第14話:「無理だって」王都への召喚と、断れないデスマーチの始まり
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ついに王都からの勅書を受け取り、「救国の三英雄」として正式に魔王討伐の命を下されてしまったミランたち。
逃げ場なしのデスマーチ状態の中、彼らはついに王国の中枢・王都へと足を踏み入れることになりますが……?
第14話「『無理だって』王都への召喚と、断れないデスマーチの始まり」、どうぞお楽しみください!
「――これより、王都グランディールの中心街に入ります!」
特命使者の騎士の声とともに、馬車の窓から外を覗き込んだミランの目が、驚愕で見開かれた。
目の前に広がっていたのは、これまでのどんな街をも凌駕する圧倒的なスケールを誇る巨大都市だった。どこまでも続く白亜の城壁、空高くそびえ立つ尖塔の数々、そして街中を行き交う人々の活気。王国の中枢、王都グランディール。すべての道はここに通じると言われる、大陸の最高峰である。
馬車がガタゴトと石畳の道路を進み、やがて街の中心にそびえ立つ絢爛豪華な王城の巨大な門の前にピタリと停まった。
「さあ、着きました。国王陛下が宮廷の大広間にて、あなた方のご到着を今か今かと待ちわびておられます。どうぞ、お進みください!」
使者の騎士が恭しく扉を開けると、そこには赤い絨毯が敷き詰められた果てしなく広い大理石の廊下が続いていた。両脇には、一分の隙もない精鋭の近衛騎士たちが微動だにせず立ち並び、ずらりと並んだ黄金の鎧が重々しい光を放っている。
(((うわぁ……空気の密度が違う……! ここ、一歩間違えたら秒速で処刑されそうなプレッシャーが漂ってるぞ……!)))
ミランは冷や汗を滝のように流しながら、足がすくむのを必死に堪えて一歩を踏み出した。
その隣で、ザックは「うわあ、あそこの柱の金箔、絶対剥がして売ったら大金になるよね」と不穏なことを呟き、ジャックは「ふっ、この程度の城、我が実家に比べれば……いや、やっぱりめちゃくちゃデカいな、無理だ」と瞬時に元貴族のプライドをかなぐり捨てて怯えていた。
「おい、お前ら……頼むから、王様の前で変な失礼な真似だけはしないでくれよ。首がいくつあっても足りないからな!」
ミランが必死に小声で二人に釘を刺す。
「大丈夫だってミラン。俺たち、これまでだって『なんとなく』でここまで生き延びてきたんだからさ。きっとなんとかなるさ、知らんけど」
「その『知らんけど』が一番信用できないんだよ!」
そうこうしているうちに、大広間の巨大な両開きの扉の前に到着した。
近衛騎士長が厳かに声を張り上げる。
「――救国の三英雄、ミラン殿、ザック殿、ジャック殿のご到着です!!」
ゴゴゴゴゴ……と重厚な音を立てて、巨大な扉がゆっくりと開いた。
その先には、天井まで届くほどのステンドグラスから眩い光が差し込む広大な謁見の間が広がっていた。最奥の黄金の玉座には、冠をかぶった威厳ある国王陛下が座り、その両脇には王国の重臣たちや宮廷魔導士たちがずらりと並んでいる。誰もが熱い期待と敬意の入り混じった視線を、一斉にこちらの三人に向けていた。
「よくぞ参った、我が王国の救国の大英雄たちよ!」
国王の低く響く声が、広間にこだました。
その圧倒的な威圧感に、ジャックの足がピュンと激しく震え出す。
(((あ、やばい、これ絶対本物の王様だ……! スライムどころの騒ぎじゃない、一国の最高権力者だぞ……!)))
ジャックが白目を剥きかけたその時、国王は玉座からスッと立ち上がり、なんと自ら階段を降りて三人の歩み寄り始めたのだ。
「お前たちの噂はすでに聞いている。黒髭盗賊団を壊滅させ、嘆きの森の魔獣を一撃で沈め、水都の和平を完璧に調停したというその神業の数々……! 我が国に、これほどまでの知勇兼備の若者たちが現れようとは、まさに天佑神助というほかない!」
国王は感極まった様子で、ミランの手をガッチリと両手で握りしめた。
ミランは引きつった笑顔を張り付けたまま、「は、はあ……恐れ入ります……」と返すのが精一杯だった。
「うむ! そこでだ、勇者たちよ!」
国王は真剣な眼差しを三人に向け、宣言した。
「我が国を脅かす魔王軍の脅威を完全に根絶するため、直ちに『魔王城への討伐遠征軍』を結成する! その最高司令官、および先陣を切る切り札として、お前たち三人にすべての全権を委ねる! どうか、我が国を――そして世界を救ってくれ!」
(((やっぱり魔王討伐の先頭に立たされるぅぅぅーーっ!! 無理だってそんなの!!)))
ミランの心の中の断末魔が響き渡る。
しかし、ここで「無理です、できません」と言おうものなら、不敬罪で即座に地下牢行きか、あるいは国中を敵に回す大罪人になってしまう。
絶体絶命の沈黙の数秒間。
ザックがひょいと一歩前に出た。
「あのさ、陛下」
「おお、伝説の魔法使いザック殿! 何なりと申せ!」
「魔王を倒しに行くのはいいんだけどさ、俺たち、道中の食糧とか宿代とか、そういう予算ってどうなってるわけ? けっこう物価が高くてさ、財布がスッカラカンになっちゃうと困るんだよね」
(((そこかよっ!! 一国の王に向かってお金の話かよっ!!)))
ミランが心の中で頭を抱えたが、国王はそれを聞いて「ほう……!」と深く感心したようにうなずいた。
「さすがは百戦錬磨の英雄……! 敵の戦力だけでなく、遠征における補給と兵站の重要性をすでに完璧に見通しておられるとは……! よろしい! 王室の全財産を投じてでも、君たちの遠征に必要な資金と物資は無限にバックアップしよう!」
「マジで!? 王様太っ腹ぁ! じゃあ話は早いね、魔王でも何でもサクッと倒しに行こうか!」
「おいザック、勝手に話を進めるな……っ!」
こうして、ミランの意思とは完全に無関係に、王室の全面バックアップ(という名の莫大な予算)を取り付けた状態で、史上最も不条理な魔王討伐のデスマーチが、盛大に幕を開けてしまったのだった。
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ついに王都グランディールに到着し、国王陛下に直接謁見してしまったミランたち。
逃げ出すどころか、ザックの図太いお金の交渉(?)によって王室の全面バックアップを取り付けてしまい、引くに引けない本格的な魔王討伐の旅がスタートしてしまいました!
次回、第15話「魔王領への険しい道中。敵の魔法使いを『3回待つ』で翻弄する」に続きます!




