7、カーニバルの夜
「見当たらぬな!」
「手分けをして、シラミ潰しに捜索したのですが…」
ダンロット一行は馬を停めていた。
そこには、姫が乗って行った一番馬の姿があった。
手綱をしっかり木の枝にくくりつけてある。
しかし、姫の姿はなかった。
「姫さまは、境界線の事は
ご存知では無かったのですか?」
兵隊長のギルの問いに、ダンロッドが答えた。
「その話は、まだ、だった。
まさか、ここまで、一人で来る…
いや、辿り着けるだろうとは
誰も予想してなかったのだ。
姫さまは、まだ、幼い…そう決めつけていた。
必要な知識を必要な時期に与える。
そのような、教育方針だったのだ。
いらぬ好奇心が、今回のこのような
事態を招くと、危惧しておったのだ。
しかし、それが向こうから、飛び込んで来おった。
ロメヲ王子と言う、問題の種がな!」
「しかし、姫さまはどこへ…
もしや、境界線のなかへ…」
「ネイラッ!!
そのような事は口にするなっ!
それは、最悪の事態ぞっ!
我々が、それを口する立場でないっ!」
ダンロッドの叱責にネイラは慌てた。
「はっ!申し訳ありません!」
「そうだな!我々は最善を尽くすのみだ。
しかし……夕暮れが迫っておるか…
こればかりは、何とも…
隊を餓鬼や、魔物共と
まともに戦わせる訳には、いかぬ…
今日のところは、隊を引き上げるしかなかろう!
全隊!城に帰還!」
兵隊長の指示により隊は踵を返した。
ダンロッドは一番最後に境界線を後にした。
彼は、しばらく後ろを向いたまま、馬を走らせた。
心残りで、胸が締め付けられるようだった。
「姫さま‥どうぞ、ご無事で…
必ずや、お会いできると信じております…
ハイィ!」
ダンロッドは隊に遅れた馬足を早めた!
「良かった…夕暮れ前に森を抜けられた。
でも、こんなに人がいっぱいなんてビックリだわ!
これが、カーニバル!」
姫は馬車道を開放した歩道に並ぶ
大勢の見物客の行列の
一番後ろに並んで背伸びをした。
大小のドラムが刻む軽やかなリズムに乗り
ラッパの音を華々しく鳴り響かせながら
音楽隊、仮装舞踏団と行進が続いている。
しかし、やはり見えずらいので
姫は、街路灯の出っ張りに足をかけて
柱に抱きついた。
すると、思わぬものが見えた。
眼前に、飛び込んできた。
「あっ!あれが、海ね!
ほっ、本当に…あったんだ…
吸い込まれそうな程に真っ青!
キラキラ、お日様が反射して、綺麗!
それに、何と言う広さなの!
本当に、湖なんか、比べ物にならないわ!
その果ては、空に続いている!
タンロッドが言っていたわ!
百聞は一見にしかず!
…それが、これなのね!
いくら、話して聞かされても
想像すらできなかった。…いや、疑っていた。
そんなものは、伝説か、おとぎ話の中の
景色だと…そう思っていたわ!
本当だった。
これが、海だ。
森には、ないもの…」
姫は、羨ましくなっていた。
この景色をいつでも、眺められる街の民の暮らし。
それに憧れた。
ここは、湾が、大きく入りくんだ港街だ。
帆船が何隻も停泊している。
既に、海上貿易が、行われ、繁栄を極めていた。
森の民の暮らしとは、かけ離れていた。
姫が、その対比を思い、憂うのは致し方なかった。
姫は、街路灯を降りると
お城の方角に向かって歩きだした。
海を眺めていた時に
遠く丘の頂上に城を見つけていたのだ。
あては、無かった。
ただ、そこに…お城に王子がいる。
その思いだけで、歩き始めた。
「あれは、何かしら?
大きな玉の上に乗って、よく転ばないものね!
何か、棒を投げたり、輪っかを飛ばしたり
わあ、凄い!よくあんな事ができるわね!
