四十六話 地獄への道は
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────人間の残酷さというものをよく知らなかった当時の私は、突然家族が増えたことを不思議がりはすれど、拒絶することはしなかった。
だから、なぜ少年が大人たちから遠巻きにされるのかも、よくわかっていなかった。
大人がそうやって嫌悪を向けていれば、いずれその子どもたちも同じような視線を少年に向けるようになる。たとえ、嫌悪の理由を知らずとも、だ。
村の子供達はやがて、少年に石を投げるようになった。大人はそれを止めることもしない。
それでも少年は笑っていた。
傷口から真っ赤な血を流しながら、いつも通りの苦笑い。
私には、それがたまらなく嫌だった。
少年が十歳くらいにまで育つと、村の離れに彼の家が与えられた。
家と言っても、雨漏り隙間風が基本装備のボロである。
少年は文句も言わずそこに移り住み、一人で生活するようになった。
村の人間は、その家の前に龍神への捧げ物を置いて行く。
けれど、決して少年と口をきくことはない。子供達の対応も以前の通り。
ついに、少年へ普通に接する人間は、私と、村の外から移り住んだ信心浅い者としかいなくなる。
それをおかしいと指摘する人間は、村には存在しないようだった。
村の人間は悪人ではない。むしろ温厚で、人との諍いを嫌うような人間ばかり。
「あの子どもと親しくしてはいけないよ」
良心からそう忠告してくる村人に、私は曖昧に答えることしかできなかった。




