すっごーい!
この後、2時間ほどかけて、スーツの全ての設定を終えました。
筋力とか思考能力とかをいきなり10倍とかに強化したら、多分…いや間違いなく持て余すので、2倍程度で設定。
その他は、最低の1倍にしておいた。
救助者を探すときは小さな声も聞き逃さないように聴力を、遠くを見るときは視覚をっと、その場で色々と任意に各部の設定を変えれるらしい。
まぁ、何と言うか…このナビは色々と面倒くさい奴だけど、危険性を最初に説明してくれたから、俺もこの設定をする時にじっくり考える事が出来たってのは感謝できるかもしれない。
『ツンがデレましたね?』
デレてねーーーわ!
もう、今日はスーツ脱いで帰って寝よ…って、もう空が白み始めてんじゃねーか!
『希望が棚引く方へ、あなたを呼んでますね…黎明に』
詩人だな…って、どっかで聞いたことある気がするな、それ…って、
「鬼滅かよ! しかも 遊郭編のエンディング・ソングじゃねーか!」
『てへっ!』
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5歳になった俺は、神様からの便利グッズを開封し、あんな最強スーツを創り出したはいいけど…この星に敵なんているんだろうか?
そもそも、めっちゃ牧歌的なこの村には、絶対に敵なんていない。
たまに来る行商人のキャラバンに、どうみても人を3~4人は殺してるとしか思えない悪人顔の奴がいるんだが、話してみると結構いい人だったりしたし。
ってか、神様が言ってたファンタジー要素って少なくね?
地球の劣化コピーって言ってたけど、この星には魔法があるし、確かに文化とか文明とかは遅れてるのは間違いないけど、本当に劣化してるんだろうか?
剣と魔法のある世界ってのは理解したけど、本当にここってファンタジー世界?
俺、もしかして聞き間違えたんだろうか…心配になる。
いやいや、魔法があるってだけで、十分にファンタジーだ! そう思おう!
俺はまだ使えないけどさ…。
本当に俺ってチート持ちなんだろうか? めっちゃ不安だ…。
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さてさて、俺は最近、母さんから文字を習っている。
何を唐突にと思うかもしれないが、実は村ではそんなに読み書きは必要ない。
実際、四則演算が必要な場面もあまり無いんだ。
麦の袋が何袋…って、難しい計算しなくても数えれる程しかないしね。
行商人とだって基本は物々交換だ。
野山で狩った獣の素材とか農作物と、生活必需品を交換するだけ。
商人が決めたレートに対して多少は交渉もするが、行商人の機嫌を損ねて来なくなったら困るので、あくまでも多少しか出来ない。
行商人が大事って事は、つまりはこの村は田舎も田舎、超ド田舎って事だな。
それはさておき、今はミルシェちゃんと並んで、読み書きのお勉強中だ。
蝋石って知ってる? 石筆とかとう石って言ったらわかるかな?
鉱石なんだけど蝋みたいに柔らかいぬるっとした感触で、昔は駄菓子屋で良く売ってて、チョークと違って手に粉が付きにくくて硬くやつ。
昔はそれでよく道路に落書きなんかしたもんだ。
んで、それを使って平らで黒っぽい石で出来た石板に文字を書いて練習するんだ。
消すのは布でゴシゴシと、結構力いるけど何度も書いたり消したり出来るんで、こんな田舎ではこれが意外と便利なんだよね。
こいつを使って母さんから文字を教わりながら勉強中なんだけど……この星の書き文字って基本的にローマ字と同じように母音と子音の組み合わせだわ。
めちゃ簡単で、1時間ほどで全部覚えた。
数字もちょっと形が違うけど、ほぼアラビア数字。
なんとびっくり、ゼロの概念がちゃんとあった!
いやゼロって凄いんだぞ?
そもそも文化が進まないと、ゼロって意識しないからな。
何もないなら数えない。有るから1になる。
いや無いならゼロだろって思うでしょう?
でもこんな田舎だと、無い物は無いで終わっちゃう。
ゼロと無いは同じ意味なんだけど、生活上イコールで結ばれて無いんだよ。
って、熱く語ると長くなるので割愛します。
そんなこんなで、あっという間に覚えちゃった。
「トールちゃん天才よ!」「トールヴァルドさま、すっごーい!」
母さんは狂喜乱舞し、ミルシェちゃんに尊敬の目で見られたが……ちょっとだけ心が痛むのはなぜ?