あっ、何か、書いてある。
「大道…芸…人…」って、言うのか!
あれは?……テーブルが、いっぱい並んでる。
美味しいそうな、お料理が、一杯!
みんな楽しそうにお食事をしてる!
子供達も、あんなに、はしゃいで!」
数人の子供が、姫の周りを走り抜けた。
「わっ!大丈夫!」
かけっ子をしていた内のひとりの女の子が
勢い余って、姫の懐に飛び込んで来た。
「あっ!お姉ちゃん!ごめんなさい!」
「いいよ!大丈夫?
気をつけてね!」
「アレっ!お姉ちゃん!どこから、来たの?
見た事ないね!
私、そこのパン屋の娘なの。
時々、お店のお手伝い、してるけど
お姉ちゃんと、会った事ないね!」
「あっ、ああ…そうだね!
お祭り見物に来たんだ。
隣村から来たんだよ!」
「そうなんだ!楽しんでね!
あっ、そうだ!これ、あげる。
ビスケット、作ったの!
おやつだけど、まだ、いっぱいあるから
お姉ちゃんに、あげる!ハイ!」
「えっ!いいの?本当に!
ありがとう!嬉しい!」
「うん、じゃあね!」
「うん、ありがとう!
バイ!バイ!」
手を振っているといきなり後ろから声を掛けられた。
「よっ!お嬢ちゃん!どこから、来たんだい!
見かけねぇ顔だな!」
何気なく振り向くと…
「きゃっ!」
目の前に鷲鼻でギョロ目の顔があった。
姫は、ビックリして後ろにのけぞり尻もちを突いた。
「痛った〜い!
ビックリするでは、ありませんか?」
「悪い、悪い!
さあ、お手をどうぞ!」
怪しげな男だ。紳士振って、手を伸ばしてきた。
「結構です。
自分で、立てます!」
そう言いながら、スッと立ち上がった。
これがロメヲ王子なら、喜んで手を差し出し
初めての握手を交わす事が、できたのに…
そんな事を思いながらカッカッカッ!と
石畳を歩き始めた
夕暮れまでに、寝床を探さねばならない。
宿に泊まるなどの知識など、ある訳がなかった。
どこか、物陰を探し休むくらいしか
思いつかなかった。
「お嬢ちゃん!一人かい?
連れは、いないのかい?」
男がポケットに手を突っ込んだまま
付いて来た。
「います!
あの、パン屋で、待ち合わせをしているのです。
私は、あの…そう、大道…芸人を見てから
合流する事になっていたのです。」
姫は、さっきの女の子のウチのパン屋を指差した。
「そうかい!
じゃあ、一緒に、そこまで付いて行ってあげるよ!」
「結構です!
すぐそこですので、どうぞ、ここで、失礼します!」
「お嬢ちゃん!連れない事言うなよ!
ここらは、物騒だ!
俺が、一緒にいてあげるよ!」
そう言いながら、男は姫の腕を掴んだ。
「やっ!離してっ!」
「どうせ、待ち合わせなんて、嘘なんだろ!
うまいモンでも、食わせてやるから…
さあ、来なっ!」
「嫌っ!誰かっ!」
「お姉ちゃん!遅かったね!心配したんだよ!
このおじちゃんは誰?」
目の前にパン屋の女の子が、立っていた。
「ううん!知らないっ!こんな人!
知りません!」
すると、女の子が腕組みをして、男を睨みつけた。
先程の無邪気な幼子とは、一変していた。
その気迫に男は何故か、たじろいだ。
「闇夜に月の満ちる時
熱き血潮の荒ぶれば
人の血筋が蘇る。」
女の子がブツブツと呪文のようにつぶやいた。
「くっ、くそっ!
気味悪ぃガキだな!
お嬢ちゃん!またな!」
男は立ち去った。その背中に姫は叫んだ。
「二度と、会いたくありません!
ううう…」
座り込んだ姫の肩を女の子が優しく撫でた。
「お姉ちゃん…大丈夫?」
「うん!ありがとう!
