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SQUARE  作者: 大井 平和
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第10話 女の温もり

 一方その頃。真琴は美智を連れて自宅に帰っていた。


「今日のご飯何食べたい?」


と美智に聞く真琴は


「ハンバーグと海老フライ!」


と明るく返答する。


「よーし。今日はお姉ちゃん腕振るうわよー。」


と美智のために夕ご飯を作り、2人で食べながら楽しく話していた。


「お兄ちゃんとはいつも何食べてるの?」


と真琴が尋ねると、美智は


「何でも作ってくれるよ。でも兄ちゃんいっつもご飯食べないから、あたしの分だけ作ってくれて1人で食べてるの。」


亮輔は仕事以外でも減量があり、帰りが遅いか、家にいても干し椎茸や林檎たった1つ、サラダや豆腐、スープ、ゼリー等まともに食事を食べられない状況だったが、美智の為にご飯を1人分だけ作り、食事の時は帰ってきて学校の事や友達の事を聞いているという。


 いつも仕事やトレーニングでくたくたになって帰ってくる亮輔だったが、家では明るく振る舞っており、弱音など一切吐かないのを美智は心配していた。まだ21歳とはいえ、美智を守る立場にあるからだ。そんな美智が


「お姉ちゃん。側に行ってもいい?」


と真琴に甘えると


「おいで。」


と美智を豊満な胸に美智の顔を押しつけ抱き締める。美智は思わず


「お姉ちゃん、いい匂い・・・」


と言ってしばらく真琴の胸の中で抱きついた。真琴は


「一緒にお風呂に入って寝よう。」


と優しく語りかけ、女同士で風呂に入る。真琴が長く伸びた髪をシャンプーで洗っていると、美智は


「どうしたらお姉ちゃんみたいに綺麗になれるの?」


と問いかける。真琴は


「大好きな男の子見つけると綺麗になりたいって思えるのよ。美っちゃんがもう少し大きくなったら色々教えてあげるね。」


と言って風呂から上がると、美智の髪を綺麗に溶かしてあげた。その後、真琴のベットで2人で眠りに付いた。美智は


「お姉ちゃんの匂い、ママみたい。優しい女の温もりがする。」


と言いながら真琴の手を握り2人で眠った。


 そして1週間後、亮輔が退院し、勤務に復帰する。美智の面倒を見ていた真琴に礼を述べたが、強行犯係の一同の話を聞いて亮輔はぶち切れる。


「美智と一緒に寝ただと?ふざけんな!テメー!美智は年頃の女の子だぞ!」


亮輔は真琴が元男だった事から腹を立て、真琴の胸ぐらを掴むと


「あんたこそ真琴の胸を軽々しく触るな!」 


と飛鳥に言い返されるも


「だったらオメーら!自分の嫁さんや娘と姉妹がこいつと寝ても平気だって言うのか?もし美智の身体を触りまくってたとしたら俺が許さねーぞ!」


と怒りが収まらなかった。亮輔にとって真琴と美智が同じベッドで寝ることは、知らない大人の男と小さい少女が同じ布団で一夜を共にする事と同じであった。理屈上はそうなのだが、他の署員達は


