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自覚なし最強? いや、偶然と運だけです!〜ポンコツ魔法使いと臆病剣士と普通の村人の成り上がり冒険  作者: 凪塩 未来


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第15話:魔王領への険しい道中。敵の魔法使いを『3回待つ』で翻弄する

第15話をお読みいただきありがとうございます!


王国からの全面バックアップ(予算無限大)を取り付け、ついに引くに引けない本格的な魔王討伐の旅へと出発したミランたち。

王都をあとにして魔王領へと向かう険しい道中、さっそく魔王軍の先遣隊(敵の魔法使い)が彼らの前に立ち塞がりますが……?


第15話「魔王領への険しい道中。敵の魔法使いを『3回待つ』で翻弄する」、どうぞお楽しみください!

「――ガハハハッ! そこまでだ、人間の英雄気取りども!」


王都を出発し、魔王領へと続く荒涼とした「黒曜の谷」に差し掛かった時だった。

突如として周囲の岩陰から、禍々しい魔力の波紋とともに、魔王軍の精鋭である黒衣の魔法使いが一人、不気味に宙を浮きながら現れた。その両手には紫色の怪しい炎がゆらゆらと揺らめき、いかにも「初見殺しの中ボス」といった雰囲気を醸し出している。


「ふっ、我が名は魔王軍幹部が一人――闇の呪術師ガルド! お前たちの首を取って、魔王様への手土産にしてくれるわ!」


(((うわぁ、めっちゃ強そう……! 出たよ、ザコじゃない本物の魔王軍の幹部だ!)))

ミランは冷や汗をダラダラと流しながら、反射的に後ろへ下がった。

隣でジャックは、相手が「人間(っぽい姿)」であるにもかかわらず、その圧倒的な邪気と怪しい浮遊術の前に恐怖が勝ってしまい、ガタガタと全身を激しく震わせている。


「む、無理だ……あいつ、足が地面についてないぞ! 浮いてる! 絶対に人間じゃない、物理法則を無視した妖怪の類いだ……っ!」

「ジャック、しっかりしろ! 落ち着いて相手の顔を見ろ、鼻と口があるだろ、ギリギリ人間だ!」

ミランが必死にツッコミを入れるが、ジャックのチキンハートはすでに限界寸前だった。


その時、敵の呪術師ガルドが両手の紫色の炎をさらにギラつかせ、不敵な笑みを浮かべた。

「フハハ! 震え上がるがいい! わが究極の闇魔法『デス・ブラスト』の生贄となれ――!」


ガルドが詠唱を始めようとしたその瞬間、ザックがひょいと一歩前に出た。

「あ、ちょっと待って」

「……あん? なんだ貴様、命乞いか?」

ガルドが怪訝な顔をして詠唱を止める。


「いや、命乞いっていうかさ。俺たち、今ちょうど旅の道中で小腹が空いててさ、お前がそのカッコいい炎を出してる間に、ちょっとそこの干し肉を炙りたいんだけど、今やってもらってもいい?」

「は……? 干し肉を炙る……だと……?」

ガルドは自分の耳を疑った。天下の魔王軍幹部に向かって、戦闘中に干し肉を炙りたいなどと言い出す人間など、これまでの人生で一人もいなかったからだ。


「なめるなよ、小僧――ッ!! 死ねぇ!!」

激怒したガルドが、全力の呪文を放とうと再び両手を突き出した。


その背後で、ミランが慌ててザックの袖を引っ張る。

「おいザック! 何やってんだ、殺されるぞ! 早く魔法で迎撃しろ!」

「大丈夫だってミラン。ほら、うちの魔法って『3回に1回』しか出ないポンコツ仕様だろ? だから、相手の攻撃をやり過ごすために、今ちょうどカウントを調整してるとこなの」

「カウントの調整ってなんだよ、ゲームの必殺技じゃないんだからさぁっ!」


ガルドの詠唱が最高潮に達する。

「喰らえ! 暗黒の炎よ、すべてを灰燼に帰せ――『デス・ブラスト』!!」


ドオオオオオオオオオッ!!!!!


凄まじい紫色の爆風が、三人のいた場所を完全に飲み込んだ。周囲の岩肌が瞬時に粉々に砕け散り、凄まじい熱風が吹き荒れる。


「フハハハッ! 消し飛んだか! 伝説の英雄とやらいっても、所詮はこの程度――」

ガルドが勝ち誇った笑みを浮かべた、その時だった。


白煙が晴れた場所から、なぜか「ピンピンした顔」で立ち上がる三人の姿が現れた。

――いや、正確には、ガルドの放った強力な魔法は、ジャックが恐怖のあまりに繰り出した「謎の高速ジグザグ回避ステップ(ただのビビり)」によって、奇跡的にすべてすり抜けていたのだ。


「「「…………」」」


「なっ……!? わが最強の『デス・ブラスト』を、かすりもしなかっただと……!?」

ガルドが信じられないといった様子で目を見開く。


「ふう、危なかったな……。で、今のうちの何回目だっけ?」

ザックが呑気に自分の指先をパチパチと鳴らしながら、ミランに聞いた。

「知るか! いまのは相手の攻撃だろ!」

「あ、そっか。じゃあ、今の攻撃で1回目ね。で、その前の空振りが2回目……ってことは、次が――3回目だな!」


ザックが不敵な笑みを浮かべ、ガルドに向かって人差し指をピッと向けた。

ガルドはなぜか、その無駄に堂々とした態度と、先ほどの攻撃が外れた動揺から、思わず冷や汗を流した。

「な、なんだその余裕は……っ! 次こそ確実に貴様らを葬る! 喰らえ、二撃目の――」


「それっ!」

ザックがタイミングよく指を鳴らした。

――パチン!!


ズオオオオオオオオオオッッ!!!!!


ザックの指先から放たれた3回目の魔法は、これまでのどんなものよりも強烈な「超重量重力場発生魔法」となって、ガルドの頭上から直撃した。

「グッ……!? なんだ、この重さは……っ! 体が、動か……ん……っ!」

あまりの凄まじい重力に、宙を浮いていたはずのガルドはマヌケな悲鳴を上げながら地面に叩きつけられ、そのまま文字通り「地面にめり込んで」身動きが取れなくなってしまった。


「「「…………」」」


あたりに、再び静寂が訪れた。

ガルドは地面の穴の中で白目を剥き、完全に気絶している。


「……えっと、終わった?」

ミランが恐る恐る呟く。

「終わったみたいだね。いやあ、3回目ってやっぱりすごい威力だわ」

ザックがケラケラと笑い、ジャックは「ふっ、人間(っぽい魔族)相手なら、私の華麗な威圧感で相手の隙を作るのはお茶の子さいさいさ」と、ちゃっかり自分の手柄にしようとすまし顔を作った。


彼らはこの時、まだ知らなかった。

この「敵の魔法使いを3回待たせて翻弄した伝説の戦い」が、のちに魔王軍全体を震え上がらせる恐怖の戦術として、盛大に誤解されて語り継がれることになるということを……!

第15話をお読みいただき、ありがとうございます!


魔王領への道中でさっそく現れた魔王軍幹部・呪術師ガルド。

ザックの「3回待つ」戦術(というかマイペースな雑談と3回目の重力魔法の暴走)により、見事(?)に撃破してしまいました!


次回、第16話「魔王軍幹部との遭遇。ジャックの『人間相手なら』スキルが炸裂」に続きます!

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