表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/57

妹へのプレゼント


ほどなくして、クリスの誕生日がやってきた。


「誕生日おめでう、クリス!」


「「おめでとー!」」


「あぅー!!たんじょーび〜!」


家族と使用人のみの小ぢんまりとしたパーティーだが、俺のときよりも心なしか豪華で、ケーキまで用意してあるそうだ。


クリスもよく分かっていないなりに、目の前のご馳走や室内のキラキラした飾り付けにご満悦で、大いにはしゃいでいる。


「クリスが生まれてもう2年経ったのだなあ。いつの間にかずいぶん成長して…。

…アルフのときも思ったが、最近の子供は言葉を覚えるのが早いのか…?」


「ふふふ、クリスちゃんが可愛く育ってくれて嬉しいわ。今日はいっぱい食べてちょうだいね〜」


「まま、あえ!あれたべゆ!」


クリスはリューネに抱えられたまま食べたいものを指示し、美味しそうなものを手当たり次第に頬張っていく。


俺はフリードや彼のメイドのグレースと一緒に近況を会話しながら食事を楽しむ。

訓練の調子だの、家庭教師への愚痴だの。


グレースはリューネの事が少し苦手らしい。

あの天然っぷりが腹立たしいと言っていた。ノーコメント。


第一夫人のマリアナを見ると、マグナスの横でクリスについて話を聞いている。

控えめな相槌ではあるものの、その顔は心なしか柔らかい。

俺の時とは大違いだ。何か悪いことしたかな?


