やることは一つだ!
我が家が国から賜った領地は、かなり広大らしい。
だが実は開拓を前提として賜ったんで、この村にしか領民はいない。
領民も老若男女合わせても百二十人ちょっと。
学校でいえば3クラス分ってとこだな。
だからほとんどの領民が顔見知りで、もちろん俺の顔もみんなが知っている。
とは言っても、実は俺は村人の顔と名前が一致しません。
そもそも、村人の顔だって全員は知らんっちゅーの!
村って言ったって、こんだけの人数が住んでるんだから、そこそこ広いんだぞ?
5歳児がそんな村の中の隅々まで見て歩いて村民の顔と名前を覚える?
出来るわきゃねーだろーが!
すまん、取り乱した…。
さて、年寄りと言っても、まだ50歳ぐらいだから、バリバリの現役だそうだ。
構成は、大人の男が五十人、大人の女が五十人、成人前の子供が二十人程、治療とかできる女性が二人って事らしい。
とても分かりやすい構成となっております。
まぁ、この辺はこの国の王様が父さんにこの土地を下賜した時に、50組の夫婦とお医者さんを開拓民としてセットで渡したって感じらしい。
って事は、それから二十人ほど子供が生まれたって事なのか…微妙な数字だな。
それはさておき、取りあえず何かあった時に戦える男は50人+αって事になる。
何で程度かって言うと、我が家はその数字に含まれてないからだ。
つまりは、父さんと俺がその+αに該当する。
俺を含めていいのかは、この際置いておくが、そういうこった。
▲
父さんが飛び出した後、徐々に領民達が手荷物を持って我が家へと避難してきた。
我が家は決して大きい家ではないが、庭だけはやたらと広い。
ま、田舎で土地は余りまくってるからな。
一応、粗末だが木製の柵もあるんで、防護施設も無い村よりは安全かもしれない。
行動範囲が狭かった3歳ぐらいまではどこまでが庭なのかさっぱりだったが、今となればあの柵までが庭なんだと分かる。
初めて一人で歩き回るようになった時に柵を見つけて、我が家の庭の広さにめっちゃ驚いたもんだ。
野球のグラウンドの真ん中に建売住宅がぽつんと建ってるって感じ。
隣の家まで子供の足で歩いて10分かかるって、田舎すぎるだろ!
ちなみに、俺の自慢の秘密基地がある家の裏の林も、我が家の庭の中だった。
自分ちの庭に秘密基を造れるなんて、ちょっと吃驚だよな。
さてさて、母さんが集まった領民達の点呼をしっかりとって、欠員が無い事を確認した後、女子供は全員家の中に避難させた。
全ての部屋がぎゅーぎゅー詰めになるけど、それはしょうがない。
戦う力のない女子供に、ダンジョンからあふれ出るモンスターと戦えとか、口が裂けても言えないからな。
残った男達は鍬や鎌を手に、あの聳え立つ塔をじっと睨んでいた。
家畜は全て畜舎に入れて来たそうだ、果たしてそれで守れるのかは不明だ。
村中を走り回って点検してきた父さんも、倉庫で埃を被っていた鎧を着こみ、剣と盾を装備して村民の最前面に立って、同じように静かに塔を睨みつけている。
意外な事に、父さんが格好いい!
ただの巨乳人妻物の官能小説好きな男じゃ無かったんだな。
ちょっと見直したぜ!
窓を半分だけ開けて外を見ていた俺も、何か出来る事をしたい。
ミルシェちゃんが不安そうな顔で、俺の服の裾を掴んで震えている。
せっかく魂のエネルギーがこの星の200倍の俺がいるんだ。
神様からもらった便利グッズもある…1個しか使ってないけど。
振り返ると、避難してきた女子供がみんなぎゅーぎゅー詰め……。
そうだ! シェルターを造ろう!
ミルシェちゃんの手をそっと服からはずして、彼女の目を見ながら語りかけた。
「いい、ミルシェちゃんはここにいて。僕は父さんと母さんの手伝いに行くから」
「トールヴァルドさま…あぶないよ?」
「僕はみんなを守る領主家の男だからね。大丈夫、必ずミルシェちゃんは守るから。僕を信じて!」
そう言い残して、母さんの元へと向かった。
これでミルシェちゃん、間違いなく俺にほれたな。
顔が真っ赤で目が潤んでたもんな。
ふっふっふ……幼馴染ルート攻略開始だぜ!
