神託は大陸に波紋を広げる
神託に対しての大陸主要国の反応です。
よろしくお願いします。
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大陸の7ヶ国に神の眷属、神獣のフクロウの翁より神託が下った。
曰く、国、街の美化に努める事。
特に排泄物は他所に集め発酵させ農作物の肥料とする事。
その際下賜された聖水を混ぜる事を忘れぬようにする事。
農作物の改良に努める事。
結果として、病のまん延を防ぎ、身体能力の向上、食の充実が見込まれる。
以上の事を良く努めた所から、瘴気溜まりの浄化を行う事とする。
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「…また妙な神託でございますね」
「恐らく今回召喚れた勇者が絡んでるんだろうよ」
薄暗い大広間。その一番奥に重厚な作りの王座があり、そこに細身の青白い肌に漆黒の長いストレートな髪、赤い瞳は怪しくも美しく光を湛えており、視る者を虜にする美麗なる者が座している。一つ大きな特徴があり少し尖った形の耳の上から黒光りする羊の角のようなものが生えていた。
ここはアールスト王国の第二王子が復権の為に【勇者ケン】を使って攻め取ろうとしていた魔国。
その大広間には魔王とその重臣が揃っているが、口を開くのは魔王と宰相であるベルゼブブばかりだ。
他の者は面倒臭がったり、恥ずかしがったり、何か食べていたりと、まぁ自由にしている。
「勇者が絡んでいるのでしょうか?」
「十中八九な。この世界の者は街が汚かろうが、病が拡がろうが、ましてや食に関して充実なんて考えもしまい。農作物に肥料?などこの世界のどこにもそんな知識はないからな」
組んだ長い足に肘をつき面白そうに予測を述べる魔王に、何かを食べていたグーロが珍しく口を開く。
「魔王様、食が充実?したらどうなるのかな?お腹いっぱいになる?」
ブサ猫のような顔で小首を傾げる姿は愛嬌がある。
魔王はそれに機嫌良く答えてやった。
「どうだろうな。それが早く分かるように神託の事を頑張るしかあるまい」
「うん!頑張る~」
勇者召喚に囮のように使われたのだ。胸糞悪かったからな。是非とも我が国に一番に来てもらおうではないか、勇者殿。
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ジュポン国最大の港街にして王都。ミャーミャー…とウミネコが忙しなく鳴いている。自分たちより遥かに大きな絶対的存在の神獣フクロウの翁の気配に怯え逃げまどっていたのだが、その鳴き声をかき消す笑い声が港に響いた。
「ガッハッハッハッ!面白れぇじゃねぇかっ、今度の勇者様はよ!」
港に停泊している釣り船に腰をおろし、膝をバシバシ叩きながら大笑いしている男。年の頃は四十歳を過ぎた辺りこの世界では人間族の平均寿命が短く初老といったところだろうか。だがまだまだ筋肉にも張りがあり顔も目尻に笑いシワがある程度、若々しさを保っている。やんちゃ親父といったところだ。
「陛下っ!またこの様な所にお一人で!せめて護衛を…、いえ誰かに出掛ける事を申し…、そもそも城から抜け出さないで下さい!」
丸眼鏡をかけた痩せぎすな若者が、護衛と文官を数人連れてやってきた。側で魚の売買をしていた漁師はいつもの事と微笑ましく見ている。
「おう来たか。フクロウの翁の話聞いたか?」
「ええ、聞いたからこそ陛下をお探ししていたのです。大事なご神託をこの様な所でお聞きになるなど…」
「俺の国のどこで聞こうが問題ねえよ」
若者の小言を遮り、陛下つまりジュポン国国王は釣り船から立ち上がり両腕を広げて大声で言い放った。
「それよりあの神託、俺たちに有利だぞ!うちは他の大陸との交易があるから他所より衛生面でも気を使ってたんだ。農作物の肥料ってのはよくわかんねえが、これでうちの土地でも育つ物が見つかるかも知れねえっ。それで瘴気溜まりの浄化をしてくれるんだ、やるしかねえだろ?なぁ皆!」
「おおうっ!!」
若者と共に来た者も周りにいた漁師たち、国王の声を聞いた者が皆、力強く答えた。
口が悪く無作法で、すぐ城を脱け出すやんちゃな王だけれど憎めない。誰よりもこの国を大切に慈しみ惜しみ無く働いている方だから。ジュポン国の国民の心は貴賤問わず国王に向けられていた。
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アールスト王国の王城の一室、国王の執務室でその部屋の主は深い深いため息をついていた。
