第14話 鋭い百舌鳥落とし
厳が目を覚まし、真琴達とリングに急ぐと試合は既に始まっていた。攻めるダミアンに避けながら後ろへ下がり、早くも肩で息をしてゼイゼイ言いながら構えている亮輔。止めようと厳がタオルを投げようとするも、亮輔の旧友達に力ずくで止められる。
「何してんだ?オメーら!正気か?あいつ死ぬぞ!」
と叫ぶ厳にスキッド・ロウのヤンキー達が口を揃えて
「死なねーよ!」
と言い放つ。真琴が思わず
「沢渡くーん!もう止めてー!あたしはどうなってもい・・・
と叫んでる間に
「うるせーよ!女はすっこんでろ!」
と怒鳴り散らし、ダニー達が
「オメーら、そこで黙って観てろ。そんなんだからあのスカイラークの馬鹿親子に舐められんだよ!」
「1分くらいで終わるよ。」
「あいつのあの目を見た瞬間から勝ちは確定してんだ!」
「あいつはピストル持った俺達を身体1つでねじ伏せて来たんだ!車に轢かれたから何だって?あいつはそーいう環境で育って来たんだよ!」
開始30秒で亮輔は青コーナーを背負うと、ダミアンの顔を瞳が真っ白に透けた亮輔がニヤリと笑った直後、対面の赤コーナーにいるブライアンを鋭い眼で睨む。
「そうだ!亮輔!その眼をしたオメーに敵はいねー!俺達スキッド・ロウの連中はお前のその眼に散々やられたんだ!全身粉々になるまでぶっ殺せ!」
とセコンドのダニーが叫ぶと、青コーナーから真っ直ぐ対角線状の赤コーナーを目指してダミアンに攻撃を始める亮輔。ダミアンの右ストレートを軽く交わした亮輔がダミアンの腹にチャランボをお見舞いし、ボディブローを連打したちまち赤コーナーまで押し込もうとする。横に避けようとするダミアンに左のローリングソバットで赤コーナーのラインに戻し、距離を取ろうと後退するダミアンの側頭部に左ハイキックからの踵落としの2段蹴りでダミアンの頭が落ちると、ダミアンの顔面目掛けて飛び膝蹴りで赤コーナーに追い詰めた亮輔はダミアンの上半身に連打を浴びせる。すると、赤コーナーがドンドンくの字に曲がって行く。レフェリーが
「マズい!」
と止めようとした瞬間、亮輔の渾身の左ストレートがダミアンの顔面を射貫き、赤コーナーがダミアン事曲がって倒された。そのダミアンが倒れた下にセコンドのブライアンも倒されている。その様子はまるで、小枝に獲物を刺し殺す百舌鳥落としのように鋭くリング外へ落ちていった。場内は騒然としながらもレフェリーは間に入り亮輔にニュートラルコーナーへ下がるよう指示するが、亮輔はそれでもダミアンに攻撃を仕掛けようとすると身体ごと止められる。亮輔がニュートラルコーナーへよろよろ下がろうとした間にレフェリーがダミアンの死亡を確認。亮輔の右腕がレフェリーに掴まれ高々と上げられる。
沢渡亮輔 世界ミドル級チャンピオン獲得!