でも、ちょっと…怖かった…エヘッ…
あなた、強いのね!」
姫は、涙を浮かべながら、何とか、笑ってみせた。
「ううん!なんか、気持ち悪かった見たい。
私、時々、変な事、言い出すから
変な子だって、よく言われるんだ。
でも、お姉ちゃん!気にしないで!
そうだ!お姉ちゃん!
今夜、何処に泊まるの、お宿はあるの?」
「えっ?お宿?…お宿って….何?」
「ええ?知らないの?」
「うん!初めて、隣村を出たんだ。
お姉ちゃん!何も、知らないんだ。恥ずかしいね!」
「そんな事、ないよ!
私も、知らない事だらけだよ!
今から、いっぱい、いろんな事…
覚えていけばいいって
お父ちゃんが言ってたよ!」
「そっか!そだね!
ありがとう!」
「お姉ちゃん…あのね。
お宿は今夜、お休みするところだよ!
寝るところだよ!
夜は、寒くなるから…
お宿がないと困るよ…」
「ああ、ありがとう!
でも、大丈夫!
ホラ、この袋に毛布を入れて来たから
どこか、物陰で休むから…」
「お姉ちゃん…ダメだよ!そんなの…
また、あの男の人が来たら、どうするの?
ねっ!一緒に来て!」
その女の子が小さな手で
姫の指先を握って引っ張った。
女の子は、真っ直ぐにパン屋へ、向かった。
「あっ、ちょ、ちょっと…あの…」
すぐにパン屋の店先に着いた。
「ちょっと、ここで、待ってて…
すぐ戻ってくるから…」
女の子は扉を開けて店内に入って行き
店主らしい男性と話しをしている。
気難しそうな人だ。
女の子が、戻って来た。
「いいって!」
「えっ!」
「今夜のお宿。
私と一緒のベッドだけど…
お外よりは、いいでしょ!」
「えっ!ええ…本当に…いいの?
本当に…ありがとう!ありがとう!
嬉しい!ありがとう!
そうだ!わたくし…ああ…いえ…
私の名前は、ジュリエッタ!
よろしくね!」
「うん!私の名前はマリアだよ!
さあ、行こう!お姉ちゃん!
私の部屋は、屋根裏部屋で狭いけど…
がまんしてね!」
「ううん!全然、平気!おじゃまします!」
扉を開けると店主が片付けをしていた。
「ああ、お姉ちゃん!危ないところだったな!
アイツはこのあたりじゃ、有名な札付きもんだ。
麻薬に人殺しに人身売買!
犯罪なら、何でもござれだ。
しかも、役人に金を渡して罪逃れ!
そんなヤツだからな!
アンタ…間一髪だったよ!
まぁ、いいや!今夜はここに泊まって
明日には、ウチに帰りなよ!
女の子が、一人で、出歩く街じゃないんだよ!
ココは…」
「わかりました!あっ、お手伝いさせて下さい。
せめてものお礼です!」
「おっ!そうかい!
じゃあ、この、木の皿を重ねて
その棚に並べてくれるかい!」
「はい!わかりました!」
怖そうな人だと思っていたが
笑うとすごく優しくて温かい笑顔だ。
姫は、人は見かけによらないとつくづく思った。
マリアと一緒に玄関先を、ホウキで掃き終わると
厨房に呼ばれた。小さなスペースだ。
残り物のパンとスープが
パン粉をこねる台の上に用意されていた。
「これきりしかないけど、我慢しとくれ!
味は保証するから…」
「ありがとうございます!」
手を合わせてブツブツと
神への感謝を述べてから…
「いただきます!」
…と、パンを口にした。
「あっ!おいしいです!凄く!
それに、温め直して頂いて、香ばしい。
スープも美味しいです。
ありがとうございます!」
「そうかい!…なら良かった。
ああ、それと、食いながら聞いてくれ!
お嬢さん…いや…お嬢さま…
アンタ、平民じゃないな!
あっ、イヤ!
それを、とやかく言っているわけじゃないが…
何処かの貴族の娘さんなんだろ!
