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システムバグで輪廻の輪から外れちゃったけど、どうやら他の星に転生したらしいです。  作者: 大国 鹿児


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さあ、開戦だ!

 父さんと最前線で遊んでる(?)と、遠くに見えるダンジョンの塔の方から何だか嫌な気配がムンムンと漂ってきた。

 どう表現したらいいのだろうか…とにかく、背筋がゾワゾワする? そんな気配。

 父さんもその気配を察したのか、真剣な顔で塔のある森の方へと視線を向けた。


「来るぞ。トール、本当にやるんだな?」


 父さんからの最終確認への答えには、当たり前だが答えはYESの一択だ。


「もちろん! 俺達の村は俺達で守ろう!」


 俺の答えに満足したからかはわからないが、父さんは男前にニヤッと笑う。


「トールは初めてだったな。父さんの本気の剣技を見せてやろう」


 おお、今日は輝いてるぜ父さん! 母さんの尻に敷かれてる普段とは大違いだ。

 この目で英雄って言われた父さんの剣技が見れるのか、楽しみだ。


「楽しみにしてるよ、父さん。俺とブレンダーの力も初公開だね」


 俺も父さんを見て微笑む…まぁ、銀色仮面の下だから見えないだろうけど。

 って言うか、もしかして空手って見られたら不味いのかな?

 父さんの部屋にあった色んな書物には、徒手空拳の技とか書いてなかったし。

 もちろん、剣も持ってるけど、そもそも今まで剣の練習なんてしたこと無い。

 前世でも中学校の体育で剣道をちょこっと習ったっただけだし。

 まあ、特撮ヒーロー物とか宇宙の戦争シリーズでは散々見たから、空手と組み合わせれば剣を使う事ぐらいは出来るだろうけど…やっぱ怪しく見えるよなぁ。

 いやいや、自重は捨てると決心したんだ。

 父さんに怪しまれようと、やってやろうじゃないか!

 よーし、なんだか漲ってきたぞー! 愛の〜目覚め〜! いや、寝てないけど。

 魔物だか魔獣だか知らんが、この俺の大切な物に手を出す気なら遠慮はしない!


「駆逐してやる!! この世から…一匹…残らず!!」


 ふと呟いた俺の言葉に、


「ああ、駆逐するぞ!」


 父さんも力強く応えてくれた。

 だけど、これって単なるネタなんです…。

 ごめんね、父さん…。



 ザザザ…ボギボギ…ガサガサ…ゾゾゾゾゾゾゾゾゾ…


 やがて森の奥から木々を掻き分け、何かが大量に近付いてくる音が聞こえてきた。

 俺と父さんの緊張度はすでにMAX!


「父さん。残りの防壁も、全部出すよ」

「ああ、頼む!」


 短いやり取りだが、父さんは俺を信じてくれてると感じた。

 嬉しかった。

 前世では誰かに信じられる事って、あんまり無かった。

 道場でも仕事でも結婚生活でも…。

 あ、思い出したら、なんか沈んできちゃった…。


『クーン…』


 そんな俺の心情を感じたんだろうか、ブレンダーが近寄って来た。

 慰めてくれてるのか? ありがとう。

 大丈夫、俺は今ここにいる。

 父さんや母さん、ミルシェちゃんにブレンダーに精霊さん。

 それに大勢の村の人達。

 きっと、みんなが俺を信じてくれてる…はず。

 だからきっと上手く出来るはず…いや、絶対にやるんだ!

 さあ、行くぞ精霊さん!


「残りの全防壁、一斉展開!」


 ズゴゴゴゴゴ!!!

 俺と父さんの背後で、土煙を上げながら草原に立ち上がってゆく防壁群。

 万里の長城みたいに(行った事はありませんが)果てなく続く防壁が、森と村とを完全に分断する。

 これで、見える範囲は、全てカバー出来てる…はずだ。


 防壁が遥か彼方まで立ち上がっていく様子を見た父さんも、驚いてはいる様だが事ここに到ってはもう何も口に出さない。

 父さんも目的のためには、手段なんて選んでいられないんだろう。

 子供である俺の力でも使える物は何でも使おうって考えてるに違いない。

 当たり前だが、俺達の目的は村の防衛と敵の殲滅。

 その為の手段は、例え俺の魔法だろうが父さんの英雄の剣技だろうが、もう何でもありって事だ。


 父さんは長大な防壁を背に無言で森を睨みつけ、ギラリと輝く片手剣と巨大な盾を構えた。

 ブレンダーも大きな体躯をバネを縮める様にぐぐぐっと身体を縮めて力を溜め、いつでも飛び出せるように構えた。

 俺? 俺は片手剣(まだ普通の剣です)を手に、自然体で森を睨む。

 戦闘前に、身体に余計な力を入れたらダメなんだぞ? 緊張で強張ってしまうからな。あくまでも自然体で臨むのが望ましい…洒落じゃないよ? ホントだよ?

 

 最初に森から飛び出して来たのは、ファンタジー物でおなじみのゴブリン。

 って、あれってゴブリンだよな?

 俺よりちょっと背は高く、緑色っぽい肌で長い手足をしている。

 腰布だけのみすぼらしい格好で、手に持ってるのは棍棒か?

 まさか某勇者の最初の装備、伝説のヒノキの棒じゃねーだろうな?

 数は…ん~っと、取りあえず沢山だなあ。

 ざっと百ちょっとってとこか?


