表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無能と言われた【鑑定士】、実は世界樹の管理人でした 〜パーティーを追い出されたので、辺境で伝説の聖域を作っていたら、聖女や女騎士が「泊めてくれ」と泣きついてきた〜』  作者: やまご
第2章:聖域都市・建国無双編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/101

第63話:魔王の鼓動、あるいは「最初の契約」

ドクン、ドクン。

 アルスの胸の奥で、封印したはずの「漆黒の核」が熱く脈動する。スラムの湿った空気の中で、ネルガルの赤い瞳が、獲物を値踏みするようにアルスを射抜いた。

「……くくっ。いい音だ、鑑定士。……お前がどれだけ『普通』を装おうとしても、その魂に刻まれた魔王の残りフレーバーが、女たちを狂わせる。……お前はもう、ただのゴミ拾いには戻れないんだよ」

 ネルガルがカウンターの下から、ボロ布に包まれた「何か」を取り出した。

 それは、一見すればただの薄汚れた布切れだ。だが、アルスが【鑑定】を走らせると、その裏側に潜む禍々しい文字列が網膜を焼いた。

『鑑定結果:【深淵の残滓・外套プロトタイプ】』

『状態:未起動。……使用者の「良心」を10%削ることで、一瞬だけ存在を世界から消去ステルスする』

「……これを使え。……お前の半分を喰った私からの、再会祝いだ。……ただし、代償は分かっているな?」

「……俺の『良心』、か。……もう、半分しかないっていうのに」

 アルスは苦渋の表情でその外套を羽織った。

 その瞬間、彼の身体の輪郭が、陽炎のようにゆらりと歪む。魔王時代の圧倒的な武力ではない。だが、今の「最弱のアルス」にとっては、狂ったヒロインたちから逃げ延びるための唯一の糸口だった。

 その時、酒場の扉が――**ドォォォォォォォン!!**という轟音と共に、蝶番ごと吹き飛んだ。

「……見ーつけた。……アルス様。スラムの酒場で密会なんて……。……いけない子には、少し『お仕置き』が必要かもしれませんわね?」

 爆煙の中から現れたのは、セレスティアだった。

 彼女の手には、先ほどの銀のナイフ。そして、その背後には……。

「……セレスティア。……約束だ。……捕まえたら、一晩ずつ交代で『管理』する。……異論はないな?」

 アイリスが、黒い大剣を軽々と担いで現れた。

 前世では「正妻」の座を巡って殺し合った二人が、なんと「逃げ足の速いアルスを確実に捕獲する」という共通の目的のために、**【アルス共有協定】**を結んでいた。

「……な、なんだよそれ……っ! 二人で組むなんて、反則だろ!!」

 アルスは絶叫した。

 セレスティアの「広域索敵魔法」と、アイリスの「圧倒的機動力」。

 この二人が手を組めば、この街のどこにいても、一分と持たずに捕まる。

「……あら。……反則? ……アルス様こそ、私たちを置いて一人で死のう(ループしよう)としたのですから、お互い様ですわ」

 セレスティアが指を鳴らす。

 酒場の出口という出口が、黄金の魔法陣によって瞬時に封印された。

「……ネルガル! 助けろよ、君の『おもちゃ』が壊されるぞ!!」

「……ははは! 断る。……修羅場を乗り越えてこそ、男は磨かれるというものだ。……せいぜい、二人の『愛の檻』の中で、中身がなくなるまで搾り取られるがいいさ」

 ネルガルは酒瓶を抱えて影の中へと消えた。

 アルスは、じりじりと距離を詰めてくる二人の美女……いや、二頭の飢えた獣を見つめた。

「……【再構築】……っ! 壁を、壁を『出口』に書き換えろ……っ!!」

 アルスが必死に右手をかざす。

 だが、その指先が光るよりも早く、アイリスの剛腕がアルスの胸ぐらを掴み、そのまま壁へと押し付けた。

「……捕まえた。……もう、指一本動かさせんぞ、アルス」

 アイリスの熱い吐息が、耳元を焦がす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