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『無能と言われた【鑑定士】、実は世界樹の管理人でした 〜パーティーを追い出されたので、辺境で伝説の聖域を作っていたら、聖女や女騎士が「泊めてくれ」と泣きついてきた〜』  作者: やまご
第2章:聖域都市・建国無双編

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第49話:因縁の再会――泥を啜る勇者と、隠しきれない殺意

工房の前に倒れ込んだのは、かつてアルスを「ゴミ拾いの鑑定士」と呼び、嘲笑いながらパーティから追放した戦士・ガレスだった。

 かつての黄金の重鎧はひび割れ、自慢の大剣は中ほどから折れている。そして何より、彼の右腕は肩口から無残に欠落し、包帯からは腐敗した魔力の黒い膿が滴り落ちていた。

「……アルス、なのか? 嘘だろ……その、みすぼらしい姿……」

 ガレスは、ボロを纏ったアルスを見上げ、絶望と安堵が混ざったような歪な笑みを浮かべた。

「ガレス。……生きていたのか。他のメンバーはどうした?」

「……全滅だ。あの『深淵の主』の眷属に襲われてな……。俺だけが、この『呪物』を抱えて逃げ延びた……」

 ガレスが震える左手で懐から取り出したのは、赤黒く拍動する「肉塊のような宝石」だった。

『鑑定結果:【暴食の心臓ベルゼブブ・コア】』

『状態:極めて危険。……周囲の者の「執着心」を物理的なエネルギーに変換し、肉体を異形へと再構築する』

 アルスの脳裏に警報が鳴り響く。これは、かつて彼が天空都市でヒロインたちに施した「過剰な魔力供給」と、極めて似た波長を持っていた。

「……アルス様。その方を、中へ入れるのですか?」

 背後から、セレスティアが静かに現れた。

 その手には、先ほどまでパンを切っていたナイフが握られている。彼女の瞳には、かつての聖女の慈愛など微塵もなく、ただ「自分の生活圏に侵入した異物」への、冷徹な排除の意思が宿っていた。

「セレスティア、待って。彼は怪我をしているんだ」

「……彼は、アルス様を捨てた男ですわ。アルス様を傷つけ、泥を啜らせた『不純物』。……そんなものを、この清らかな村(聖域)に入れる必要はありません」

 セレスティアが一歩踏み出す。その瞬間、彼女の足元から、枯れていたはずの魔力の残滓が、黒い棘となって地面を割り始めた。

「そうだ、アルス。……こいつは殺して、その『石』だけ奪えばいい」

 いつの間にか、屋根の上にアイリスが立っていた。

 彼女の弓には、すでに鋭い矢が番えられている。その狙いはガレスの喉元ではなく、まるで「自分たちの秘密を知る証人を消す」かのような、迷いのない殺気だった。

「待て! 二人とも、落ち着け! ……今の俺たちは、もう『あっち側』じゃないんだ!」

 アルスが必死に叫ぶが、彼女たちの耳には届かない。

 ガレスが持ってきた【暴食の心臓】が、彼女たちの心の奥底に封印されていた「アルスへの独占欲」を、再び活性化させてしまったのだ。

「……あぁ、アルス様。……貴方は、優しすぎる。……だから、私たちが代わりに『お掃除』してあげますね?」

 セレスティアの瞳が、一瞬だけ黄金色に濁った。

 

「……ヒッ、化け物……っ! お前ら、あの天空都市の……っ!!」

 ガレスが腰を抜かし、後ずさる。

 アルスは悟った。

 彼女たちの「バグ」は、直ったのではない。

 ただ、この平和な村という「新しい檻」の中で、アルスが自分たちだけを見ているという状況に、一時的に満足していただけなのだ。

 一人の侵入者。一つの呪物。

 それだけで、再構築されたはずの日常は、再び「血と愛」に塗れたサスペンスへと引き戻されていく。

「……やめるんだ! 【鑑定】……くっ、権能が、足りない……っ!!」

 アルスが手を伸ばした瞬間、セレスティアのナイフが、ガレスの喉元へと吸い込まれるように放たれた。

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