みんなで団欒を楽しみ、いよいよ最後の大詰め。

フルーツ盛りだくさんのケーキを頂いた後は、各自クリスに誕生日プレゼントを渡す段取りになった。


マグナスからはクレヨンとスケッチ用の羊皮紙、エリザからはぬいぐるみ。マリアナから絵本、リューネから手袋を受け取っていた。

手袋は、氷魔法を使う彼女への配慮だろう。暖かそうだ。


ちなみに俺のときは伝記についての本や積み木等のおもちゃをもらった。

たまにクリスと使って遊んでいる。


そして、俺の順番が来た。フリードは用意していないので必然的に俺が最後だ。


「改めて誕生日おめでとう、クリス。これが俺からのプレゼントだよ」


「うはぁぁ、にーちゃ!あいがとー!!」


キャーッとクリスは今までで一番のはしゃぎ具合で喜んでくれた。

すぐに中身を見たそうにしていたので、リューネにそれを手渡し、包装を広げて中身を取り出してもらう。


「あぅ…。きえー」


中から出てきたのは、先週に街の露天で買ったネックレスだ。


俺はリューネから一度ネックレスを返してもらい、直接クリスの首元にかけてあげた。


宝石の台座がくすんでいた為にやや汚い印象を与えていたが、屋敷で見つけた研磨職人に磨いてもらった。

今は、黒銀色に光っていて、シンプルなそれが青紫色の宝石を映えさせている。


=======================

【雪姫のペンダント】


※氷の魔晶石を加工し、魔法陣を刻んだダマスカス鋼の台座に取り付けた魔道具。

※効果:『氷属性耐性』 『氷縛』

※『氷縛』:登録された魔力保持者に大して害意を持つ物が魔道具の1m以内に入ると、相手を凍結させ動きを封じる。発動を切る事も可能。

=======================


そう、このネックレス、というより本体のペンダントは、宝石ではなく魔晶石が備え付けられたもの。

氷属性に特化した魔道具だったのである。


あのとき露天で『解析』して見つけ、これほどクリスにぴったりのものはないと思った。

名前を見て決めた部分もあったが。


他にも魔道具を見つけてはいたが、少なくとも彼女に合うものがなくて困っていたときに運良く発見できたのだ。


これは自力での取得が難しいという『氷属性耐性』の恩恵を、魔力登録者が装備しているだけで受ける事が出来る。


だが、一番嬉しいのは、条件指定として付加された『氷縛』という能力だ。

これは魔晶石内に魔力がある限り、害意を自動的に感知してクリスに近づいた敵を拘束する事が出来る。


害意を自動感知という部分が高性能すぎる。

公爵家の令嬢として誘拐等が危ぶまれる中、これほどの自衛道具は存在しないだろう。


ちなみに魔晶石とは、属性魔力が特殊な環境で魔石を媒体に結晶化した、とても希少なものらしい。

これを使った魔道具は使用者の魔力を吸収し、ほぼ永久的に使用する事が出来る。


魔石を用いる通常の魔道具は、そもそも魔力を込められないので、魔石内の魔力をすべて消耗すれば使えなくなってしまう。

杖等の媒体にする以外には、使い捨ての魔道具を作る他ないのだ。


そんな貴重な魔晶石を使った魔道具。


もしあの露天の女性が知っていれば、例え10倍の金貨20枚でも売らなかったのではないかと予想している。

効果もさることながら、半永久的に使える魔道具とはそれ程に需要が高い。



俺は家族にこの魔道具の効果を説明する。


皆一様に驚愕していた。2歳の娘の誕生日プレゼントには、普通に買えば高価すぎる代物だ。

男爵程度の貴族であれば、家宝として扱われてもおかしくないらしい。


露天での下りを説明した際になんでそんな効果を知っていたのかと聞かれたので、「本で読んだ」と断言した。


マグナス達は俺のあまりの堂々さ振りに閉口し、下手に詮索しないほうが利口だと思ったのか、形だけは納得してくれたようだ。

その後はこの自衛効果の高い、しかもクリス向けの属性のネックレスにあらゆる賛美を述べ、喜んでいた。


クリスには一応使い方を説明したが、さすがに理解出来ないだろう。

今もずっと首に提げたそれのペンダントを見つめて、嬉しそうにニコニコと笑っている。


一応リューネも聞いているから大丈夫だろうが、もう少し成長したら改めて説明しよう。



街デビューを果たした俺は、1ヶ月後、再度街へ出る事にした。


騎士団練習場での訓練が休みの日。午前中にクリスをたっぷり構って、なんとか妹の許しをもらった。


3歳児なので流石に誰かの付き添いが必要なのだが、リューネには妹の面倒を見てもらわなくてはいけない。

するとなんと副団長自ら護衛を買ってくれた。暇なのかな?


