3話 ドラ活
こなたのリスナーが、使い勝手が良すぎる
ダンジョンはね、異世界なんだよ
世界中にゲートがあるけど、端末に座標を入力することで、その座標のダンジョンへいけるんだ……当たり前だけど、世界各地にあるどのゲートでも、同じ座標なら同じ世界へ行ける
種類も無限にあって、フォロライフダンジョンのように、魔物がいっぱい居るけど建築に適したダンジョンもあれば、建築は出来ないけど銃火器を簡単にカスタマイズ出来て、ロボットが襲って来る近未来的なダンジョンや、幽霊がいっぱい居るホラーなダンジョンなんてのもある
この前ヒビキが行っていたダンジョンなんて、現代日本にそっくりだけど、住人がヤクザとチンピラばっかりの世界だった
そんな無限のバリエーションがあるダンジョンを、最近ヒビキは駆け回っている
理由は本当にバカらしいんだけど、お肉を求めてだ
「こ、こなたそー……ダンジョンの肉って、聞いてた以上に不味いんだが……」
「うん……これは流石に食べられないね……」
フォロライフダンジョンには、お肉をドロップする魔物が居て、簡単に増やせるんだけど……めっちゃ不味いんだよ!
と言うか、自生してる野菜や野生の魔物は普通の味なのに、簡単に増やした魔物や野菜はいきなり不味くなるんだ
先輩冒険者さん達が作った、畑や養畜場があるんだけど……それって全部、ポーションや道具とかの素材用だったりする
「自由に使っていいよ」と言われた意味が分かったよ、事前知識で増やした魔物は不味いと知ってたけど、ここまでとは思ってなかったから!
そして最悪な事に、その法則は今まで見つかった全てのダンジョンにも当てはまるんだ
――死者復活と増やした食べ物は不味い、それがダンジョンの不文律なんだから
「私は決めたぞ、こなたそ」
「何を?」
「ダンジョンは無限にあるんだよな、ならきっと、美味しいお肉を増やせるダンジョンだってあるはずなんですよ!」
「ちょっと待って、何するつもりなの!」
張り切るヒビキが説明したのは、頭を疑う計画だった
だって、不味いお肉なんて許せないから、美味しいお肉を探す為に、前人未到のダンジョンに潜るとか言い始めたんだから!
もちろん僕は止めたよ!だってヒビキは女の子なんだよ、死んでも身体は生き返るけど心は治らないもん、もし変なダンジョンだったら危ないじゃん!
でも、やっとお肉を食べられると思っていた期待を裏切られたヒビキは、僕の静止を振り切って、未探査のダンジョンを探索するようになったんだ
――そして、何故かそれが受けた!
肉を求めてダンジョン探索……通称“ドラ活”とタイトルを付けられた配信は、毎日(平日のみ)ドラゴンに変身したヒビキが未探査ダンジョンを駆け巡って、美味しそうな魔物を増やすだけの配信なんだけど
あらゆる環境でも平然と飛ぶ姿と、その圧倒的な火力で数多の魔物や敵を倒す様が爽快過ぎて、大人気を博したんだ
研修終わってから一ヶ月で、ヒビキのチャンネル登録者数は二十万人を超えた
これは歴代冒険者の中でも断トツのスピードで、“龍王”なんて二つ名まで貰ったんだから!
先輩冒険者さん達も喜んでいる、だって、ヒビキの話題性で冒険者配信を今まで見なかった層が見始めたから活気が出て来たんだもん
ヒビキが褒められて、僕も嬉しいよ
「こなたそー、検疫が終わったの持って帰ったから、いつもの頼むなー」
「はーい、配信準備するから、ちょっと待っててー」
そしてそのお零れにあずかっているのが、僕だ
毎日ちゃんと冒険者配信をやってるんだけど、戦い方が特殊なせいか芳しくない
人を選ぶみたいで、刺さる人にはめっちゃ刺さるけど、合わない人には絶対に合わないって感じ
だからチャンネル登録者数も伸び悩んでたんだけど――ヒビキとのコラボ料理配信をするようになってから、変わった
最初に反対してた癖にと思うかもしれないけど、安全確認のチェック項目を運営さんと作ったから、今ではそれ程心配してない……危うい場面がある度に、チェック項目は増やしているけどね
準備も済んだから、いつもの時間に配信を始めて、挨拶を済ませたんだけど
毎回始まりは緊張する
「でヒビキ、これ何のお肉なの?」
目の前に二キロくらいの肉塊が置かれているんだけど、見た目だけは美味しそうなんだよね……
「少々お待ち下さい、これはですね……メカ・ザウルスのお肉ですねー」
「メカって名前付いてるんだけど、大丈夫なの!」
「ちゃんと検疫で可食って言われたからな、大丈夫でしょ」
「…………怖いから、少しだけ焼いてみるね」
嫌な予感しかしなかった僕は、ミニハンバーグ分くらいだけ切り分けて焼いてみた
……あっ、この匂い知ってる、絶対にお肉の焼ける匂いじゃないけど、知ってる匂いだ
