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自覚なし最強? いや、偶然と運だけです!〜ポンコツ魔法使いと臆病剣士と普通の村人の成り上がり冒険  作者: 凪塩 未来


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第10話:元貴族・ジャックの知識と、ザックの派手な照明魔法(3回目)

第9話をお読みいただきありがとうございます!


水都アルトマリアの二大貴族、ブラッドレー家とシルバニア家の緊張が最高潮に達した現場に、まさかのタイミングで降り立ってしまったミランたち。

ザックの生理現象(ドライフルーツ事件)と、ミランのやけくそな一喝は、この内戦寸前の街をどう変えてしまうのか――?


第10話「元貴族・ジャックの知識と、ザックの派手な照明魔法(3回目)」、どうぞお楽しみください!

「いつまでそんな子供の喧嘩のような真似をしているんだ! 見苦しいぞ、アルトマリアの貴族たちよ!」


ミランが放ったヤケクソのハッタリは、静まり返った大通りの十字路に、やけに澄み切った声で響き渡った。

本来であれば、「なんだ貴様らは!」と一刀両断にされてもおかしくない台詞である。しかし、目の前に立っているのは、あの黒髭盗賊団を氷の彫像に変え、嘆きの森の暴れ魔獣を一撃で落とし穴の底へ沈めたという「王都公認の伝説の勇者パーティ」その人(?)たちだった。


ブラッドレー家の厳めしい隊長も、シルバニア家の若き副官も、ガタガタと膝を震わせながらその場に平伏した。


「ま、まさか……我々の私闘が、王都の勇者様のお耳を……いや、お目汚しになるとは……っ!」

「お、お許しください! 我々はただ、この街の未来を案じて――」

「言い訳無用!!」


ミランは心臓が口から飛び出そうになるのを必死に抑えつつ、映画で見たような偉そうなポーズをとって怒鳴りつけた。

(((頼むからこれ以上俺に喋らせないでくれ……! 誰か、誰でもいいからこの空気を何とかしてくれ……っ!)))


その時、スッと馬車のステップから降り立った男がいた。

――ジャックである。


普段はスライムを見ただけで気絶しかける極度の臆病者だが、「人間相手」かつ「相手が完全にビビっている」という最高の条件が揃った瞬間、彼の中の「元貴族モード」が最高潮に覚醒していた。

ジャックはふふん、と冷ややかな鼻息を漏らし、ブラッドレー家とシルバニア家の代表者たちを見下ろした。


「やれやれ、これだから地方の成り上がりと没落しかけた老害は困る。どちらの言い分も耳にタコができるほど聞き飽きたわ」

ジャックの流暢で嫌味を含んだ声が響く。

「なっ……! 我々の言い分をご存知で……?」

「愚問だな。ブラッドレー家よ、貴様らは伝統にしがみつくあまり、北方の貿易赤字を隠蔽している。そしてシルバニア家よ、貴様らは新しい利権に目が眩み、港湾区画の労働者の賃金を不当に買い叩いている。――違うか?」


(※すべてジャックがさっき馬車の窓から見かけた怪しげなチラシと、適当なハッタリの合わせ技である)


しかし、その「核心を突いたような(に見える)鋭い指摘」に、両家のリーダーたちは一斉に顔面蒼白になり、ガタガタと震え上がった。

「な、なぜそれを……!? 我々の内情が、なぜこのお方に……っ!」

「恐ろしい……! 我々の不正は、すべて王都の勇者様にはお見通しだったというのか……!」


完璧なまでの心理的マウントの成功に、ジャックは内心で「よし、いけるぞこの調子なら人間相手に完全勝利だ!」とガッツポーズを作っていたが、外見はあくまで冷酷な貴族の微笑みを崩さなかった。


「……だが、ここで互いに血を流したところで、アルトマリアの民が路頭に迷うだけだ」

ここで、絶妙なタイミングでザックがひょっこりと顔を出した。

「ねえねえ、堅苦しい話はそれくらいにしてさ。なんかこう、パッと周囲を明るくするような面白いことしようぜ。ほら、せっかくの綺麗な水都なんだしさ」


ザックが軽いノリで、空に向かって両手をパッと突き上げた。

もちろん、彼が意図したのはただのその場しのぎの悪ふざけ――ではなく、いつもの「3回に1回しか出ないポンコツ魔法」の試行錯誤だった。


――1回目。不発。

――2回目。不発。


「よし、そろそろ3回目だな……っ!」

ザックがニカッと笑って、思い切り指を鳴らした。

――パチン!!


ドゴオオオオオオオオオオッ!!!!!


直後、水都アルトマリアの空が、太陽が二つに増えたかのような眩すぎるほどの黄金色の閃光に包まれた。

ザックの指先から放たれたのは、街全体を昼のように照らし出す超巨大な「照明(フラッシュ)魔法」の暴走だった。あまりの強烈な光に、十字路にいた全員が思わず目を押さえて地面に伏せた。


光が収まった時、驚くべき光景が広がっていた。

ザックの圧倒的な照明魔法によって、アルトマリアの中心広場にあった古い噴水の水面が黄金色に輝き、水都全体の景色が息を呑むほど幻想的な美しさに包まれていたのだ。さらに、その強烈な光の熱量で、街の至る所にこびりついていた長年の汚れや、裏通りの怪しげな霧が一瞬で浄化(蒸発)されていた。


「「「おおおおお……っ!!」」」


ブラッドレー家の兵士も、シルバニア家の騎士も、そして周りの市民たちも、そのあまりにも神々しく、圧倒的な奇跡の光景を目の当たりにして、ポカンと口を開けたまま立ち尽くしていた。


「な、なんてことだ……。我が水都の淀みを一瞬で払い、新たな光をもたらしたというのか……!」

「これぞ、闇に閉ざされた我が街を救う、真の『平和の使者』の御業……!」


両家の当主たちが、感激のあまりその場で崩れ落ちるように手を取り合い、そして互いに涙を流しながら抱き合った。

「おい、ブラッドレー……我々はなんて愚かな争いをしていたんだ……!」

「ああ、シルバニア……これからは手を取り合って、このアルトマリアを盛り上げていこうではないか……!」


こうして、内戦寸前だった水都アルトマリアの二大貴族は、ザックの「たまたま成功した3回目の照明魔法」によって、見事に和解してしまったのである。

第10話をお読みいただき、ありがとうございます!


水都アルトマリアの二大貴族のいざこざの真っ只中に飛び込んでしまった三人。

ジャックのハッタリに満ちた(しかし核心を突いたような)交渉術と、ザックの「3回目の照明魔法」の凄まじい暴走によって、なぜか街全体の平和がガッチリと守られてしまいました。


次回、第11話「ミランの『話し合いましょう』が奇跡的に円卓を成立させる」に続きます!

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