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無属性魔法の可能性



別館から出て北東。

公爵邸の外壁の影が差し当たりそうなくらい隅の場所。木が視界を遮る程度に植生している。


広すぎる外庭を散策する中でその場所に入ってみると、奥にやや開けたスペースを見つけた。

風で葉が揺れる音だけが聞こえる。適度な木漏れ日が心地いい。


ここなら人が来る事もなく、自由に動き回れれそうだ。

俺はその場所を、中庭と騎士団に続く第三の訓練場に設定する事にした。



妹のクリスから短時間であれば離れる事が出来るようになった俺は、ついに本格的な鍛錬を開始する事にした。


今までも早朝は欠かさず訓練していたし、最近は騎士団の練習場で騎士達やフリードと打ち合っている。

普段も隠しながら日常的に魔法を使って、寝る前には魔力を一気に拡散させて気絶して、と涙ぐましい努力を続けて来た。

だが、それ以上の特訓は出来なかった。


それだけやれば十分と思われるかもしれないし、俺も前世の自分からすると過剰なほど鍛錬に時間を割いていると思う。



しかし…理由も分からないのに、もっと強くならなければいけない気がする。


毎日の厳しい鍛錬ですらもぬるま湯だと、心の何処かで戒められているような。


思い込みなのか、それとも…。


いずれにせよ答えの出ない今は、心の衝動の赴くままに自分を鍛えてみようと思う。




=======================


名前 アルフレート・ブロンベルク

種族 人族

性別 男

職業 無職

年齢:3歳 

LV: 1


HP: 81 (819)

MP: 246(2465)

筋力:23 (231)

魔力:37 (373)

耐久:20 (206)

敏捷:26 (267)

器用:32 (325)

運:100


【固有スキル】

《負の天鎖》


【ユニークスキル】

《解析》《生活魔法+》《成長性拡大》《言語理解》

《自己回復》


【スキル】

直感Lv2 不屈Lv5 隠蔽Lv2 思考加速Lv3 

無属性魔法Lv3 身体強化Lv4 感覚強化Lv5

魔力感知Lv5 魔力操作Lv5 魔力制御Lv3 

気配察知Lv4 気配遮断Lv3 体術Lv2 棒術Lv2

剣術Lv3 投擲Lv1 見切りLv1 回転Lv2

受け身Lv4 跳躍Lv4 苦痛耐性Lv6 精神耐性Lv4 暗記Lv2 料理Lv1


【称号】

転生者 *** ブロンベルク公爵家 


=======================


はっきり言って、ステータス上では既にマグナスと同等まで強くなっている。

もちろん技術や経験の差があるので、搦め手を使わない限り戦えば負けるだろうが。


毎日魔力切れを起こす事でMPが膨大に増えたし、それ以外の能力値も日々の鍛錬と『鎖』の相乗効果で今も上がり続けている。


スキルの数も増えた。普通に生活しているうちに勝手に増えていた印象だが。


どうやら通常スキルの中でも、熟練度レベルの上がりやすいものとそうでないのがあるようだ。


例えば『隠蔽』や『無属性魔法』なんかは、毎日発動し続けている。

食事の間も、クリスの相手をしている間も常に使っている。


『鎖』で周囲を探知するのに。

もしくは光や風等の魔法を隠蔽し続けた上で発動するのに使っている。

しかしその2つは最近では然程熟練度が上がらず。


同じ様に魔法を精密に操る際に鍛えて来た『魔力操作』なんかはレベル5まで向上した。

あと、短時間しか訓練していない『剣術』でもそれなりに上がった。


この違いが何なのか、条件でもあるのだろうか?


