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ジュリエッタ.ロン.シェタット.アン.ロリータ ! それがわたくしの名前です! ロメヲ&ジュリエッタ 境界線を越えた恋  作者: 桂虫夜穴


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16、魔王の正体


「ようこそ、いらっしゃいました。

お待ちしておりましたよ!」


「あ、あなたが…魔王……?」


民達(たみたち)からは

そのように、呼ばれてるらしいですね!」


「えっ!

あなたが名乗ったのでは、ないのですか?」


「いえいえ!

そんなに、厚かましくは、ないですよ!

そんな、魔王なんて‥恐れ多い

私は、ただのオバさんですから…」


「いやーっ!いやいや!

ただのオバさんを魔王とは、呼ばないでしょう!

ここに、こうして…ここを棲家としている。

それだけで、あなたを魔王と呼びたくなりますよ!

たった一人で、この、森の深部で暮らしている

それだけで…」




何故か、お茶を頂いていた。

歓迎されていた。



二人は抱きしめ合いながら

森の深部の真っ頂点の点に伸びる

桜色の光のドームの中をゆっくり下降して行った。


木々も枝葉も光の放射された部分だけ丸く

ポッカリ空いている。


そこをゆっくり降りた。

何故だろう…

二人は優しく温かい気持ちに満たされていた。

桜色の光の中を降りる間

ずっと、そんな気分だった。


二人でいる。

それだけではない。

この光に守られているような気がしたのだ。



木々の間をすぐに抜けた。

すると広い空間になった。

巨木が大きく湾曲し倒れながら覆い被さるようにり

天井を支え、ドームを形成している。

それが、上空からは、大きな渦のように見えたのだ。


降下中に下を見ると、人が立っている。

見上げてこちらを見ている。


「王子…あの方が魔王かしら…

あのお美しい方が…」


「いや、まさか!

出迎えの方では、ないですかね!

まあ、とにかく降りましょう。

ゆっくり、降りますけど

下をよく見て、タイミングを合わせて下さい

着地の際は膝を曲げるなりして

衝撃を緩和して下さい。」


「あら!まあ…

そんな、乱暴な着地をするのですか?」


「いえいえ…初めて挑戦する事なので

失敗するかもしれない可能性を示唆したまでです。

できる限り、ソフトに降りるように

気をつけるつもりでは、いますけど…」


「わかりました。

歯を食いしばって耐えます!」


「いや、そうじゃなくて…

タイミング…タイミングを合わせて下さい!」


「ん……って、王子……??

もう、ついとるやないかーーい!」


「ああ、そのようだ。

自動制御をしてくれたらしい。

要らぬ雑念は無用のようでしたね。

‥て、今の言いようは…」


「つい、思わず出てしまいましたわ。」


「はいはい!

仲のよろしい事ですね。」


「あっ、これは、お恥ずかしいところを

お見せしました。

我々は…」


「存じておりますよ!

街国の王子と森国の姫さまですね!

ようこそいらっしゃいました。」


「えっ!ご存知なのですか!

わたくし達の事を?」


「ええ、もちろんです。

こちらに向かわれた時から

存じ上げておりました。

その事を察知しましたので…

それで、光の合図を出していたのです。

迷子になられないように…」


「そ、それは、心遣い、ありがとうございました。」


「いえいえ、このようなむさ苦しい所へ

よくおいでなさいました。

お恥ずかしい事、この上ないのですが…

歓迎致しますよ!

あっ、これは、長々と立ち話を…

申し訳ありません。

どうぞ、こちらへ、お掛け下さい。

あっ、もう、そろそろ

離れられてもよろしいのでは…」


「わっ!ヤダっ!

恥ずかしっ!」


二人は到着してからも、シッカリと

抱き締めあっていたが

顔を見合わせて

ハッ!…と、気づき、バッ‥と、離れた。


「えっ⁈ あっ、そうでした!」

ずっと、こうしていましたから

同化してしまっていたようです。

はははっ!」


王子は苦笑いをしたが

姫は真っ赤な顔をして、うつむいた。


「お熱い事で、よろしいですね!

さあ、どうぞ、こちらへ…」



ドーム内部は玉ねぎの形を

内側にしたようなカーブを描いている。

木の壁にはドアが幾つもある。

他にも部屋が沢山があるのだろう。


「すぐに、お茶を用意しますので

少々、お待ち下さい。」


「ああ、いえいえ、お構いなく!

突然、お邪魔した身、故…」


「あっ、そうですわ…魔王さまは

今朝は、お見えにならないのでしょうか?」


「あっ、ジュリエッタ!それは…」


「良いですよ!

実は、魔王と、そう呼ばれているのは…

私なのです。」


「ええっーっ!何と、申された!

あなたが、魔王ですとーーーっ!」


「ええ…僭越ながら…

お恥ずかしい事に、そう呼ばれているのです。」


「えっ!

あなたが、名乗ったのでは、ないのですか!


「いえいえ…

そんなに厚かましくは、ないですよ…

ふふふふっ!」


そう言いながら、ティーポットから

カップにお茶が注がれた。


「わあ!良い香りがします。

紅茶では、ないですね!

爽やかでいて、華やかさもあり

何故か、気持ちが落ち着くような…」


「さすが姫さま!鋭いですね!」


「いえいえ!それほどでも…」


「まあ、どうぞ!どうぞ!召し上がって下さい。

これは、ジャスミン茶と申しまして

異国のお茶なのです。

街国の海上貿易のおかげで

このような異国の地の名産物も

味わう事ができるのです。ありがたい事です。」


「えっ!では、王子は、この、ジャス……

何とか茶をご存じなのですか?」


「ジャスミンティーです。

それは、一応…」


「まあ、洒落た言い方をなさって!