だが、亮輔は
「マイクよこせ!」
とリングアナウンサーに叫ぶ。今、怒涛のラッシュでダミアンを完全に殺した暗殺者の亮輔に
「早くよこせっつってんだろ!」
と怒鳴られ、リングアナウンサーは亮輔にマイクを渡すと
「おい!クソ親父!テメーのクソガキは今始末した!今度はテメーの番だ!ファイナルラウンドだ!リング上がれ!それとも何か?俺にびびってんのか?」
と挑発する。ダニー達スキッド・ロウのヤンキー達がリングを取り囲み
「早く上がれよ!クソ親父!亮輔にびびってんのか?」
「全米の恥さらしが!」
「オメーも元ヘビー級のチャンピオンだったんだろーが!さっさと上がれ!」
「小便でもちびってんのか?雑魚が!」
「それでも男か?ハゲ!断ったら俺達が国帰って苛めてやってもいいがな!」
と煽り出す。彼らは亮輔の心情を誰よりも理解し、花を持たせようと煽りまくる。ブライアンは後ずさりし
「次会った時がお前の最後だ!」
とダミアンの死体を放置し逃げようとするも、そこには八潮署の警察官と近隣を管轄している機動隊員達が待ち構えており
「おい!俺達は蟻んこなんだろ?踏んづけて行かねーのか?」
とブライアンを包囲すると、ブライアンが懐に隠し持っていた拳銃を青コーナーの向こう側で観ていた真琴と厳に向かって
《バン!》
と放った。場内は
「きゃあ!」
と一斉に悲鳴を上げると、この弾丸を亮輔が左腕を伸ばし、弾丸は亮輔の左肩を貫通し、制止した。亮輔は
「てんめえ!どこまで腐ってやがる!ぜってーぶっ殺す!」
と言って仁王立ちしながら睨む。真琴は
(沢渡君。あたしの盾になって・・・)
と涙を流す。この時真琴は亮輔に身を挺して守られ、もう完全に男だった自分を捨て去っていた。
この瞬間、ブライアンの逮捕に踏み切ろうとした八潮署員や機動隊員達だったが、その前に亮輔が全員に
「邪魔すんじゃねー!こいつは俺の仇だ!どけ!テメーら!」
と物凄い形相でブライアンが持っている拳銃を左ハイキックで遠くへ蹴飛ばした後マウントを取り、ブライアンを殴り殺しにかかる。青コーナー付近で観ていたスキッド・ロウのヤンキー達が
「あーあ。あいつ終わったわ。」
「相手が悪すぎる。」
「キリストでも止めらんねーぞ。」
「あの野郎、肉片も骨片も残らねーぞ。」
と諦めた様子で眺めていた。ダニーが
「あのよお?お前ら亮輔を舐めすぎてねーか?あいつが車に轢かれるなんてこっちは飽きる程見てきたんだよ。当時病院行く金なんてねーから自力で何とかしてたよ。たかがそれくらいでオメーら、アホか?あいつの目標がそんなチンケなもんで壊されるかっての!」
と場内に怒鳴り散らすと
「あいつ車に轢かれた身体で戦ってたのか?」
「化けモンにも程がある!」
「こいつ死神だ!」
「いや!悪魔だ!」
「殺人鬼だ!」
「復讐鬼だ!」
と現状を知りざわつく場内を尻目に亮輔はブライアンにマウントを取りなぶり殺そうと顔面や頭部に強烈な連打を浴びせ続ける。
「フシュッ!フッ!シッ!シュッ!シッ!フッ!シュッ!」
と亮輔の鼻息がドンドン荒くなる。八潮署員全員と機動隊員50名が力ずくで止めに入るが全く動かない。全員吹っ飛ばされる。この試合は年末特番で全国に流れているが、お茶の間の視聴者はこの恐怖のシーンを観て皆紅白等にチャンネルを代えていった。更に次に試合をする予定の名だたる格闘家達がこの異変に気付き、セコンドをする予定の者達と総掛かりで止めようとするも全く通じない。試合前に怪我をする格闘家も増えていき、松平や織田が場内に
「全員逃げろ!我々警察が何とかする!全員今すぐ逃げろ!」
とマイクを使って指示し、真琴達八潮署員や機動隊員は避難誘導に行くよう指示される。翼達が怯えながら
「・・・こいつ、怖い。」
「み!皆早く逃げてー!」
「皆殺しにされるわー!」
と悲痛の声をあげる。その頃、ブライアンは無残な姿で絶命していたが、亮輔はパンチを止めない。
数分後にSATが到着した。亮輔及びブライアンを制圧しようと発砲すると、余計に亮輔のエンジンがかかり、ブライアンを殴り続けた。その内の1人、SAT 隊長の鬼塚が
「手を上げろ!容赦なく撃つ・・・!
と言っている間に亮輔がライフル銃の銃口を握りブライアンの首に強引に突き付け
「ほら!撃てよ!」
と怒鳴り散らすとSAT すら固まり動きが止まってしまった・・・