「陛下、お疲れ様にございます」
そう言いながら目の前のテーブルの上に置かれたお茶からは甘やかな優しい花の香りがする。
一口飲むとじわりと温かく紅茶の渋味と花の甘味が口の中に拡がり更に疲れた体に染み渡った。
「旨い茶だな」
「はい、ゲイツ大将軍から頂戴しました物にございます」
アールスト国王は計画通り城を少し離れ愚息が【勇者召喚】するのを待っていた。そしてどうせ手に余るだろうから、助けを求められたら早急に城へと戻り勇者に深く詫び手厚く歓迎するつもりでいた。
それなのにもたらされた報せは勇者を放逐したとのこと。
第二王子は厳しく育てた王太子である第一王子と違い、王妃が私に取られまいと囲い込みひたすら甘やかしていたが、まさかそこまで愚かだったとは自分の甘い見立てに舌打ちをし急いで城に戻ったのは翌日遅くだった。
時既に遅く勇者は【深遠の森】に入り後を追えなくなっていた。
城の留守を任せていたゲイツがみすみす逃すとも思われず、愚息の近衛だったピアが騎士を辞め行方知れずとなったと聞きわざと逃したのだと悟った。
ゲイツはこの事の責任を取り、引き継ぎが終わり次第大将軍の座を辞する旨を私に伝えてきた。
第二王子の後ろ楯である王妃の実家である公爵家と私服を肥やし教会の実権を握っている司教の力を削ぐ為、各国の思惑もあり実行したのだが何とも言い難い結果となった。
召喚された勇者が、先の勇者と同じような成人したての子供ならなんとでも丸め込んで国の為に力を使ってもらおうと思っていた。流石に公爵家のように隷属しようとまでは思わなかったし、そうなると勇者の末裔でもあるゲイツが何としてでも召喚を止めさせると思っていたから。
それが召喚された勇者はどうやら少なくとも二十歳は過ぎていて、愚息をわざと怒らせて城から追い出された節があった。
そうなると我が国だけではなく、各国の思惑【勇者召喚の責任は負いたくないが、瘴気溜まりの浄化はして欲しい】ということも恐らくは察しているのだろう。
各国にそれぞれ一台しかない通信魔導具で状況を伝え戦々恐々としているところに下されたフクロウの翁からの神託、各国の要人は安堵したに違いない。
それと共に今代の勇者は理不尽な事はしないように思われた。
先代の勇者が理不尽だった訳ではない。理不尽というより倫理観、価値観の違いが有りそれを我々に押し付けてきたのだ。
例えば奴隷制度の廃止、一夫一婦制、国家間の争い事の禁止など。
奴隷制度の廃止にはせめて犯罪奴隷の許可を求めたが、奴隷にも人権があるとし却下された。
一夫一婦制も倫理観の押し付けだった。平民ならまだしも我々王侯貴族は血を繋ぐ責務がある。なのに子が成せなければ、家を存続する為に近しい親戚から養子を迎えねばならず、それが無意味な争いに発展したりもした。また他種族では只でさえ子を成しにくいため数を減らした種族もある。
国家間での戦争は回避されたが、水面下の政争は激化したように思う。そういう裏の事が苦手だろう他種族は立場を弱めたりもした。
そうなると反発もしたくなるもの。制約魔法に気付かれないよう期限を設けたり、それが見付かって更に厳しいものを突き付けられたりもした。
そういう事があったから各国皆【勇者に瘴気溜まりの浄化はして欲しいが、関わりあいになりたくなかった】のだ。
ところが先代と同じと決め付け褒められた行いを我々は怠ったのだ。今代の勇者が浄化せずに逃げても文句も言えない。条件付きではあるが浄化してくれることに感謝しかない。なのにである。
「はぁーーーーー」
ため息も多くなる。
只でさえ他国に比べて出遅れているのに、公爵側の人間と司教の子飼いの者が無駄に煩い。
「糞尿を集めて何になるんだ?!」と文句ばかりだ。第二王子と司教をすぐにでも亡きものにすると脅したのも無理はあるまい。
まぁ、第二王子は生涯幽閉、その取り巻きは修道院、司教は財産没収の上地方の教会で見習いからやり直しが妥当なところか。
「神託の件、大将軍から退いたゲイツに任せるか」
誰に言うでもなく出たことだか、とてもいい人選に思えた。
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雲の上、止まり木などない所で羽を休めながらフクロウの翁は目を細め下界を見下ろしていた。
『うむ。今代の勇者殿は自身の事は隠しておきたかったようじゃが皆気付いておるようじゃのう。ホッホッホッこれもまた愉快な』
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