息を漏らし、獣人将軍ガランをまっすぐに見据えた。

「貴様らのくだらない内輪揉め、外まで丸聞こえだぞ。予算配分で揉めているからといって、前線部隊の士気を下げるなど、組織のトップとして失格だな。これだから現場を知らない財務担当崩れは困る」


(((えっ……!? ジャック、何言ってんだお前!? 相手は魔王軍の幹部だぞ、怒らせたら一瞬でミンチにされるぞっ……!!)))

ミランが心の中で絶叫した。


しかし、獣人将軍ガランと財務責任者ヴェルナーは、ジャックのそのあまりにも堂々とした、一切怯えのない「上から目線の説教」を聞いた瞬間、ピタリと動きを止めた。


「な……っ!? 我々の内情が、なぜこの人間の小僧に……!?」

「ま、まさか、我々の会議の内容がここまで完全に読まれていたというのか……!?」


ガランとヴェルナーが冷や汗を流し、青ざめる。

それもそのはずである。ジャックはただ適当に「さっきのテントの外の物音から適当にそれっぽいことを言っただけ」なのだが、魔王軍内部でも最近特にシビアだった「予算削減問題」の核心を、偶然にもピンポイントで突き刺してしまっていたのだ。


「ま、待て……! 貴様、何者だ……! 人間の国から来た刺客にしては、妙に我々の内情に詳しすぎる……!」

ガランが警戒の色を強めながら、おそるおそる聞いた。


ジャックは心の中で「うわ、めっちゃビビってるじゃん、これいけるぞ!」とガッツポーズを作りつつ、顔はあくまで氷のようにクールに保ったまま、ふふんと言い放った。

フローな身のこなしでテーブルの端に片手を置く。

「私の名を明かす必要はない。だが、一つだけ忠告しておこう。このまま内紛を続けていれば、我が軍(?)の圧倒的な『光の経済戦略』の前に、貴様らの組織など秒速で崩壊するぞ」


「コ、経済戦略だと……!? まさか、我が軍の財政難を狙って、経済面から内部崩壊させる気か……っ!」

財務責任者のヴェルナーが、ガクガクと膝を震わせた。魔王軍とて組織である以上、予算や補給の枯渇は死活問題なのだ。武力での正面突破ではなく、そんな陰湿かつ高度な経済攻撃を仕掛けられていると思い込んだ魔王軍幹部たちは、一気に戦意を喪失し始めていた。


「どうするガラン……! このままでは、我が軍は戦わずして財政破綻してしまう……!」

「くそっ、なんて恐ろしい人間どもだ……! あの不気味な余裕、ただ者ではない……!」


(((いや、ただのハッタリだからな!? 全然経済戦略とか考えてないからなこの男!!)))

ミランはもうツッコミを入れる気力すら湧かず、ただ呆然とその光景を見守るしか泣った。


「――ふっ、これ以上無駄な血を流したくければ、今すぐその武器を置き、私たちの道を開けろ。さすれば、貴様らの財政再建について少しは考えてやらんでもない」


ジャックの完璧すぎるハッタリ(および「人間相手ならなぜか無双する」特殊スキル)の前に、魔王軍の最高幹部たちは顔を見合わせ、そして――。


「わ、わかりました……! 我々の負けだ……! どうか、これ以上の財政攻撃(?)だけは勘弁してくれ……!」


ガランとヴェルナーが、ガタガタと震えながらその場で盛大に土下座した。

周囲の魔王軍の兵士たちも、「幹部たちが土下座したぞ……!?」「相手はあの伝説の勇者パーティだ、勝てるわけがない……!」と次々に武器を放り投げ、あっという間に戦意喪失してしまったのである。


「「「…………」」」


ザックがぽりぽりとお腹を掻きながら言った。

「ねえジャック、お前そろそろ本気で詐欺師の免許取ったほうがいいよ。世界征服できそうじゃん」

「うるさい、これは私の高い教養と交渉術の賜物だ!」


こうして、魔王軍の最高幹部たちが陣取る最重要拠点は、一発の剣も交えることなく、ジャックの完璧なハッタリ(と相手の勝手な勘違い)によって完全に制圧されてしまったのだった。

第16話をお読みいただき、ありがとうございます!


魔王領の極秘会議室に乗り込んだ三人。しかし、ジャックの「人間相手ならなぜか無双するハッタリ交渉術」によって、魔王軍の幹部たちをまさかの土下座&財政破綻の恐怖で完全屈服させてしまいました!

本人たちはただ流されているだけですが、伝説の快進撃(?)は止まりません。


次回、第17話「魔王城への最終ゲート。開門の合図はザックの適当な指パッチン」に続きます!

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