第2章 序 1 神
第2章です。
1章のようにほぼ毎日投稿なんてことはできませんが、早めのペースで投稿しようと思います。
暗闇の中に蝋燭の火だけが揺れている。
その蝋燭は真っ白なテーブルクロスのかかった長机の上に置かれており、その机の周囲には8人の人影があった。
蝋燭の灯りは弱く、その人影の顔や姿はハッキリとは見えなかった。
「かくして人昇精霊セシリーとウルフギャング・コロの物語は始まったのだった。
エピソード0完結……なんてね」
「エピソード0?」
「物語が始まる前の物語ね。物語本編が売れてメディアミックスしたらオマケで配布したり限定で売るのよ?」
「意味が分からん」
「物語として出版するならサイラスくんの出番を増やして欲しいんだけど」
「竜退治はロマンよね。
あのクズ騎士が宝物庫から『罠の短剣』を盗み出したときは慌てたけど、回り回ってこんな風にドラマチックな演出になるなんてねー」
「あんなもの残しておくからよ」
「だって、テト様が背徳的で美しいっていうから……」
「あの変態巫女王子は、まったく。下手したら街1つ壊滅よ。
赤竜はそんなに強くないけど、毒がやっかいなんだから。
現れたのがあのタイミングで本当に良かったわ。そうじゃなけりゃ、私たちの誰かが始末に行かなきゃいけなかったのよね」
「久しぶりに謎のセーラー服美少女仮面の登場だったのに惜しかったね」
「……あれは黒歴史。忘れて、お願い……」
「某は行ってもかまわなかったのだがな」
「あの国ではニンジャはあまり良いイメージを持たれてないから、謎のニンジャソルジャーはマズイでしょ」
女性、少女、男性、青年……複数の声が響くが、どの声がどの人影のものなのかは分からない。
人影には耳や角などの特徴的なシルエットから獣人や魔族、エルフなどが混ざっているのは確認できた。
「それであの結婚指輪はどうするの?」
「どうするとは?」
「セシリーちゃんが隠せないように色々術式を付加しちゃったじゃない?
あのままじゃ、色々な魔法の邪魔をしちゃうのよね。それに籠手や手袋も付けられないしねぇ。
それに、セシリーちゃんがカンカンに怒ってると思うのよ。
セシリーちゃんにはこれからお願いしなきゃいけないこともあるから、これ以上は怒らせたくないのよね」
「ああ、魔法のカバンの件か。
あれは現在の最優先事項だからな。確かに、『おあそび』よりは優先すべきであろう。
あの娘は頑固だからな。拒絶されたら困るな」
「では、付加した術式は解除して、普通の結婚指輪に戻しますねー」
「……もう頼みなど聞いてくれないくらいに怒ってるのではないか?」
「それはね、あの『裏技』を使い続けても良いって許可を交換条件にして誤魔化すわよ?」
「いや、あれは元々セシリーが学んだことから開発した能力なのだから放置で構わないと決まったではないか」
「交換条件だと言っておけば、私たちが有利になるじゃない?」
「さすが、目的のためには手段を択ばないな」
「お褒めいただいて、光栄だわ」
「それからウルフギャングの称号だがよ」
「そっちはそのままで良いんじゃないかしら?
まだセシリーちゃんしか気が付いてないし、コロちゃんには『竜殺し』は似合わないものね。
それにセシリーちゃんも気が付いた時に笑ってたからOKよ」
「どうせ上級以上の鑑定の魔法持ちか、神殿の魔道具でもないとそこまで読み取れないもんね」
「確かに」
「あの2人はまず王都に行くようだな」
「サイラスくんも一緒だね」
「サイラスには『黒』を引き取らせねばな。
せっかくワシがペンドラゴンの娘の『白』と対で作ってやったのに、王家に貸与するとは何を考えてやがるのやら……」
「まだ根に持ってたんだ、それ」
「あれどう考えても大きすぎるでしょ。設計ミスよね」
「あれの持ち運びにも魔法のカバンが役に立つわね」
「そうだ、魔法のカバンを使う前提で作ったんじゃ!普及にこれほど時間がかかるとは思ってなかっただけじゃ」
「嘘だね」
「あのー、思いつきで適当に言い訳されない方が……」
「ホントだぞ?ちゃんと考えてたんじゃぞ?」
「はいはい」
「ところで、この部屋、なんでこんなに暗いんだ?」
「え?悪の幹部の密談みたいで面白いかと思って?ダメ?」
「ダメじゃないが……手元が見えなくてお茶が飲みづらい……。セバスチャンはよくこの暗闇でお茶が注げるな?」
「あとあの入口の『るるいえ』という看板は?」
「え?雰囲気出るかと思って?ダメ?」
微妙な空気が流れ、少しの間だけ誰も話さなかったが、席を立つものもいなかった。
密談はまだまだ続く……。
読んでいただきありがとうございます。