「たまにフリードの坊っちゃんにも付き合わされてるんで、慣れてるんでさぁ」と気前のいいおっさんだった。


父マグナスも一応黙認してくれたものの、仮に街で俺が噂になったりすれば恐らく困った事態になるのだと思う。


なので、街に出る時は商家の坊主という設定をそのままに、訳あって一時的に公爵家に預かってもらっている事にしている。

名前は「アルフ」でいいだろう。


「やあ、門番さん。また来ましたよ」


「おう、坊主。副団長もようこそ。今日はお使いか?よく歩いて来たもんだぜ」


前回に馬車に乗って凝りたので、リチャードさんには悪いが屋敷から街での区間を自分の足で移動した。


5km以上離れているので確かに遠いが、俺達が走れば30分で着く。

もし俺が『鎖』を外したら10分とかからないだろう。


「いやあ、いい運動になりましたね。疲れてないですかい?」


「汗かいたけど、大丈夫ですよ。行きましょうか」


リチャードが斜め後ろに控えたまま二人で街を歩く。特に案内を受けずに、気の向くまま動いてみるのだ。


今日は職人街があるという区画に行ってみよう。


「ところでアルフ坊っちゃん。今日はどういう用向きなんで?」


「ううん、漠然と情報を集めたいってとこですかね。屋敷でも外の事を色々教えてもらっているんだけど、直接街の人と話してみないと分からない事も多いかと思って」


「はぁん。確かに、貴族の生活と庶民の暮らしにゃあズレがありますからねえ。実際に見るのとそうでないのでは大違いですわ。

でもアルフ坊っちゃんはまだ3歳ですよ?そういうのはもうちょっと大きくなってからでいいんでないですかい?」


「まあ、そうなんですけどね。実際のとこ、恐らくだけど僕ってずっとここに居るわけにもいかないんでしょ?」


いい機会だったので、ダメ元で彼に聞いてみる。

どうも俺は、屋敷で腫れ物のような存在らしいからな。住み続けるだけで家族の迷惑に成りかねない。


「むぅ。いやはや、そこまで確信しておられたか。

いえ、私からそれに答える事は出来ねえんですが…。可能性が高い、とだけ言っておきましょう」


「十分だよ、ありがとう。勘違いだったから困るしね。まあそんなわけで僕は今のうちからいつ独り立ちしてもいいように準備しておきたいんだ」


「なるほどなぁ。まだ甘えたい盛りでしょうに、大した坊っちゃんだ。そういう事なら私も微力ながら手伝いますんで、なんでも言って下せえ」


「どうも。あ、出来ればリチャードさんはなるべく目立たないようにね。変装しているとはいえ、強そうなオーラがバリバリ出てますよ」


彼はいつもの鎧姿ではなく、やや品のいい布服に丈夫そうなマントを羽織っている。

武装は最低限だが、彼の強さからすれば護衛には十分だろう。


「おっと!こりゃいけねえ。もうちょっと気配を落としておきますわ」


そう言ってリチャードさんは息を荒く吐き、身にまとう強者のオーラのようなものを薄めた。たぶん『気配遮断』かな?

俺も同じくスキルを使い、注目されない程度に気配を弱める。


「ほー…、坊っちゃんは既に『気配遮断』を使えるんですかい。しかもすげえ精度だ、まるで路傍の石ころのような気配ですぜ!ハッハッハ」


彼はまるで貶しているような褒め方をして来た。

訓練を見られているので、リチャードさんには俺の実力をある程度知られている。

子供ながらに動きが凄まじいらしく、彼の俺に対する評価はこの上なく高い。


そうして目立たなくなった俺達は、そこら中にある工房にひっそり入っては見学をする。


「おばちゃん、これは何の薬?」


「おや、何処から入ったんだい?それはライフポーションだよ。

低級だけどね、この私がつくったもんだから効き目はバッチリよ!」


「あ、やっぱりおばちゃんがつくったんだ。ねえねえ、つくるとこ見ててもいい?」


「なんだい、こんなの見たいなんて変わった坊やだね。邪魔さえしなければ勝手にすればいいさ」


薬剤師のおばさんが薬の調合をしているところに出くわしたので、そのまま見学させてもらった。


ライフポーションはHPを回復する液体で、飲むと外傷だけでなく体力も微量に回復する。

ただしとても苦いらしく、直接傷に振りかけて使う人が多いそうだ。


材料は薬草と魔力水だけあれば作れるが、比率だけでも効果が変わってくるので素人には調整が難しいらしい。

プロの薬剤師はそこに様々なアレンジを加えて付加効果の高いポーションを作るんだと。おばさんが自慢げに教えてくれた。


=======================

〚ライフポーション(低級)〛

※HPを回復する。患部にかけると傷を修復する。

効能:HP回復(E), 体力回復(F)

=======================


『解析』でみると効能の部分に括弧でアルファベットが表示されている。この文字が若いほど効果が高いようだ。


ここのポーションは体力回復効果が高いと言っていたので、普通のポーションの体力回復は「F」よりも低いのだろう。


おばちゃんが休憩に入ったときに、他にも彼女が調合した薬を見せてもらった。

解毒剤やマジックポーション、バフ効果のあるポーションなんかもある。


安いものはなんとか庶民でも買えそうだが、効能の高い薬は金額も相当に高い。

でも度には必需品との事で、ポーションも碌に持たずに外に出て死んだ冒険者なんかの話もしてくれた。


いずれ家を出たときには必ず一通りを携帯しようと思う。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