そんな、少年のような身なりをしているが
それは、乗馬用の衣だ。
しかも、仕立てが良い!
それに、アンタの所作や食事前の作法…
何を取っても、俺たちとは、違う!
きっと、訳ありなんだろうがな!
とにかく、さっきも言ったが、
明日はここを立つんだ。
必ずだぞ!
ここは、アンタのようなお嬢様が
長居する場所じゃない。
お父様やお母様も心配しているに違いねぇ!
なっ、悪い事、言わねえから
そうしてくれ!頼むよ!」
「はっ、はい!
グスッ!ありがとうございます!
わたくしの為に、そのように、心配して頂いて
グスッ!明日の朝早く、ここを立ちます!
今夜だけ、お世話になります。ウウッ!」
「泣かんでいいから…しっかり食え!
…と、言う程、何もないけどな!
はははっ!」
「いえ!充分です!
感謝します!」
「お姉ちゃん!良かったね!
今度は、お父さんとお母さんと一緒に来てね!
また、お姉ちゃんと、会いたいから…」
「ウン!ウン!
来る!来るよ!きっと、また、来るよ!」
姫は思わずマリアに抱擁した。
「ご馳走様でした。
では、失礼します。お先に…
おやすみなさい!」
「ああ…おやすみ!
そうだ!くれぐれも…
抜け出したりするなんて事は、ないようにな!
夜のカーニバルは、夕方のような連中が
ウロウロしているからな!
まぁ、もう、こりごりたろうけどな!
じゃあな!おやすみ!」
「はい!おやすみなさい!」
「お父ちゃん!おやすみなさい。」
「ああ、マリア!お姉ちゃんの事
ちゃんと見張ってろよ!」
「うん!わかった!」
「もう、マリアちゃん!大丈夫だよ!」
「そうだな!はははっ!」
「えへへっ!」
「ふふふっ!」
マリアの部屋へは、ハシゴで登った。
床に一人分の四角い穴が開いている。
マリアが先に上がり荷物袋を受け取ってくれた。
「お姉ちゃん…これ、ちょっと、重いね!」
「はははっ!ごめんね!
毛布と着替えとか、持ってきたら
いっぱいになっちゃった。」
そう言いながら床の穴から顔だけ出した。
「へーっ!こんな風になってるんだ。
本当に、目の前が屋根の裏側なんだね!
だから、屋根裏部屋かぁ…」
小窓の付いた三角の壁が前後ろ
斜めの屋根裏壁が左右に…
そして、小窓の下に小さめのベッド。
他に何もないが、床は、古いが光沢がある。
マリアが拭き掃除を欠かさない事が見てとれた。
「狭くてビックリしたでしょ!
お姉ちゃんのお部屋は、広いのでしょう?」
「うん、ここよりは、少し広いけど…
でも、無駄にひろいだけよ!
だって、お部屋なんて
ベットが、あれば充分でしょう。
「お姉ちゃん…こっち…
ここに来て!」
マリアがベッドの上の小窓を開けた。
二人で並ぶとギリギリの幅の小さな窓だ。
姫はマリアの横に並んだ。
ギシギシとベッドが軋んだ。
夜風が、そよそよと頬を撫で
ほどいた銀髪を揺らし、心地良かった。
「わーーっ!綺麗!
これが、夜のカーニバル!」
姫は、思わず叫んでしまった。
「ああ…ごめんなさい!
急に大きな声を出して…でも、初めて見たの!
本当に綺麗だわ!
それに、夜と言うのに、こんなに人がたくさん!」
「うん、今夜は仮面パレードだからね!
みんな、仮面をして、仮装をして
パレードが終わっても
どこかで夜通し、踊るんだって…
私は、いつも、眠っているからよく知らないけど…
隣り村では、夜は人が、いないの?」
「うん…夜は魔物が、出るから
誰も外に出ないんだ!
鍵をしっかり閉めて、部屋にこもるんだよ…」
「じゃあ、同じだね。
この街も、夜は、悪い人がウロウロしてるから
女の人や子供は出歩かないよ!