尤もスキルレベルが上がりにくいだけで、性能は上がっている気がするから気にしなくてもいいんだけどね。



まずはこの前購入した短剣を手に持ち、素振りを開始する。


普段降っている木剣と比べると5倍は重い。気を抜けばすぐに体が揺れてしまいそう。


リチャードに教わった基本の型を、ただ愚直に、丁寧に繰り返す。


敵を切るときにどういう動きをするべきか想定しながら、その為の基本となる動きを身につけるという意識で振り続ける。


この身体はスキルのお陰か本当に優秀で、素振りだけでもどんどん剣のキレが良くなってくるようだ。


『剣術』スキルは恐らく補助的なものだ。

こういう素の技術を鍛えていかなければスキルの性能を発揮出来ないと、訓練の中で体感している。


半刻ほどで終わらせて、小休止。

今日は時間も限られているので、次のメニューに移行する。


付近に転がった小石を拾い集める。

一本の木に剣先で傷を付けて的を定めた。


そこに向かって石を投げる。当たったら少しずつ距離を離していく、


『投擲』の訓練だ。


当たりにくい距離で何度か投げ続けて徐々に当たる率が高くなっていった。

そのまま趣向を変え、手に石を掴んだまま、思い切り腕を捻って投げつける。


「『回転』っ!!」


ズガガガッ


手放した石はスクリューを巻いてスピードを増した。

コントロールが悪く隣の木に当たったのだが、途中まで貫通してしまったようで穴が空いていた。


このスキルは、半年くらい前まで屋敷でよく転がりながら移動しているとふとした時に取得された。


イマイチ用途が分からないスキルだが、こうして体の一部にスキル効果を加える事も出来るようだ。

色々と便利そう。


血マメが出来たあたりで練習を終わらせて、石を片付ける。


最後に魔法。


《生活魔法+》は普段から活用している。

『鎖』を操るのに飽きたら、極小の火や光、水等を手足のように操り、土や氷でフィギュアを作ったりして遊んでいる。


書斎にあった魔術書を読んで属性魔法を自分なりに再現するのも簡単だ。繊細なイメージが求められる為、魔力を食う割には威力が出せないが。


真似するよりも、自分の好きな形態や指向性を持たせたほうが上手く発動しやすい。

前世にアニメで見た魔法とか。

今はそういったものを中心にオリジナル魔法を開発している。

また思いついたら都度訓練に加えよう。


今日から練習するのは、『無属性魔法』だ。


『鎖』と親和性の高い魔法。色々試すうちに、この無属性の魔力は鎖の性能を強化する作用がある事が分かった。

鎖の操作性や移動速度を向上、感知範囲を拡大。

物を持ち上げるときにさらに軽量化させる事も出来る。


現状俺の最大の武器が『鎖』である以上、それを活かす為には無属性魔法を中心に鍛えるべきだと考えた。


まず無属性魔力を紐状に操作していく。

八本を同時に操作し、周囲に伸ばしていく。


毎日頑張って使っていたので、自分から3mくらい離れた場所まで魔力が届いた。


魔力を遠ざけるほど精神的にキツい。

無理をすれば千切れて、その魔力は操作が出来ずに霧散してしまうのだ。


魔力を多く込めればそれだけ安定性が増すが、こうして少ない魔力で訓練したほうが伸びしろが良いと感じる。


その魔力で木の枝を掴む。枝は簡単に宙へ浮き、クルクルと俺の近くを動き回る。

熟練度が上がった事により、『鎖』を介さずとも軽い物体であればこの様に自由に操作出来るようになった。


魔力を込めれば岩だってズラすくらいは出来る。

1年前まではぬいぐるみですら満足に動かせなかった事を思えば、成長したものだ。


そして。

これから試すのは、最近気づいた『無属性魔法』の新たな「可能性」だ。


新しく放出した魔力を1箇所に纏め、練り固める。凝縮するように意識しながら、板状に伸ばしていく。


しばらく経ち、空中に浮く濃密な魔力を宿した1尺程の正方形の板が完成した。

厚みは1cm程だが、目には見えない。『魔力感知』がなければ感じ取れないだろう。


俺は斜めの角度から、その透明の板に向かって小石を強めに投げた。

小石はその見えない壁に当たった瞬間、音も無く跳ね返る。

板のほうはびくともしない。


次に短剣を抜き、板に対して横切りに振る。

するとそれなりの抵抗はあったものの板は切れてしまい、行き場のなくなった魔力が霧散した。


再度透明の板を作り出し、今度は正面から剣で突く。

当たった瞬間に硬い壁に当たったかのように剣は弾かれたが、それと同時に板が霧散してしまった。


「うん、やはり障壁としては使えそうだな」


通常の魔法にも「ファイヤウォール」や「アイスシールド」等防御系の呪文が備わっているが、無属性魔法でも同じ事が出来ると判明した。


まだ防御性能の割に魔力の消耗が激しいが、訓練していけば効率化が果たせるだろう。


今までは念動力の一種としてしか捉えていなかった無属性魔法も、使い方によって異なる魔法を生み出す事ができるようだ。


しかし、俺が着眼しているところはその先にある。

この魔法の特徴は、術者の操作が無い限り「空間に固定」されている事だ。


術者と魔力が繋がっているだけでその形態を保つ事が出来る。

魔力を自分から切り離したとしても、数秒間はその状態を維持できる。


他の属性魔法だとこうはいかない。

防壁魔法を例にとると、火や風など現象を伴う魔法は常に魔力を送り続ける必要がある。

土の壁はだけは異なるが生成したらただの物体になるので、魔力を固定するわけではない。


つまり、この固定というのは無属性魔法の特権ともいえる。

攻撃力はないが、自分の周囲に設置する事で、不可視の防御や罠を生み出す事が出きるのだ。


俺はこの魔法の板を、「透明の板」→「クリアボード」→略して「ボード」と名付けた。


そして、この「ボード」で試したかった事はもう一つある。


俺の頭くらいの高さに「ボード」を作る。今度は地面に対して水平に、だ。

しっかり空中に固定された事を確認すると、地面から跳び上がり、その「ボード」に乗ると同時に蹴り上げた。


するとその反動でさらに上へと跳躍する。

直ぐ様、俺は魔力を練り上げて少し先の地点に即興の「ボード」をつくる。


同じ様に乗って蹴り上げると、その衝撃で「ボード」が消えると同時にわずかに体が浮かんだ。


成果を確認出来たので、そのまま重力に任せて地面に着地する。


実験自体は成功した。

空中で瞬時に作った弱い「ボード」でも僅かに浮いたのだ!


まるで跳ねるように空中を移動する事が出来た。これを使えば、空を歩ける。

その利便性と、空を歩くというロマンに感動してしまった。


しかもこれは俺の『跳躍』スキルとの相性がバッチリだ。

「ボード」と『跳躍』があれば3次元にいくらでも動き回る事が出来る。そこに『鎖』での移動を加えればもはや立体駆動である。


*


しばらくの間アルフは「ボード」での空中移動を夢中で練習し、魔力を使い果たして倒れた頃には日が暮れていた。


屋敷へ戻るとクリスに怒られながらも、すぐに彼の頭の中は明日の訓練メニューの事で埋められたのだった。




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