いや冗談だけどね。
「母さん、僕が土の魔法で避難場所を造る。だから家の裏を貸して!」
「トールちゃん、どうやって造るの?」
「簡単だよ、地下に部屋を造るんだ! もうあんまり時間が無いから行くよ! 全部
終わったら元に戻すから!」
そう言い残し、俺はそのまま裏庭に走った。
後ろで母さんが何か言ってたが、聞こえないふりをした。
「精霊さん、精霊さん、緊急事態です! 精霊さんも知ってるかと思いますが、ダンジョンが出現しました。このままだとすぐにでもスタンピードが起こって、村がモンスターに蹂躙される可能性があります!」
裏庭に出た俺は、大声で精霊さんに呼びかけた。
反応した精霊さんが、わらわらと俺の周りに山盛り集まって来た。
せっかくなんで、ちょっと精霊さん相手に演説ぶっ込んでみよう!
「聞いてください精霊さん! このままだと、無辜の民に被害が出る。いや、人だけでは無い! 家畜や農作物、人々の家にも多くの被害が出る事でしょう! 精霊さん、これを黙って見過ごしていいのでしょうか?」
精霊さんが困惑したのかモゴモゴ言い始めた…気がする。
「あなたの隣人が不幸に陥るのを黙って見ているのですか? あなた方にはそれを回避するための力があるというのに、それで良いんですか!? 子供の僕一人の力では、誰も助ける事なんて出来ません。ですが精霊さんと協力すればそれは可能なのです! どうか僕にその力を貸してもらえないでしょうか。一緒にこの困難な状況を乗り切ろうではありませんか! あの幸せな日々を我々の力で取り戻そうではないですか! あなた達のその力はいつ使うのですか? 今でしょう!」
精霊さん、ものすごいスタンディングオベーション!
「土の精霊さん、火の精霊さん、風の精霊さん、あの秘密基地2号を大規模に拡大した物を家の裏庭に造たいんです! 領民全員を収容出来るだけの広さが必要です。地の精霊さん、地下ですから崩落しないように徹底的に壁や天井は強化してください。もちろん大人数ですから換気も大切です。風の精霊さんお願いします! 火の精霊さん、明かりはとても大切です。暗がりだと人は不安になりますから、いつもの3割増しで明るくしてください! いまから俺の中のイメージを送ります。さあこれがシェルターです!」
具体的なイメージは、地下鉄の駅の構内だ!
これをシェルターと言っていいのか微妙だけど…。
いや、それは今はどうでもいい! 皆の安全が一番だ!
俺のエネルギーなんざ、好きなだけどんどん吸っちゃってかまわん!
「さあ、精霊さん! ガンガン行こう!」
俺がそう言った瞬間、
ズゴゴガゴゴオグゴゴゴギギゴゴオゴゴゴオオゴゴゴオオゴオ!!!
立ってられない程のもの凄い振動と地鳴りが響いた。
我が家の裏庭の地面は隆起したり陥没したりと、目まぐるしくその様相を変える。
そして暫くし、振動も地鳴りも収まると、そこには地下鉄への出入口の様な階段が佇んでいた。
ちゃんと出入り口には頑丈そうな扉も付いている。
流石に精霊さん、あっという間に地下シェルターを完成させた!
あまりにも大きな音と振動だったので、驚いて両親も裏庭にやって来た。
俺は振り返ると、二人にこのシェルターを説明した。
「父さん、母さん。これは地下シェルターだよ。みんなに避難してもらうための地下施設。この中なら安全だから、みんなに避難してもらって! 急いで!」
そうは言っても、いきなり裏庭に出現した階段に、二人は戸惑うばかり。
なので、俺が先頭に立って二人を仲へと案内した。
父さんと母さんは、恐る恐る階段を降りてシェルターを確認し、安全そうだとすると、興奮した様子で飛び出して行った。
「トールヴァルド! 良くやった! すぐにみんなを避難させよう!」
「トールちゃん、あなたって超天才よ! これでみんな助かるわ!」
良かった、喜んでもらえたみたいだ。
精霊さんもハイタッチして喜んでいる。
精霊さん、マジでありがとうね。
お礼にエネルギーぐらいいくらでもどうぞ。
これでスタンピードが起こっても安心。
みんな助かるよ。
だが、俺はあそこに行かなきゃいけないんだ。
村の農作物も家畜も、みんなこの領の財産だ。
もしも被害が出たら、この領の未来は真っ暗だ。
だって、まだまだ小さい村だから。
俺は将来、必ずこの村を内政チートででっかくしてやるって決めてるんだ。
だから被害が出ないように、この村に来る敵は全て倒す!
精霊さん、手伝ってくれる?
うんうん、OKなのね。
準備出来たら声かけるね。
取りあえず今は神様からのあのグッズに頼るしかない。
変身ベルトはあったって武器が無い。
ならばやることは一つだ!
さあ行くぜ、秘密基地2号にレッツゴー!




