にじゅうよん 九年前
あなたが十八歳の時、親戚が集まって催されたパーティーがありました。
本当に多くの親類が集まりました。
会場は父との縁が深かったホテルです。
ホテルの名前は失念しましたが、まあ、重要ではないので許してください。
ホテルと呼びます。
集まった人数は少なくて五十人。
多くて百人といった程度でした。
豪勢なご馳走に派手なドレスが目に眩しかったのを記憶しております。
……ここまで聞いても、まだ思い出しませんか?
……そうですか。
大丈夫です。
最悪、思い出さなくても。
パーティーには当然、父も参加しました。
私やあなたも参加しました。
あなたの知っている人も、知らないであろう人も、親類はほとんど参加しました。
いろんな人が参加したんです。
そりゃあ、大賑わい。
シャンパンのコルク栓が飛び交いました。
シャンパンも飛び交いました。
人々は大いに食らい、大いに呑み、そして大いに語らいました。
近況報告、世間話、色話、などなど。
酒とともに。
そこは大いに、大人の空間でした。
会場はホテル。
乱痴気パーティーの最中とはいえ、オーナーからしてみれば清潔でいてほしい、大事な商売場所です。
そのオーナーのホテル使用条件に、子供は酒を呑むなというのもありましてね。
子供はあまり楽しめなかったでしょう。
事実、私もそこまで楽しいかった記憶はありません。
大人の意向で私やあなたの他にも子供は何人かいましたが、場違いな雰囲気はありました。
子供にはいささか参加しにくいパーティーだったのですね。
さて、もう一度言いますが、時は九年前。
奴隷解放運動の始まりが五年ほど前ですから、当時、「奴隷は駄目」という風潮なんかありませんでした。
存在して当たり前な存在でした。
会場となったホテル。
そこにも当然、いたんです。
奴隷が。
何人か。
パーティー当日も働いておりました。
飛び交うシャンパンを横目に料理を出し、酒を注ぎ、散らかっていたものなどを片づけておりました。
その奴隷たちの中の一人に、ルポという女性がいました。
たしか当時は二十前半だったと記憶しておりますが、正確な数字は忘れました。
これもまた、重要ではないので、許容願います。
何よりも重要なのは、ルポというその女性に子供がいたことです。
生まれたばかりの子供です。
女の子でした。
パーティー当日、時は九年前。
もう、お分かりですよね。
その女の子の名前は、ユウへグと言いました。
あなたは九年前、ユウへグにも会っているのです。




