疲れる…
でも、さっきはさらっと流しちゃったけど、身体能力が10倍って、かなりなチートなんじゃね?
細かい問題を無視すれば、確実に戦闘能力は高いはず!
『何やら喜んでいる所、まことに申し訳ありませんが…』
んぁ?
『アーマードスーツ(仮称)は、身体能力をおよそ10倍にまで引き上げるパワードスーツとなっているという事はお話ししましたよね?』
ああ、確かにそう聞いたぞ?
『この機能はフルタイムで身体能力をサポートし向上させます。言い換えると、常時身体能力が10倍なんですよ?』
それが何か?
『まだ理解できませんか? 常時身体能力が10倍という事は、例えばそのスーツを着用した場合、普段通りの行動は1/10の力でなければいけないという事なのです』
んんん?
『例えば、スーツを着用したあなたが、普段通りに誰かの手を握るとどうなると思いますか?』
あっ!
『10倍の力で握りつぶしちゃうって事になります』
そ、そりゃ大惨事じゃねーか!
『まあ、デ・カルチ〇ーで有名なあのアニメに登場するバリアブルでファイターな可変戦闘機のパイロットも、誠にリアルな事にロボットの手で生卵を掴む訓練をするという設定だったらしいですから、あなたにも訓練が必要だと思います』
めっちゃコアな情報だな。
ってか、それって歌がめっちゃ重要なアニメの話だよな?
ファンの人からクレーム来るぞ!?
だけど、確かにそう言われたら絶対に訓練は必要だな…。
『ご理解いただけたようですね。ちなみに、常時身体能力が10倍とは、五感全及びその他の全ての感覚機能と思考能力及び第六感にも適用されます』
………はっ?
『いえ、当然でしょう? 筋力だけが10倍では、全力で疾走した時に脳の処理が追いつけませんし、視覚が10倍になった視界を普通の脳で処理できるとでも? あなたが全力で戦闘行為を行ったとして、それを脳が処理できなければ、単に筋力に振り回されたお馬鹿が出来上がるだけです』
な、なるほど…。
『ちなみに今は動かずに立っているだけなので理解が追いつかないかもしれませんが、よく周囲を見回してください。深夜の暗くて狭い秘密基地(笑)のはずですが、妙に周囲が良く見えませんか?』
あ! 確かにめっちゃ良く周囲が見えて、全然深夜って感じがしねぇ!
普通に見えてたから、全然違和感無かった!
『自然にあなたの能力をサポートしてますからね』
あまりにも自然すぎて気が付けんかったわ!
『第六感やそれ以外の感覚とは、いわゆる宇宙生活に適応して超人的な感覚力と直感力と観察力と洞察力を持った人と同じ感じになります。キュピーン! って』
………人類の革新? それ、絶対に不味いだろ!
いや、そもそも第六感って、そんな感じだったっけ?
『いえ、第六感とは五感で感じる以外の知覚能力の事ですから、まぁニ〇ータイプは分かりやすい例えです』
おま、はっきりそれを口にするな! 絶対にファンからクレーム来るぞ!
『さて、第六感以外の感覚機能の代表としましては、平衡感覚や時間間隔とかですね。平衡感覚とは、言ってみれば3次元の立体機動で常人の10倍優れていると考えて間違いありません』
お、これは素直に嬉しいかな?
『次に時間間隔ですが、色々な外的要因を感覚器官が感知し、それらを脳で処理する速度に由来しています。ですので、その時間感覚も10倍になってます』
それって、どゆ事?
『簡単に説明しますと、普通の人の時間感覚に対し、あなたの脳の時間感覚は10倍、つまりは1/10の時間で処理できるという事です。即ちスーツ内部は外部より時間の流れが速い空間となっているのと同意です。つまり、普通の人だと10時間かかって処理している事柄を、あなたは1時間で処理できる。あなたが理解しやすいように言えば、精神〇時の部屋に居るようなものです』
ああ、なるほど…って、星が入ってる球を集めて神の龍を呼び出すあのアニメが元ネタかよ! 謝れ、あの偉大なる作者様に謝れ!