「お母さん、お父さんの本を読んでもいい?」
こっそり母さんにおねだりしてみると、
「いいわよ。好きなのを読んでみなさい。わからない文字があれば聞いてね」
そう言いながら、母さんは流行り物だって行商人に言われて買った小説を読んでるけど、見た感じ結構薄い本だなぁ…タイトルは?
≪ギルドと国を追放された悪役令嬢は聖女となって、同じく王女を寝取って国外追放された勇者と共に魔法と持てる知識の全てを使って敵国を強くしまくり、追放された元の国にざまぁします。さらに最強生物スライムを使役してモンスター溢れるダンジョンで無双しまくり、ダンジョンのコアを手に入れ、そこで手にした錬金術が超覚醒しちゃったたので、ポーションを大量生産して自分たちを追放した国や冒険者をさらに嘲笑い復讐します。だけどやっぱり自宅でだらだらとのんびりした生活を送りたいんだけど、どうしたらいいんでしょうか?
第1巻≫
って、何だこの流行り物を詰め込んだお徳用パックみたいなタイトルはー!?
しかも第1巻? この薄い本に続きがあるのか!? ってか、こんなクッソ長げぇタイトルなんだったら、もちっとページ数増やせよ!
すでにタイトルで原稿用紙1枚は使ってんじゃねーか!
盛り込みすぎだろうが、ボケが! って、そう言えば紙ってめっちゃ高かったんだよな、この世界。
もしかしてこのタイトルって、薄い本のあら筋なのか?
紙の余白が勿体なくて、あら筋を詰め込んだとか?
あ、でも転移とか転生って言葉がどこにも書かれてないって事は、そういう思想がそもそも無いって事なのかな、この世界には。
版画っぽい印刷技術がある感じなのに、紙自体が高価らしいから本が薄いらしく、なんか色々と微妙で残念な感じがするなぁ。
そのせいでタイトルがあら筋になっちゃってる現状を、皆さんはどう思いますか?
こうなったら、将来の村の産業改革は第一弾は紙の大量生産からかな。
せめて前世の単行本ぐらいの読み応えのある厚みにないと、活字離れが加速する気がする…いや、活字離れは前世の話か。
いや、それでも儲かりそうなカホリがプンプンするし、やっぱ紙からだな。
あ、だから地球の劣化コピーなのか?
まぁ、楽しそうに母さんも読んでるみたいだから、これはこれで良しとするか。
とりま、母さんの許可も貰ったので、さっそく父さんの部屋にれっつらごー!
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さぁさぁ、やって来ました父さんの部屋(執務室?)!
実はこの部屋、父さんが見栄を張る為だけに、高価な本を大量に購入し本棚の隙間を埋めて出来た部屋。
なので、壁に設えてある本棚は、色々な本と書類で埋め尽くされているのだ。
意外に整理整頓されてるな? いや、マジで意外…。
父さんって、実は脱いだら凄いんです! ってな感じの人で、服とか着てたらわかんないけど、かなりのまっちょめん!
そんな父さんがちまちま本棚にきちんと書類を分別して並べてるとか…笑える。
うむ、しかしどの本もなかなかに面白そうだ…。
まだまだ子供な俺には、圧倒的にこの星の知識が足りないからな。
出来れば少しずつでも全ての本を読んで知識を蓄えたいところだ。
とはいえ、本日の目的は別にある!
そう、ファンタジーといえば、やっぱり定番は魔法だ!
魔法関連の本を探すのが、本日のメインイベントなのだよ!
【グーダイド王国史】【グーダイド王国 紋章一覧】【初めての徴税と納税】
ありゃ、やっぱりうちの父さんは村長か領主? いやいや代官あたりかな?
ってか俺がいるのは、グーダイド王国っていうんだ。
ふ~ん、まぁ今はどうでもいいや。
【農業と酪農】【戦略と戦術】【騎士と囚われの姫】【幸せになる名づけ】
えらくジャンルがバラバラだなあ……。さては本の大きさで並べたな?
【才能の伸ばし方】【足し算と引き算】【初めての魔法】【食用キノコ図鑑】
…ん!? あった! 魔法の本だ!
むむむ…、ちょっと上の方で手が届かないな。
父さんの椅子をよっこらせっと、んで上って取りましょうか。
本棚からズルッと引っ張り出して、さあいよいよご対面!
ほうほう、なかなか凝った皮表紙ですな。
ファンタジーを感じさせますね。
新たな知識というものはワクワクします!
これはかなり期待できるぞ!