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ(荒い呼吸)……焼いたらガソリンの匂いがするんですけどー!げきヤバですよ!これは人が食べてはいけない物ですよー!」
●草
●草
●草
●ガソリンw
ヒビキが繁殖させた魔物のお肉を料理する配信なんだけど、それで僕のチャンネル登録者数は爆増したんだ
地獄みたいな企画だけど、リスナーさんが喜んでるから続けてる
「はい、ヒビキあーーん」
「やめなストップ!こなたそ、これは食いもんじゃねー!」
「駄目だよヒビキ、調理したのは全部食べるって約束でしょ」
●てぇてぇ
●あーん、羨ましい
●てぇてぇ
「てぇてぇじゃありませんよ!リスナーのみなさんも、止めて下さいよー!」
「ええーい往生際が悪い、ほらっ口開けなさいよ……(ゴキュ!)……ふんっ!」
●龍人の口を無理やり開けれる腕力に草
●強制あーん好き
●ああ^〜癒やされるんじゃー
無理やり食べさせてやると、ヒビキが涙目になった
偉い偉い、ちゃんと吐き出さずに飲み込んだね、やれば出来るじゃん
「げきマズなんですけどー!」
「(パク)……(モグモグ)……うん、ガソリンで出来たコンニャクみたいな味がするね」
「こなたそ、残りは全部やる」
「はいはい処理してあげますよ、でも、調理してない分は明日売って来てね」
「はい、ダンジョン潜る時に持って行きます、研究用に買い取ってくれるから、助かります」
●今回も駄目だったか
●逆に、美味しいダンジョン肉が出てきたら、畜産業が潰れるから助かる
●それより、いつものはよっ!
「ではでは、今回も駄目っぽいから、美味しいダンジョン料理を作っていくよー!」
「こなたそ、はよ口直し作れ!」
「はいはい、今回は茹でて美味しいダンジョン草を取ってきたけど、野生の豚も狩れたから、豚しゃぶ鍋焼きうどんだよ!」
「肉キターーー!こなたそ、私の分は肉大盛りで頼みますよー」
「やだよ僕の分が少なくなるじゃん、ヒビキには野菜大盛りであげる」
「そう言いつつ、私の分に肉いっぱい入れてくれるこなたそ、好き」
「言ってなさい、ほらお椀出して、すぐに出来るからね」
●このやり取りよ
●てぇてぇ過ぎる
●毎回こなたんが、配信で肉を求めて彷徨ってるのを知ってるから、なおさらだな
●いっぱい食べてもろて
―――
――
―
収益化に落ちた!
突然何を言っているのかと思うだろうけど、配信動画を投稿している動画サイトに、収益化申請が却下されたんだ
とは言っても、僕はどうせ落ちるだろうなーっと思っていたのでダメージはない
むしろ、ヒビキの方がショックを受けている……未踏破のダンジョンで暴れまわったり、ライン超え発言したり、配信フィルターの限界に挑戦して、グロ動画を流して配信を止められたりしてたから、ヒビキも落ちて当然なんだけど
どのくらいショックだったかと言うと、僕を無理やりゲリラ配信に連れ込んで、リスナーさんに愚痴り始めたくらいショックだったらしい
「私が落ちるのは分かるんですけど、なんでこなたそが落ちるんですかー!」
そっちか!てっきり自分が落ちたのを愚痴るのかと思ってたら、僕の事で怒ってた
そっちはそっちで愚痴るだろうなーと予想はしてたけど、まさか配信で言うとは思わなかった
とりあえず、リスナーさんも困惑してるから、僕はヒビキを押し退けてから説明する事にした
「みんなこんこなたー、突然のコラボ配信だけど報告するね、僕とヒビキの収益化なんだけど………………二人仲良く落ちました、あはははは」
●うそ……だろ
●まだ俺たちにスパチャ投げを我慢しろと言うのか!
●審査した奴、マジでふざけんな!
●いや、妥当だろ……妥当だと思いたい
●頭では理解出来るけど、心ではムカつく!
「マジで信じられないんですけどー!こなたそは落ちる要素ないでしょー!」
「いやいやいや、最近は色んな先輩や同期とコラボばっかりやってたからね、ソロ配信での集客効果に疑問を持たれたんだよ」
●いや、どう考えても……優しいな、こなたんは
●これが気配り天使
●てぇてぇ
●こなたんの気持ちを考えると、何も言えねー
リスナーさんにはバレてるみたいだけど……はい、嘘です
原因はライン超えしまくるヒビキとのコラボ動画なんだけど、それを言ったらヒビキが気に病むからね、言ってやんない
だいたいこいつ収益化の申請前に、マネージャーさんから言われてるんだよ
「危ういアーカイブを消しませんか?このままだと、多分通りませんよ」
それに対して、ヒビキはなんて言ったと思う?
「断る!そんな事をしたら、私の配信を楽しんで見てくれたリスナーを裏切る事になるからな!」
格好良いよね!でも、それを聞いてた僕は大笑いしちゃったんだよ、だって、余りにもヒビキらしいんだもん
バカだよねーヒビキは…………だからさ、僕も消さないって決めたんだ
――ヒビキとのコラボ配信を消したら、ヒビキが悲しむからね!