それにしても、ズルいです!

街国ばかり、良い想いをして!

昼も夜も明るくて、美味しい物ばかり召し上がって

不公平です。不平等です!」


「そっ、それは…

それは、私が国王になった暁には

森国と和平を結ぼうと考えておりました。

森と街が一つになり

経済と文化を共にし、分かち合う。

そんな、民達の暮らしを夢見ていたのです。

しかし、それも、今となっては

夢のまた夢となってしまいました。

こうして、私は、全ての人の想いを踏みにじり

国王になるべき道筋を、自ら捨てたのですから…」


「王子!ロメヲ王子!

そして、ジュリエッタ姫!

ならば、今すぐ!たった、今!

ここで、和平を結んで下さい!」


「ええ!

どう言う事ですかっ⁈」


「それは、また、早急ですし…

私達、二人には、そんな、権利も権限も

まだ、ないのです…

いや!無くしてしまったのです!

自らの手で…」」


「いえ、大丈夫です。

私の権限の元に、この契約を正式なものとし

締結させます。

あとは、お二人の意思次第です。

私に、おまかせ下さい!」


「そ、それならば、あなたを信用します。」


姫は王子に、小声で、耳打ちした。


「お、王子…本当に大丈夫ですか?

良さそうな人には、見えますけど…

今、会ったばかりの人ですよ。

あまりにも、信用し過ぎでは…」


「姫!この方の目を見てください!

美しい瞳をしていらっしゃる!

この、瞳は決して嘘など付いていらっしゃらない!」


「まあ、お美しいから信用なさるとっ!

見た目で、判断なされたのですか!

ああ…ガッカリしました。

ロメヲ王子が、そんな軽薄な方だとは

思ってもいませんでした。

わかりました。わかりました。

ご勝手に契約でも、何でも結ばれたら

よろしいですわ!

何なら、婚姻のお約束でも、されたら

どうですかっ!」


姫はガタッと立ち上がり

数ある中の一番近くのドアに向かった。

それが、出口とは限らぬのに…


「姫っ!姫っ!ジュリエッタッ!

待ってください!

そんな、つもりでは!

あなた程では、ない!

あなたの瞳が、この世界で…

いや、あの世であっても…

あなた程の美しい瞳はない。

あなたの瑠璃色のその瞳が一番なのです。

私史上最高なのです。」


魔王さまは…

「王子さま…ったら

そんな言い方をなさらなくても…

上げた後に下げるなんて…」

‥と、少しカチンときたが、そんな事は

おくびにも出さなかった。



ドアの手前で、姫を王子は抱き止めた。

背中から抱きしめた。


「良かった!間に合った。」


魔王さまは、胸を撫で下ろした。

その部屋は、ドラゴンの間だった。

いきなりドアを開ければ

ドラゴンが驚いて姫の頭をガブリと

やりかねなかったからだ…」



「ジュリエッタ….あなた、だけです。

愛しています。

本当は、わかっていますね。

言葉、遊びですね…

戯れただけですね」


姫は、泣きながら、頷いた。


「信用しましょう…この方を…

私達には、もう、他に、手は、ないのです。

進むべき道も…

これが、ただ一つの生きる道だと信じて…

信用して、あの方にお任せしましょう。」


「はい…」


王女が、納得すると、王子がテーブルへ

王女をエスコートした。

すると、魔王さまは、丸いテーブルの方へ移動していた。


「こちらへ、どうぞ!」


両足を広げた程の幅の、濃茶色の丸い台の下に

飾りを彫り込んだ一本の棒。

一番下は、四本の猫足が十字で支えている。

その上に、いつ、用意したのか…

これも、丸い紙が真ん中辺りに置かれている。


「さあ、ここへ、おいで下さい。」


椅子はない。

立ったまま、三人は丸テーブルを囲んだ。

その丸い紙には、見た事もない文字。

そして、星座のようなものが、描かれている。


「さあ、お二人、この紙の上に手を重ねて…

目を閉じて下さい。

何も、考えず…身も心も委ねて下さい。

この時間と空間に…」


姫の上に王子…

その上に魔王様の手の平が重ねられた。

おもむろに、魔王が呪文の言葉を発した。


「この地と、この海と、この空と

全ての場所と空間と星の合間に存在する全てのもの

その全てのモノの名において

このもの達の、分かった血筋を

また、一つのものとせん。

永遠のものとせん!」



シーーーン…と、鎮まり返っていた。

森の木々さへも

風で揺れる事を躊躇しているようだった。



「終わりました。

これで、森国と街国の和平は成立しました。」


「ええっ!これでっ⁈

何百年と続いた対立が、これで終わったと

おっしゃるのですか?」


姫と王子は重ねた手を握りしめ

驚きを隠せなかった。


「そうです。

もうすぐ、森国、そして街国。

両軍がやってきます。

到着次第、この、和平の事実を私から告げます。

誰も、この事実を受け入れないとは

言わないでしょう!

私が、それは、許しまさせん!

絶対に…


恐怖で、押さえつける事は

あまり好ましくはありませんが

民衆の苦しみを解消する事…それが、先決なのです。

戦さは、支配者の欲だけで起きる事。

民衆の辛さ、苦しみ、悲しみなど、どこ吹く風で

全てを奪い尽くし、全てを破壊する。

物も人の心も…


私は、待って、いました。…この時を

あなた達、お二人が生まれ、出会い

こうして、ここに訪れて下さる事

この日をずっと、待っていたのです。」


「あなたは、予言者でも、あるのですか?」


「いえいえ、私は、ただのオバさんですよ!」


「あーっ、もういいですから!

そのジョークは!」


「そうですか!

それは、失礼しました!」


「ははははっ!」

「ふふふふっ!」

「おほほほっ!」



続く

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