「トール、来たぞ!」

「ああ、父さん! ブレンダー行け!」

『グルルルルル……グオォォン!!!』


 さあ、開戦だ!

 俺達はゴブリンの群れに飛び込んだ。

 父さんが左側、そしてブレンダーが右側の殲滅を担当。

 俺は中央を目掛けて吶喊だ。

 ちゃんと、誰が何処を担当するか、ポジションは予め相談してたんだぜ。

 なんせ殲滅力で言えば、俺の魔法が一番だろうからな。

 一番広い範囲を任せてもらった。

 もちろん無理やりな。

 

 さあ来い! 最初は雑魚のゴブリン(もしくはスライム。異論は認めよう)ってのが、ファンタジー物の王道で定番なんだ!

 こいつらの殲滅ごときに時間なんて掛けてられるか!

 精霊さん準備はいいかなー? 行っくぞー!

 俺の担当するゴブリンの群れの中央、見える範囲で一気に焼き払う! 


「ウォール・オブ・フレイム!」


 いや、別に叫ぶ必要は無いんだけど、こう…雰囲気的にね…。

 イメージは、敵を取り囲み焼き尽くす炎の壁…そのまんま英語やんけ。

 火の精霊さん担当の炎の壁が、いきなり現れ一気にゴブリンを取り囲む。

 慌てて右往左往するゴブリン達に、もう逃げ場などない。

 取り囲まれたゴブリンは、近くは燃え盛る炎の莫大な熱量に晒され焼け死んでゆき、離れた奴は煙に含まれた一酸化炭素の急激な濃度上昇で一酸化炭素中毒症状となり倒れてゆく。

 火の精霊さんの数が思ったよりも少なかったので、草原全てを焼くのは無理だったが、これで俺の担当範囲のゴブ達の脅威は一気に落ちた!

 何故か壁の外側の俺にその熱は届かない、とってもご都合主義的な炎の壁だ。

 風の精霊さんが気を利かせてくれたのかな?

 どっちにしても、このまま放っておけば、炎の壁で取り囲んだゴブ達は全てこんがり丸焼けになるだろう。

 しかもこの炎の壁が消えない限り、追加のゴブ達はこちらには出て来れまい。

 今の内に、父さんとブレンダーの様子を見て援護しよう。


 って、父さんは…ありゃ鬼だな。

 父さんが持ってるのは片手剣と盾だけど、もの凄いスピードでゴブ達を剣で切り裂き、盾で殴り飛ばして駆逐してる。

 もう剣の一振りで、数匹のゴブが真っ二つになってるし、盾を構えて吶喊したらまるでダンプカーにでも撥ねられた様にゴブが空を舞っている。

 すげえな、これが戦争の英雄か! 母さんが惚れたのもわかる気がする。

 なんせ、剣と盾だけであの数のゴブを背後に一匹たりとも通してないんだから。

 父さんの周りには、ゴブ達の血とか内臓とが飛び散りまくってる!

 完璧にスプラッターだが、そういうの俺は嫌いじゃない。

 なんせ飛び散ってるのは人の物では無く、敵のモンスターの物なんだから。

 しっかし、父さんのはチートも無いのになんであんなに動けるんだ?

 あ、こっち見て…ウィンク…だと!? 父さん、滅茶苦茶余裕だな。

 ウ〇ンクしてる everynight~♪ って、これはちょっとヤバイかな…。 

 どうでもいいけど、父さんの能力に比べたら、俺のチートって…情けなくね?

 

 さ、それでは右側担当のブレンダーは…ああ、見る必要もなかった。

 走り回るだけで、ゴブリンがズタズタになってる。

 そりゃそうだよね。

 あの水晶のような頭の角や背の刃は、それそのものがすでに恐ろしい武器。

 それだけでなく、あれは元々が俺のエネルギーで出来ているんんだから、言ってみればエネルギーの電池みたいな物。

 そして俺のエネルギー大好きな精霊さんは、あの水晶のエネルギーを自由に吸いまくって、やたらと張り切って好き勝手に魔法を連発しまくってる。

 主に風と土と水の精霊さんが協力してる様だ。

 土の精霊さんの土の弾丸と、水の精霊さんの氷の弾丸を、風の精霊さんがとんでもないスピードで散弾銃の様に撃ち出しまくって、ゴブリンを駆逐中。

 この中で戦闘力が一番高いのって、何気にブレンダーじゃね?

 

 なんかあっちの精霊さん好き勝手にやって楽しそうだな…。

 え? 火の精霊さんもあっちでやりたい?

 俺に銃を撃たせろ? …どこでそんなネタを。

 そんなこと言わず、こっち手伝って欲しいなぁ。

 だって、火の壁が無くなったら、ちと辛いじゃん?

 後からいっぱいちゅーちゅーしていいから…ね、ね?

 あ、わかってくれた? ありがとうね。


 おっと、それでもいくらかは決死の覚悟で炎の壁を突っ切って来る猛者も居るじゃあーりませんか! 

 ならばそろそろ俺も剣を使うぞ!


「エネルギー・ブレード…」


 そう呟きながら、俺は左手をゆっくりと剣身の上を滑らせる。

 俺の左手の動きに合わせて、剣身が青白く輝いてゆく。

 ちょっと低めの声で、溜めながらゆっくりと言うのがポイントだ。

 

 うん、やっぱ青色にして正解だ!

 だって、恰好いいんだもん!

 

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