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第1章 波乱の戦い 4 地

 今日は4日目。

 オレの2回戦の日。


 オレは朝から風呂に入り円形闘技場に向かっていた。


 結局、昨日も最低限の鍛錬のみでゆっくりと過ごしてしまった。

 母さんの食堂の手伝いをしようとしたら、母さんがさりげなく断り手伝わせてくれなかった。


 最初は気を使われているんだと思っていたが、昨日の昼に店の方に手伝いに出たら理由が分かった。

 オレに声をかけてくる人が多くて仕事にならずに、少し顔を出した程度で退散する羽目になってしまったのだ。

 オレが手伝いに出ていると聞いて店に顔を出す人までいたから、意外とオレを注目している人は多かったらしい。


 あれは手伝に出たとしても、ただひたすら母さんの負担になるだけだよな。


 大会の観戦に行こうかとも思ったが、もし観客席でオレを知っている人間にあったらと思うと行くに行けなかった。

 観客席で店でやられたように声をかけられたら、オレに逃げ場は無さそうだしな。


 近付くと、円形闘技場周辺はなんだか妙な空気になっていた。

 警備の兵がやたらと多い。

 今日は王族でも観覧にくるのだろうか?


 関係者の通用門の方に歩くと、さらに増えていく。


 「2人目捕縛の報告来ました!」


 「そっち行ったぞ!」


 中から叫ぶ声が聞こえる。

 事件でも起こったんだろうか?

 かなり騒がしい。

 

「チビ!そやつ止めろ!!」


 は?

 急な声にそちらを向くと、通用門から警備の兵を押しのけるように男が1人飛び出してくるところだった。

 オレの方に走ってくる。……というか警備の兵が囲むように押し寄せてくるので手薄なオレの方に向かうしかないのだろう。


 「チビ!!!逃がすな!!!」


 さらに声がかかる。

 誰だよ?


 警備の兵が多すぎて誰の声なのか分からないが、警備の兵が追ってるなら飛び出してきた男が悪人なのだろう。


 「邪魔だガキ!どけ!」


 男が叫ぶ。手にはむき出しのナイフを握っていた。

 オレは横に逃げる……と、みせかけて身を屈めて足を出した。


 「うぉ!!」


 男が見事に転ぶ。

 オレの足に引っかかった男は走ってきた勢いそのままに吹っ飛ぶように転がって行った。

 単純だが、焦っている相手だと面白いように効くんだよな。


 転がった男に追っていた警備の兵たちが飛び掛かり抑え込む。

 男は転がった拍子に持っていたナイフで自分を傷つけてしまったらしく、腹あたりから血を流していた。

 それにもかかわらず次々飛び乗るように抑え込んでいくもんだから、その度に男が苦痛に悶える。

 ……傷口から内臓が飛び出さなきゃいいけど。


 で、結局のところこの騒ぎは何だろう?


 何か犯罪があったにしても警備の兵の数が多すぎると思う。

 常駐してる人数をはるかにこえているんじゃないか?


 オレが状況を理解できず周りを見渡していると、続々と集まってくる警備の兵の後ろから警備の兵とは違う目立つ鎧が一つ歩いてきた。


 「ごくろう!」


 オレに声をかけてくる。

 誰だコイツ?

 頭全体を覆う兜を被っていて顔が見えない。

 この鎧って、公爵家の騎士団のものだよな?


 「追い詰めるところまでは上手くいったのだがな。賊とはいえ流石は人昇精霊(エフォーディア)様の争奪大会に参加できるほどの男だ、ナイフ一本で囲みを崩されてしまった」


 呆然と見ているオレに手を差し出してくる。

 まだ身体を屈めているので、立ち上がる手助けに差し出したのだろう。

 オレはその手を頼らずに立ち上がる。


 「チビがいてくれて助かった。礼を言うぞ」


 オレに差し出した手を所在なさ気にした後で腕を組むと、偉そうに言ってのけた。

 で、誰だよ?

 オレを知っているような口ぶりだよな。

 つか、礼を言うくらいならチビ言うな。


 捕まった男が連れて行かれる。

 大量の警備の兵に押しつぶされたらしく、意識を失て腹から血を流したまま引きずられていった。

 本当に何だったのだろう?


 「ああ、すまぬ。

 人昇精霊(エフォーディア)様の争奪大会に紛れ込んでいる賊を捕縛せよとの命令が公爵様からあったのでな。その処理にあたっていたのだ。

 賊は3人おって、こやつが最後の1人だった」


 オレがまったく状況が理解できていないことにやっと気が付いたのか、公爵家の騎士団の鎧男がそう説明してくれた。

 なるほど。

 しかし3人も混ざっていたのか。

 タグにどれほどの情報が入っている物なのか知らないが、そういった犯罪の情報は含まれていないんだろうか?

 含まれているなら神殿で参加条件を満たしているかチェックされた時に、気付いて排除されていたんじゃないか?


 「賊を牢に入れねばならぬのでな、失礼するぞ。

 チビも頑張ってくれ!」


 大仰に言うと、公爵家の騎士団の鎧男は警備の兵を引き連れて帰って行った。


 結局、誰だったんだよ?

 騎士団の練習にも参加したことがあるから知り合いなのかもしれないが、まったく分からない。

 悩んでいても仕方ないな。

 オレは忘れることにして歩き出した。

読んでいただきありがとうございます。

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