今夜は特別だって、警備兵も沢山出てるし
でも、女の人はパートナーと
一緒じゃないと、やっぱり危ないんだって…」
「そっか…
ありがとう!マリアちゃん…
ちゃんと、教えてくれて…
本当に、危ないんだね!
お姉ちゃんね!
自分だけが、不自由してるって、思ってたんだ。
夜の散歩もできないし
森からも、出られなかったし…
あっ、…森の事は…
…でも…
マリアちゃんには、話しておくわ!
あのね…マリアちゃん…私…ね…
森の民なの…
カーニバルが見たくて、この街に来たの…
隣り村から来たなんて、嘘ついて、ごめんね!」
「そうなんだ。
でも…お姉ちゃん!
嘘、なんかついて、ないよ!
だって、森は街の隣だから…
隣り村でしょ!」
「マリアちゃん!そっかっ!そうだね!
やっぱり、隣り村だね!隣だもんね!
ふふふっ!」
そう言いながら姫がマリアの手を握ったその時だ。
パァン!パッパーン!
ドーン!ドドーン!
甲高い音と地響きの様な音がした。
「きゃあ!戦さっ!
戦さが、始まったの?
マリアちゃん!逃げないと…」
すると、マリアが姫の両手を強く握り返した。
「フフフッ!お姉ちゃん!落ち着いて!
大丈夫だから…
ホラッ!窓の外を見て!」
姫は涙ぐんだ瞳でマリアの顔を見た。
マリアは、ニッコリ微笑んでいる。
姫は、窓の方に恐る恐る顔を向けた。
大輪の花が咲いていた。
小窓いっぱいに光の花が広がっていた。
それが、チラチラと雪のように降りて行った。
「もしかして…
これが…マリアちゃん…これが…
…花火?」
「花火だよ!」
同時だった。
「ふふふっ!
きれいでしょ!」
「うん!綺麗!凄く綺麗!
あっ!また、上がった!
凄い、凄い!あんなに、沢山!」
姫は、思わず小窓の枠から乗り出した。
「お姉ちゃん!あぶないよ!
落ちゃうよーっ!」
マリアが心配して姫の腰のあたりを引っ張った。
「ああ…ごめんなさい!
夢中に、なってた!
ダンロッドから花火の事、聞いてたのに…
慌てて、その事さへ、すっかり忘れてたわ!
ああ、でも、本当に綺麗!
夜空に大きな、お花が咲いてる見たい。
それが、最後は星屑のように消えて行く…
何だか、この世の儚さみたい…
それが、また、良いのよね!」
「お姉ちゃん……
よくわからない??」
「これは、マリアちゃんには
少し、難しかったかな…ははは…」
しばらく、すると、一際、大きな花火が上がり
人々の歓声が上がった。
それが、打ち止めとなった。
突然、街中が静けさにつつまれた。
人々はゾロゾロと家路に向った。
花火の終わりが
今夜のカーニバルの終わりの合図だった。
後は、飲んだくれ共が、夜道を徘徊し
巷で、遊女と戯れ踊り狂うのみだ。
「マリアちゃん‥これは、聞いてもいいのかな?
お母さんは、今日はどうしてるの?」
「あそこだよ!」
マリアは、まだ開け放たれていた
小窓の外を指差した。
その指先に一際光る星があった。
北極星だ。
「あの、お星さまに、なったんだって…
お父ちゃんが言ってた。
マリアが赤ちゃんの時に、お別れしたから
私、お母ちゃんのお顔、覚えてないの!
でも、いつか、会えるって…
マリアが大きくなったら、いつか、会えるんだって
だから、マリア、ご飯…
一杯食べてるんだよ!
ああー…早く、大きくなりたいなぁ!」
「そっかぁ…そうだね!
絶対、会えるよ!
絶対!」
マリアは、泣いていた。
姫も、泣いていた。
二人で抱き合って眠った。
泣きながら眠りについた。
続く




