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ハーツと恨み

──運命の神様がいるのだとしたら非常に性格が悪いのだろう。いや、実際に存在していて性格がとことん悪い。


確かに呆気ない勝利を意外に思い、衝撃的で飽き飽きしない展開を望んだけれど、こんな事になるなんて思わないじゃないか!!!


「はははははは。暴れろ、散らせ。イティラ・トロムに最大の悔恨を与えろ」

狂った様に笑い、指示を出すハーツ。彼は魔獣の亡骸の上に立ち、魔王と同等の力を振り撒いていた。


どうしてこんな事になってしまったのか、話は十数分前に遡る。



「しかし、あんなに強者感を漂わせておいてこの結果とは本当に残念だったなあ。もっと面白い試合が観れると思っていたのに」


「いつまでも落ち込んでいないでよ。まだまだ、試合はあるし、何なら直接対決だってある。と言うか一生懸命戦ったんだから何度も言うのは流石に酷いよ」


落胆の声は他の席からも聞こえる。どれもハーツを責める声ばかりだ。それは大会運営にも波及していて、治療員が失望の眼差しを向けているのが見えた。その証拠として彼はまだ場内に倒れたままだ。


ハーツを寄ってたかって悪く言い、思うのはあまり気持ちが良いものではなかった。


「僕、彼を回収に行ってくるよ」

いつまで経っても彼を治療室に運ぶ素振りが誰一人としてない。僕は観客席から飛び降りて彼に付くと何故、誰も彼を運ぼうとしなかったのか理解出来た。


丁寧だった口調は消え失せて、ハーツは暴言をボソボソと繰り返していた。その姿はあまりにも異質で、近寄り難かった。


「だ、大丈夫かい。立てる?」

僕が恐る恐る手を伸ばすとハーツはキッと目線を飛ばして来た。


「お前のせいで。お前がいたから俺はこんな醜態を晒している。そうだ、お前さえいなければ……」

ここは観客の声がほとんど全て聞こえる。当然彼の耳にも全て入っているのだろう。しかし、責任転嫁もいい所だ。


そう思っているのも束の間、腹の底から唸る様な声を上げるハーツから何やら禍々しい様な赤黒いオーラが畝り出した。


「何だこれは……!?」

そのオーラは彼の倒れている背後に動くと二人の男の形になった。それは赤黒いオーラが形を成しただけであったが、顔つきや雰囲気から僕は誰であるかすぐに分かった。


一人は魔王。何故か手負いの状態ではあるが、その容姿、そして対峙した時の雰囲気は間違いない。

もう一人はイルビィ。こちらも手負いである事は同様だが、前に見た時よりも何か疲れていて更に容姿が酷くなっている。


どちらにせよ、やばい相手であってこの状況はマズイ。

観客席には一般民や学校生が多くいる。彼らがどう動くのか分からないが、戦いに発展することは間違いない。


僕が出方を伺っているとハーツが立ち上がり、魔王の方に触れた。すると、魔王の身体が崩れてハーツの中にオーラが入り込んでいった。


「何が起こっているんだ」

ハーツが自分の手を見た後、その手を振りかざした。すると各地で魔獣が湧き出した。しかもそれらは大きく、如何にも強そうなのしかいない。その光景はまるでハーツが魔王の力を得たようであった。


この状況を打破するには学院長の力が必要だと思い、そちらを向くと五つの学院長がいた所を針の山が覆う様に発現した。


「学院長!」


「俺たちは大丈夫だ。ただ、これを破壊するのは容易でない。剣だって持って来てないし」


「そんな……」

学院長の協力なしではこの状況を良くする事が難しい。


「イティラ、よく聞け。俺達はこんな状況だから状況を変えられるのはお前達生徒しかいない。まずは落ち着いて、一般民を逃すんだ」


「それに関してはもう行っています」

上空からいきなり降って来たロニエがそう言った。彼女はいつになく落ち着いていた。


「そうか、優秀だ。それじゃあ、あれらがここを出ないようにする事がお前達の使命だ。魔獣一匹出させるんじゃない」


「了解です。それはそうとして、何なんですかアレ」


「俺の憶測だが、イティラに対する恨みに反応している可能性が高い。ハーツ自身の大きな恨みがイルビィ、魔王の恨みを呼び顕現させた。そう考えるのが妥当だろう」


「そんな事が起きるんですか?しかも、傷を負っています」

恨みが恨みを呼び、形を成す。そんな事があるなんて話は聞いた事がない。


「普通は起きないだろう。しかし、ハーツは異常なほどに魔法に対して才がある、イティラも分かるだろう。その才によってそういった類の魔法を大きな恨みによって発現させていたら、とも考えられる。そして、呼び起こせるのが対象を恨んだ時の状態であると仮定すると二人が手負いなのも納得出来る。とにかく、俺はこの格子の破壊を急ぐ、イティラ達は被害が最小限になる様に最善を尽くしてくれ」


「「はい」」


今は生徒が魔獣の相手をしている。

魔王の恨みを取り込んだハーツとイルビィは動いていないが、彼らを守るようにして魔獣が湧き続けているから誰も近付けない。


「どうするよ、イティラ。俺はお前の指示に従うぜ」


「アレン……ありがとう。とりあえず手が足りない。この量の魔獣をどうにかしないと彼らを止める為に近付く事すら出来ない」


「それなら俺たちに任せておけ」

いつの間にかアルガレムが僕の背後に立っていて、その背後には大剣を背負った生徒が多く連なっていた。


「俺達、虎翼学院の精鋭が暴衝打ちで魔獣を一気に倒す。その隙にあのハーツに近付け」


「アルガレムもありがとう。お願い、助けてほしい」


「ああ、一丁ド派手にやってやるぜ。いくぞお前ら」


「「「「おおおおお」」」」

虎翼学院の生徒の連携は本当に凄かった。手を焼いていた魔獣が一気に片付けられてハーツに繋がる道が出来た。


「早く行け」


「ありがとう。アレン、ロニエ、行こう」


「私達も忘れないでね」

クロエとキョウカが駆けてきて僕らに加わった。


「アレンとロニエ、キョウカはイルビィを頼めるかな」


「はい」

「分かった。噂のイルビィと一回、戦ってみたかったんだよ」

「……うん」


「クロエは僕とハーツを」


「了解」


僕らが、いや僕が近付くと急にハーツが下げていた顔を上げて動き出した。さっきの暴衝打ちで倒れた魔獣の亡骸の上に登り、手を広げた。

その後すぐにあちこちで悲鳴が上がり出した。魔獣が強化されたようだ。


「こうなったのもお前のせいだ、イティラ。これからお前のせいで多くの生徒が死ぬ。多くの犠牲者を前に後悔しろ」


「そんな事はさせない。すぐにお前を止める」


「ははははは、この私を止められるかな」

そうしている間にも悲鳴の数は多く、大きくなっていっている。


「イティラ・トロムに最大の悔恨を与えろ」

死体の上でケタケタと笑うハーツは完全に狂っていた。

魔王の力を得たハーツ、どうなるのでしょうか。

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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?

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