まぁその結果、二人揃って貧乏生活の延長が確定したんだけど(笑)
僕も大概バカだなーっと思っていたら、ようやく愚痴るのを止めたヒビキが、リスナーさんのコメントを見て考え始めた
そして苦しそうに、口を開いたんだ
「…………なぁこなたそ……もしかして、収益化通らなかったのって、私のせいですか?」
(あっ気付いたな)と察したけど、いつか気付かれると予想してたから、あらかじめ用意しておいた言葉で言い返してあげる
「うわっ、自意識過剰!ヒビキって他人の収益化を潰せる程、影響力あるって思ってたの!?」
「こなたそ、私は今マジメな話をしているんだ……私が無理やりドラ活とかに連れて行ったのが、原因なんじゃないんですか?」
「それ無理やりじゃないよね?ヒビキが「一緒に行こーぜ」って言ったのを、僕が了承したから、一緒に行ったんだよね?」
何回もコラボしたけど だいたいが、僕でも安全なダンジョンを発見したとヒビキが嬉しそうに言うから、僕が快諾して行ったんだ
……もっとも、配信内でヒビキは下ネタ言いまくったり、僕はそれがどんな意味かも知らずに連呼しちゃったりしたんだけど
当然、出待ちしていたマネージャーさんに怒られて、ヒビキ共々帰ってから反省しつつも大笑いしちゃうのがいつもの流れだ
「それでも、私がもっと自重していたら、こなたその収益化は通ったんじゃないかと、そう思うんですよ」
だからさ、僕は後悔なんてしていないんだよね
そんな辛そうな顔で言われたって、僕はヒビキのせいだなんて、欠片も思ってないんだよ
「ねぇヒビキ、収益化ってそんなに大事なの?」
「は?」
「僕はさ、怒ってくれるヒビキには悪いんだけど、収益化通ってなくても、ちっとも落ち込んでないんだよね」
「ちょっと待ってくださいよ!こなたそだって、収益化が通ったら美味しい物を食べに行こうって、言ってたじゃないですか!」
「それは通った時の話だよね…………だいたいさー、そう言うヒビキも収益化が通らなかった事に、後悔なんてしてないでしょ」
「私はいいんですよ!私は収益化なんかお構い無しでやってたんですから……でも、こなたそを巻き込んだのは…………」
ぐずるヒビキに、バカだなーと思いながら、微笑んでやる
「僕もおんなじだよ…………憧れだった先輩冒険者さんを生で見れて、僕を応援してくれる優しいリスナーさん達にも出会えて……そして、ヒビキと一緒にバカやって、毎日が楽しくて仕方ないんだ」
「……こなたそ」
●こなたん
●一生推せる
●こちらこそ、いつも配信楽しみにしてます
「こんなに恵まれてるのに、収益化まで通ったらバチが当たっちゃうよ」
そう言ってやったら、ヒビキは顔をブンブン振って否定してくれた
「当たらねー、こなたそにバチなんか、当たらせねーよ」
ありがと
「だいたいさー、ヒビキは自重して楽しいの?僕は嫌だよ、やるんならヒビキだけでやってよね、僕はやらないから!」
「はあぁぁぁぁぁ!私はこなたその為に自重するって言ってるのに、それは酷い裏切りじゃないんですかー!」
「知りませーん、ヒビキが勝手に勘違いしてるのに、僕を巻き込まないでくださーい!」
「それなら私だって自重しませんよ!」
「おう、すんなすんな、ヒビキに自重なんて似合わないんだからさ」
左右に嬉しそうに振られる尻尾
それを見てホッとしながら、改めてリスナーさんに笑顔を向ける
「そんな訳で、僕とヒビキは収益化に落ちちゃったけど、これからも応援よろしくね」
「もういっそ、収益化無しで億万長者を目指しますか、伝説になれますよ!」
「アハハハハ、やだなーそんな伝説、どんだけ新発見しなきゃいけないんだよー」
●見届けます!
●てぇてぇ限界突破
●二人とも大好きだー!
●胸いっぱいで前が見えねー
●二人なら出来る、応援する!
またてぇてぇって言われているけど、もう悪い気はしない
だって、この前先輩に教えてもらったんだ、てぇてぇは女の子同士の恋愛だけに使われている言葉じゃないって
愛しくなるような尊い関係、仲良しの二人に使われる言葉だって
僕とヒビキの間に恋愛的な愛は無いけど、お互いを信頼して助け合うって意味の愛なら、確かに存在する
それを何て言うかは知らないけれど、僕はヒビキの為なら犠牲も努力も厭わない
友愛?親愛?信愛?知らないし、どうでもいい…………この気持ちに名前なんかいらない
僕は僕らしく、ヒビキはヒビキらしく、その日が来るまで、絶対に隣に居てあげるだけ
だからさ、ヒビキはそのまま突っ走ってよ、立ち止まるなんて許さないんだからね!
ドラ活みたいな配信……どんなゲームでも超絶技巧でクリアする人がいたら、めっちゃ人気でると思う




