随一の戦い
力のトーナメントは順当に進んでいき、再び僕の出番がやって来た。
『第一試合にて素晴らしい戦いを見せてくれたイティラ選手。今回も私たちの胸を沸かす熱き戦いを見せてくれるのでしょうか。対するメギガ選手は大魔法学院一年の中でトップレベルの実力を持つ生徒。その強さは第二試合で一分未満で相手を倒すとしっかりと証明しています。勇者学院随一の実力者と大魔法学院一年随一の実力者、さあ勝利の栄光を掴むのはどちらか!?』
僕の目の前に立っているメギガはあの小柄な鎌を操る魔法を使ってきた少年だ。キョウカの麻痺飛翔斬を避けていた時点で実力はあると思っていたが、あの大魔法学院の一年で一番とは。
メギガはこちらを射殺すような視線を飛ばして来ている。何か怒らせる様な事をしたっけな……。
「お前が魔王撃破をしたイティラだったんだな。同い年にして勇者に匹敵する功績を成した、って聞いて憧れていたのに……こんなちんちくりんなんて」
(やっぱり皆んな、僕の見た目と功績の違いの落差にガッカリするのね。仕方がないじゃないか、筋肉が付かないし、背は伸びないし……。まあ、それをメギガが言うかという感じではあるけど)
「それはごめんね。けど、見た目が全てではない、という事を教えてあげる」
「大抵そう言う奴は負ける運命にあるんだよ」
「けど、バトルロアイヤルで僕は君に勝っているから弱くないとは証明出来ていると思うよ」
「あれは隠密のお陰だろう。仲間の魔力があったからお前が勝っただけだ」
まあ、キョウカが隠密の魔力量を上げられなかったらメギガが見えていなかったから彼女の功績が大きいのは確かだけど。
『それでは開始です』
会話を中断させる様に進行とともにお馴染みの開幕の鐘が鳴った。
「『死神の鎌』付与『熱切断』」
それと同時に禍々しい紫のオーラを纏った鎌を出したかと思ったら、赤いオーラを纏わせてきた。
(バトルロアイヤルの時の鎌か。それにしても物騒だ、あれに当たったら肉が焼き斬られる)
見るからに高温の鎌は熱でギラギラと光り、こちらの命を狩ろうと狙いを定めてきている。
「四の塵──性質変化・剛。『身体強化III』」
僕は四の型に身体強化、肉体と魂の結び付きを強めて準備をした。
(相手は剣を使わない。あの魔法の大きな鎌を振り回しながら別魔法も使ってくると考えるのが妥当だろう)
ならば、攻めるは近接。僕は雷轟で急接近して五月雨斬りを放とうとすると
「まあ、そうくるよな。『爆破』」
「なっ!?」
メギガの正面が爆ぜて、それに巻き込まれ吹き飛ばされた。そこに鎌が襲い来る。狙いは首、本気で殺しにきている様だ。
「魔導師が近接対策をしていないと思ったか。非常に浅はかだ」
鎌が地面スレスレを平行に駆けてくる。僕は急いで起き上がって、バックステップで避けた。
「近接がダメだから遠くに行くのも悪手だがな」
背後から魔力の流れを感じると気付いた直後、僕は来た道をそのまま戻す様に吹き飛ばされた。
(打開策を考える隙がない)
遠近どちらも攻撃出来る爆破。会場を縦横無尽に駆ける凶悪な鎌。他にもまだ手が残っているだろう。
「一の閃──雷轟、四連」
「何度やったって変わらない。『爆破』」
また正面に突っ込んだ僕は爆破の直撃ルートに入っているが、雷轟で更に身体を弾いて軌道を変えた。
「カハッッッ」
そのまま軌道を二度変えて背後をとり、勢いを乗せた膝蹴りをお見舞いした。
吹き飛ぶメギガに追撃を入れようと後を追うが鎌が邪魔をしてくる。
「邪魔だ。五の塵──豪剣連斬」
間を割り込む様に入ってきた鎌に連斬を繰り出した。破壊を目論んだが流石に不可能であった。が、僅かな進路が出来た。
腰を落として、出来るだけ高さを縮めて雷轟で接近をして、立ち上がったばかりのメギガを蹴り上げた。
背後から襲いかかってくる鎌はバック宙で躱して、空中に飛び上がった。打ち上がったメギガの腹を柄で思いっきり殴り、叩きつけた。
「ぐっ、くう……。『爆破』」
あと一撃のところで雲隠れされてしまったが、気配は掴めている。爆破の終わりと同時に突っ込もうとすると
──そこには巨大な砲門があった。
「はっはは。ははははは。イティラ・トロム、お前がこれを避けたら観客は大惨事だ。魔王を撃退したお前なら当然、受け止めてくれるよなあ」
自暴自棄になったメギガが僕を挟んで観客のいる方に砲門を向けて魔力を込め始めていた。
「やめろ!」
「ははは、やめないね。『生絶砲』付与『熱切断』」
超高出力の魔力砲に加えて、術者の実力では超合金すらも焼いて断つという魔法が組み合わさってこちらに発射された。
「『身体強化V』。オワリノ塵──大嶽穿ッッ」
こちらの剣は鍛治法、素材、剣匠全てが不明の無限の耐久を持つ剣。熱切断にも耐え切り、その力を受け止めた。
「ハアアアアアアアア」
しかし、受け止められても砲を跳ね返せるわけではない。徐々に威力が増していく力に僕は押し切られていく。
会場に穴が開くほど踏ん張り、重心を前に傾けて全力で跳ね返しにかかるが、ダメであった。踏ん張っていた地面が勢いに耐えきれず禿げてしまい僕は体勢を崩した。
「マズイッッ」
全てを焼き焦がす砲が剣というつっかえがなくなり、全身に襲いかかってきて──。
イティラの運命やいかに。




