第13話:王都からの使者到着。届いてしまった『勇者認定』の勅書
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水都アルトマリアで盛大な叙勲式を終えたのも束の間、ついに王都からの「特命使者」が迎えにやってきてしまったミランたち。
逃げ場のないプレッシャーの中、ついに正式な「勇者認定」の勅書を受け取る瞬間が訪れます――!
第13話「王都からの使者到着。届いてしまった『勇者認定』の勅書」、どうぞお楽しみください!
「――ただいまより、王都への直通馬車にてご案内いたします。いざ、魔王城へ向けた最終作戦の会議へと、出発の時です!」
アルトマリアの高級宿の一室。
王都から派遣されたという若い特命使者の騎士は、微動だにしない完璧な直立不動の姿勢で、そうハッキリと告げた。その瞳には、伝説の英雄に対する底知れぬ敬意と忠誠心の光が宿っている。
部屋の中に、気まずい沈黙が流れた。
ザックは純金のメダルを弄る手を止め、ジャックは優雅に構えていたポーズのまま固まり、ミランは白目を剥きかけの状態でプルプルと震えていた。
(((いや、待て待て待て……! 『出発の時です』って、まだ心の準備が一切できてないぞ! 俺たちは昨日まで野宿して道端のキノコを食べてた普通の村人だぞ!? なんでいきなり魔王城の最終作戦会議に直行しなきゃいけないんだよ!)))
ミランが脳内で絶叫していると、使者の騎士がふっと神妙な顔つきになり、懐から一通の厳重な封蝋が施された羊皮紙の束を取り出した。
「おっと、失礼いたしました。口頭でお伝えする前に、まずは我が国の最高最高峰である国王陛下、および宮廷魔導院の総意に基づく『正式な勅書』をお渡ししなければなりませんね」
騎士は両手で恭しくその羊皮紙を差し出した。
表面には、眩い王家の紋章と、複雑怪奇な魔力の封印魔法が光り輝いている。どう見ても、そこらの偽札やイタズラでは絶対に真似できない本物の代物だった。
「……これを受け取ったら、もう後戻りできないやつだな?」
ミランが震える声で小声で呟くと、ザックが肩をすくめてケラケラと笑った。
「何を今さら言ってるんだいミラン。盗賊のアジトに踏み込んだ瞬間から、もう引き返せるルートなんて消滅してたろ。ほら、受け取らないとこの騎士さんの目がキラキラしすぎてて直視できないよ」
「そうだぞミラン。元貴族の血を引く俺からも言わせてもらおう。ここまで来たら、むしろ天下を取ってやるくらいの気概で行こうじゃないか……人間相手なら、相手が魔王軍だろうと交渉で何とかしてやるさ!」
「お前らのその謎のメンタルの強さはどこから来るんだよ……!」
ミランは盛大にため息をつき、諦めたような、あるいは腹をくくったような表情で、両手でその「重すぎる勅書」を受け取った。
ズシリ、と手に確かな重みが伝わってくる。
使者の騎士は、その光景を感極まった面持ちで見つめながら、さらに言葉を続けた。
「――ありがとうございます、勇者様。勅書の内容を簡潔に申し上げますと、『黒髭盗賊団の壊滅』『嘆きの森の魔獣の無力化』『水都アルトマリアの和平調停』、これらすべての功績を王都は最大限に讃えます。そして本日より、あなた方を我が王国の公式な【救国の三英雄・勇者パーティ】に認定し、全軍の指揮権の一部、および魔王討伐の全権を委任する――というものです」
(((全権委任って何だぁぁぁーーっ!? 荷が重すぎるわ!! 国の命運を俺たちの適当な運任せに託すなよ!!)))
ミランの心の中のツッコミは、もはや悲鳴に近いものになっていた。
しかし、現実のミランは、引きつった笑顔を何とか保ちながら、深々と頭を下げてこう答えるしかなかった。
「あ、ああ……承知した。我がパーティの力、この王国と世界のために全力を尽くそう……うん」
そのあまりにも落ち着き払った(ように見える)返答に、使者の騎士は胸を押さえ、感涙にむせんだ。
「なんと頼もしいお言葉……! 流石は伝説の英雄様、微塵の動揺もございませんな! さあ、馬車のご用意ができております。王都の宮廷にて、国王陛下があなた方のご到着を首を長くして待ちわびておられます!」
――こうして、逃げる間も無く、拒否する権利も与えられず、三人は王都へと向かう豪華絢爛な特命馬車に押し込まれてしまったのだった。
馬車がガタゴトと音を立ててアルトマリアの街を出発し、広大な平原へと走り出す。
窓の外を流れていく景色を眺めながら、ミランは深くシートにもたれかかった。
「……なあ、俺たち、本当に魔王を倒しに行くのか?」
「さあ? でも、行かないと不敬罪で処刑されちゃうか、あるいは国中のお尋ね者になって一生追われる生活になっちゃうね」
ザックはのんびりと馬車に備え付けられていた高級クッションを抱きしめながら答えた。
「ふっ、案ずるな。魔王がどんな奴かしらんが、要するに『人間(あるいはそれに類するもの)』だろ? ならば、私の華麗な交渉術と、ザックの3回目の爆発魔法でどうにでもなるさ」
ジャックは自信満々に鼻を鳴らした。
(((魔王が人間の言葉を話すかどうかも怪しいし、ザックの魔法は3回に1回しか当たらねぇよ……!)))
ミランは天を仰ぎ、これから待ち受ける「魔王討伐の旅」のあまりにも前途多難すぎる未来に、そっと目をつぶったのだった。
だが、彼らはまだ知らなかった。この史上最もグダグダな勘違いパーティが、のちに歴史の教科書に「最強の奇跡を起こした伝説の英雄」として永遠に名を残すことになるということを――。
第13話をお読みいただき、ありがとうございます!
ついに王都からの使者から正式な「勇者認定の勅書」を受け取ってしまったミランたち。
逃げ場を失い、いよいよ本格的な「魔王討伐の旅」へと強制連行されてしまいました! 本人たちは相変わらずグダグダですが、物語はいよいよ後半戦の王都編・魔王討伐編へと突入していきます。
次回、第14話「『無理だって』王都への召喚と、断れないデスマーチの始まり」に続きます!