「流石に小学生の女の子には手出さねーだろ?」

「お前考えすぎなんだよ。」

「いい加減真琴を女だって認めろ。」

「あんたがくたばってるから真琴が面倒みてくれてるんじゃない!」

「美智ちゃんを1人ぼっちにしたお前が反省しろ。」

「これからも同じ事が続くなら美智ちゃんは施設行きだぞ!」


と罵声を浴びせられる。亮輔は


「そうなったら柴田のオッサンが面倒見てくれることになってんだ!これ以上余計な事すんな!」


と再びキレる亮輔。真琴は


「・・・出過ぎたことしてごめんね。美智ちゃんは仕事終わったら帰すから許して。」


と謝る。


 勤務が終わり、美智を学童へ迎えに行こうと足早に去る亮輔。美智と1週間振りに再会する。だが美智は


「・・・今日はお姉ちゃんじゃないの?」


と残念そうな顔をする。亮輔は


「兄ちゃん治ったから一緒に家へ帰ろう。」


と話すが美智は


「お姉ちゃんは?」


と聞かない。亮輔は


「もう来ないよ。それより今日は何食いてーんだ?兄ちゃん作ってやるからよ。」


と尋ねるが


「お姉ちゃんのビーフシチューが食べたい。」


と寂しそうな表情で話すと


「じゃあ兄ちゃんが作ってやるよ。それでいいだろ?」


と美智に話すと、どこか残念そうな表情で無言で首を縦に振った。


 約1週間振りに帰宅する2人だったが、亮輔がビーフシチューを作っている間に美智が尋ねる。


「ねえ、何で兄ちゃんは真琴姉ちゃんが嫌いなの?」


亮輔は真琴の正体が言えず


「あいつは俺達とは違う。それだけだ。」


だが美智は


「お姉ちゃんいい人だよ。美人で優しくて、いい匂いで柔らかい胸でママみたいで・・・」


と話していると


「もう余計な事喋るな。俺はお前を守らなきゃ行けねー義務があるんだ。あいつなんかに任せておけねー。お前は俺のたった1人の家族なんだからな。」


亮輔がそう言うと、2人はビーフシチューを何も話さず黙々と食べた。


 その晩亮輔はベランダに行き星空を見上げながら


(美智にとっちゃあいつは完全に女として認識されている。きっと他の奴らもそうなんだろーが、それでもあいつは美智と同じ布団で寝てたんだ。もし美智があと5歳くらい歳取ってたら間違いを犯す可能性だってあったんだ。だからまだ俺は完全に認められねー。)


と思いながら部屋に戻ると、両親の位牌が立っている仏壇に手を合わせる。


(なあ父ちゃん、母ちゃん。俺はどーすりゃいいんだ?美智は何が何でも守ってみせる。けど、あの女を100%信じ切れねーよ。何せ元男だったんだからな。俺はどうしたらいいと思う?・・・答えられる訳ねーか。つまらねー事聞いて悪かったな。)


と部屋に戻り、美智の眠る横に布団を敷き、眠ろうとするも寝付けない。退院したばかりだということもあるのだが、どうしても真琴と美智が一緒に寝たという事実が頭から離れなかった。その内朝を迎え、美智を学校まで送ると、美智の担任教師に


「今までご面倒おかけしました。」


と謝罪する。担任教師は


「職業柄仕方ありませんが・・・沢渡さんが入院されてからあの娘元気が無かったんですよ。お忙しいのはしょうがありませんが、あまり無理をなさらないで下さいね。美智ちゃん悲しみますから。それでもあの早乙女さん?でよろしかったでしょうか?彼女が迎えに来ると元気になるんですよ。やっぱり女同士って大きいですね。」


と報告を受ける。この担任教師も真琴が元男だったことは知らない。だが亮輔は


「結局俺は頼りない兄貴って事か?」


と落胆する。すると、登校中の男子児童達に


「わあ!沢渡選手だあ!サインして!」

「握手して!」

「一緒に写真撮って!」

「こないだの試合かっこよかったよ!」

「また勝ってね!」

「次は世界チャンピオンになってね!」


と男の子には人気の亮輔だったが、遠くで女子児童達が


「美っちゃん1人ぼっちにして可哀想。」

「いっつも人を殴って馬鹿みたい。」

「お巡りさんだけやってればいいじゃん。」

「何で美っちゃんを悲しませるの?」

「こないだ来てたお姉ちゃんの方がよかったのに。」


と冷たい視線を送られる。ここで男女の価値観の差が明確に出てしまい


(全員に好かれるってほんと難しいな・・・)


と痛感するのであった。



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