妹が出来ました
「ふむ…」
プニッ
「あぅー!だぁ、だー」
プニプニ。
「きゃふぅ!あーぅぅ!!」
アルフは、妹クリスティアに対し、スベスベのほっぺを突ついていた。
彼女は、アルフが何かする度にキャッキャッと喜び、手をばたつかせる。
夜泣きしたときでも、アルフは側に行き頭を撫でると、途端に泣き止むどころかニパッと笑い出す。
まるで条件反射のように、触るだけで喜ぶのだ。
正直、とてもかわいい。
妹クリスティア、改クリスは、生まれて2週間の経過観察をしてからすぐにアルフの部屋へと移された。
何故かというと、単純にアルフが頼んだからだった。
エリザ達がクリスの部屋を用意しようとしていたところに、彼が「この子、僕の部屋でいいよね?」と聞いたところ、顔を見合わせて「それもそうね」と言われたのだ。
クリスは何故か、アルフがいると泣き止む。
それが彼女達の共通の見解であった。
今の所クリスにメイドはつけられていない。
本来であれば当然必要だが、アルフと同じ部屋ならばリューネがいれば十分、となったのだ。
アルフ自体は、日頃の問題行動を除けばだが、世話の面ではまったく手がかからない。
むしろクリスをあやしてくれる。
そこにリューネが世話を割けば万事問題ない。
昔のエリザならばそんな柔軟な思考回路はしていなかった筈だが、彼女は大分アルフに毒されているといっていいだろう。
「ほ〜ら、高い高ーい」
「キャーーぃ!!あふぅぅ」
1才児のアルフが持ち上げたところでまったく高くないのだが、何故か喜ぶ。
アザトさ満面のクリスに、彼は夢中であった。
「坊ちゃま〜。私にも構って下さいよ〜ぅ」
「うるさい。坊ちゃま呼びを止めてから出直して来い」
「そんなぁ〜。でも、そ、そういうのはもう少し大きくなってからに…」
既にアルフは、赤ちゃん言葉を止めている。
舌足らずなのでそれでも愛らしい印象を持たれるが。
当初は計画敵に、少しずつ話す言葉を増やしていったが、あまりにも周りの人の順応性が高かった為に、気を遣う事をやめたのだ。
実際、彼が普通に話すと皆驚いて褒めるものの、その後は特に何事もなく接してくれたものだ。
体をくねらせて「ア、アル…。キャーー!!」と頬に手を当てるリューネに首を傾げつつ、アルフはクリスに目を向ける。
彼女は目が合っただけでニコッと笑った。
クリクリした瞳。スベスベの肌。
僅かに輝く産毛。
無条件に懐いてくれる。
うむ。
これが妹というものか…!
見当違いではあるが謎の感動を覚えながら、アルフは彼女とこれから先どう付き合って行こうか考えていた。
まず育成計画を練らねばな。
父や母を差し置いて、彼はそう考えた。
その為に必要なのは彼女の情報だろう。
という事で早速クリスを鑑定した。
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名前 クリスティア・ブロンベルク
種族 人族
性別 女
職業 無職
年齢:0歳
LV: 1
HP: 7
MP: 5
筋力:2
魔力:3
耐久:2
敏捷:3
器用:2
運:40
【ユニークスキル】
《生命感知》
【スキル】
【称号】
ブロンベルク公爵家
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おお!
えーと…とりあえず運が高いな。
今まで鑑定した人で40以上なんて無かったし。
他の能力値はどうなんだろう。未だに一般的な赤子の数値が分からん…。
ちょっとだけMPが高い、でいいか。
んで、最後にユニークスキルだな。
『※《生命感知》…周囲の生命を感知する。また、その魂の性質や状態を把握出来る。』
うおお!なんとも便利そうなスキル。
熟練度次第では絶対チートになるな、これ。
魂を見るんじゃ、隠密系の能力も型なしだよな。
俺の『隠蔽』でも…いや、あれってなんとなく存在感が薄くなる感じだから、…いけるか?
試してみよう。
『隠蔽』
「あー!キャッキャッふぅ!」
あれ、心なしか余計に喜んでる…。
なんか表情がね、嬉しくて堪らないって感じだよ、これ。
俺の存在感が薄いのがそんなに嬉しいか、妹よ。
ん?もしかして俺に懐いているのって、それが関係している?
つまり『鎖』で能力を落としている、変テコな状態の魂、見つけたった!って感じなの?
もしくは俺の魂が転生者特有で他と何か違うのか。
…まあ、いいか。ちょっと不安だけど。
あ、でも一応俺が変なのは秘密にしておいてもらおう。
「いいかクリス。何が見えたか知らんが、俺が特殊なのはシーだぞ、シー」
「あーぃ!!キャハーッ」
うむ。いい返事だ。これで大丈夫だろう。
さて、それにしてもクリスをどう育てようか。
とりあえず兄フリードよりは強くしたい。
《生命感知》を鍛えるのがメインだろうが、言葉が通じるまでは教えようがないしな。
やはり魔力や魔法の訓練くらいか。
それくらいなら同じ事を見様見真似でやらせればなんとかなりそうだ。
あとは、スキルもだが…。
「あうー?」
少しよろしくない事を思いついてしまった。
ふと一瞬後ろにいるリューネをチラ見して、再びニコニコのクリスをじっくりと見る。
アルフは思案げな顔をした。
「ふむ…」
やるべきか。やらざるべきか。
いや、試すべきだ。
倫理観は一瞬にして探究心に押し負け、彼は決断した。
かわいい妹にそ〜っと手を伸ばす。
エリザは今、別室で休んでいる。
この場にアルフの防波堤は存在しない。
彼の暴走を止められる者はいなかったのだ。
そう、アルフは、魔が差してしまった。




