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にじゅうしち 怖い人

「どういうことだ?」


 その流行り病の話なら俺も知っている。


 何度も新聞で取り上げられていた。


「つまり、彼女は、ユウへグは勘違いしているのです」


 勘違い?


 何を?


 確かにこいつの言っていることは俺の知らなかった過去だったり、事実関係だったりで、頷くような部分もある。


 が、しかし、イマイチ何が言いたいのか分からん。


 この話はどこに着地するんだ?


「ですから、私が『怖い人』だと思われているユエンですよ」


「…………」


 ……スッカリ忘れていた。


 そういえば、そもそもはそこからだったな。


「忘れないでくださいよ」


「忘れてねえよ」


「とにかく」


 と、オンスは最後に一口分だけ残っていたサンドウィッチを口に放り込んだ。


 俺のコーヒーカップも、こいつのコーヒーカップも、もう既にカラだった。


「彼女は勘違いをしている」


「勘違い」


「妄想と言ってもいい」


「妄想」


「あなたにも心当たりがあるはずです。彼女はウソをよく言う」


「ウソをよ……」


 ――「私の名前は奴隷ちゃんです」


 ――「九十九です」


 ――「ウソです」


 ある。


 心当たりがある。


「彼女には虚言癖、妄想癖の類があります。それは、普通に生活していれば、周囲の人間を笑わせるくらいの、可愛らしいものでした。明らかなウソを言ったり、辛辣な想像をぶつけたり」


「……だから、それがどうしたってんだ」


「私は父と喧嘩をしました……父が亡くなる一週間前のことです。初めてにして、激しい論争でした。論争と言えば聞こえはいいですが、ただの口喧嘩ですね。それが、本当にいけなかった」


 先程までの爽やかな笑顔などどこ吹く風、打って変わって、神妙な顔つきである。


 まだ俺には分からない。


 オンスは窓の外をチラリと見やって、言った。


「ユウへグは、ヘイドとルポを殺したのが私だと……そう思い込んでいるのです。故に私は、『怖い人』と表現された。これは、典型的な妄想癖です」

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