『いやですよぉ。あなたが理解しやすいように例えで話しただけで、別に貶めている訳じゃないんですから』
ま、まぁ…確かにそうだが。
ってか、よっく考えてみたら、精神と時〇部屋とは、全然違う気が…?
『ってことで、このスーツの有用性と危険性がある程度理解できました?』
急にさらっと話を変えやがったな、こいつ。
まぁ、確かに色々と問題ありそうだ。
単に身体能力が10倍になるって事が、ここまでやべぇ事とは思いもしなかった。
『ま、一般的な異世界物では、その辺を考えて描かれてませんからね。ちなみにそのスーツを着用したまま、無茶苦茶臭い所にいくと、一瞬で嗅覚が死にます!』
そりゃそうだよな、10倍だもんな!
『めっちゃ五月蠅い所に行くと、聴覚が死にます!』
わかってるよ!
って、待て待て待て、それって使えねぇじゃん!
戦場なんて、どっこも五月蠅せーだろーが!
『もしも何か食べることが出来たら…』
ってか、味覚まで引き上げるな!
『股間をサワサワされると、感度も10倍になります! これをび・ん・か・んと言います!』
敏感って、それも感覚の一つなのか?
いやいや、待て待て! そもそも誰がこのスーツの中をサワサワ出来るんだよ!
ってな感じで、この腐れナビによるスーツの説明は続くのであった。
▲
グダグダしながらも、一通りスーツの説明を聞いた感想は、『このスーツって結構やべぇ物じゃん!』だ。
俺がイメージしてた特撮物とか、結構いい加減な設定だったのかもしれない。
そんな事を考えながら、俺はスーツの手とか足を見てみた。
うん、確かに銀色な宇宙の刑事っぽい鎧だ。
腰のベルトの真ん中が、カシャン! って開いて風車が出てくる…ってギミックも無く、単なる飾りっぽくなっちゃってるが、これは仕方ないのか?
さて、スーツの危険性は一応認識出来たって事で。
次は武器を確認…確認…あれ、武器は?
見える範囲で身体中を見回したが、それっぽい物はないなぁ?
鏡が無いから、全身を見ることは出来ないけど、どこに付いてんだろ?
『何をキョロキョロしてるんですか?』
いや、武器はどこかなぁって。
『はぁぁぁ? んな物あるわけないでしょうが!』
え? だって、ギ〇バンだって剣使ってたじゃん!
ここは剣と魔法のファンタジー世界なんだから、剣使ってなんぼだろ?
『いやいや、あなたこのスーツを創造するとき、何をイメージしましたか?』
仮面でライダーな人…あっ!
『思い出しましたか? あの特撮番組って、基本的にパンチとチョップにキックですよ? 武器を使い始めたのはライダーでマンな人のアタッチメント武器からですよ? ちなみに次のえっくちゅも武器を使ってますが、剣は無いです! あまじょんも鞭ですし、そう言えばスーパーなワンな人は魔法っぽいのも使ってましたけど剣は無し! 最初に剣を持ったのは、真っ黒なRXとかですからね!』
お、おう…お前、めっちゃ詳しいな…。
『そんな事はどうでもいいのです! とにかくあなたがイメージしたのは、完全な徒手格闘オンリーな緑色の人造人間ですから、武器なんてありませんからね!』
りょ、了解…。
『とはいえ、あなたの情報を調べたら、前世では空手道という徒手格闘技を長年やっていたとありました。その格闘技の経験とこの身体能力10倍のスーツを合わせれば、魔王を倒すのにすら武器なんて不要かと思いますけどね』
そう…だ…な……ん? 魔王?
おい、魔王なんているのかよ!?
『いえ、そんなん居ませんけど? 何を言ってんですか?』
お前が言ったんだろうが!
『ああ、単なる比喩的表現です。この世界には魔王も勇者も居ませんから』
ああ、さいですか…。
なんか疲れる…こいつと話してると…。




