暗闇の中の声03
「それだけじゃ分からないでしょう!? もっと話してくれないと、どうしようもないじゃないの!」
「それだけ言えば貴方なら分かると思って」
「ある程度は分かるわよ! よく知っている方ではなく、全く面識の無いわたくしに頼むくらいだから、ルフェールの命を狙っている方は身近にいるんでしょう!? それくらいは分かるわよ! けれどね、貴方の望みが分からないの! 貴方がこれからどうしたいかが分からないのよ! 守ってもらいたいと貴方は言ったけれど、守るにもいろいろあるのよ!? 一生守り続けるの? それとも犯人が捕まるまで? 待っているだけでいいの? こちらから何かしなくても良いの? 貴方はどこまで考えて、わたくしに守ってもらいたいと言ったのよ!?」
ティーナが怒涛の勢いで申し立てると、ルフェールは右手を顎の下に持っていった。
「そうだね……。考えていなかった。ただ、ラルクの孫に守ってもらえと言われたからそうしただけで……」
「何よ! 貴方の意思じゃないのね!? だから会話に実りがないのね!?」
バンッ
ティーナは立ち上がって机を叩いた。
「もう少し考えなさい! これは貴方のことなのよルフェール! 貴方が死ぬか生きるかの話なんでしょう!? それなのに当の本人がどうでも良いと言わんばかりの態度なんてありえないわ! いや! わたくし、貴方みたいな無気力な人、嫌い! 嫌いよ!」
眉を吊り上げて怒るティーナ。ルフェールはぱちくりと目を瞬かせた。
「明日まで待ってあげるわ! 明日また同じ時間に会いましょう。それまでにしっかり考えておくのね!」
強く言い放ち、くるりと方向転換してランプの光を頼りに扉まで歩く。そしてティーナはどんどんと乱暴に扉を叩いた。
「開けてちょうだい! 帰るわ!」
扉を叩き続けていると、控えめに扉が開いた。扉の隙間から目を大きくして驚いているレリアンと、その上から眉を寄せているジョックスが覗いた。
「あの牢へ帰るわよジョックス!」
「はぁ……なんでそんなに怒ってんですか姫様?」
怒号を響かせるティーナにジョックスは首をひねる。
「あの方が怒らせたからよ!」
振り返ったティーナの視線を追い、真っ暗な部屋の中に一つだけ灯ったランプの橙色の光に照らし出されている人物を見て息を飲んだ。
白い男だった。橙色の光でも分かる。その空間を、世界を漂白したかのように白い、この世のものとは思えない容姿の男。あの、舞踏会の会場で出会った男と瓜二つだった。
「いい!? 明日までよ! しっかり考えるのよ!」
ティーナはそんなこの世のものではないような男に、子どもに言うような態度で念を押した。白い男、ルフェールは目を大きくしてじっとティーナを見たまま何も答えない。
「行くわよジョックス!」
ティーナが両手を上げる。ジョックスは何もかも訳が分からなかったが、とりあえず主の要求に答え、ティーナを腕に抱えた。ティーナはジョックスの腕の中でぷんぷん怒った顔をしている。
ジョックスが視線を動かすと、同じように不思議そうな顔をしたレリアンと目が合った。
「えっと……とりあえず、牢に戻ります?」
「……そうしてくれ」




