その21
「ありがとう、父さん、母さん。今度ゆっくり遊んでみるね」
「あら、直ぐに遊びたがると思ったのに。ネオくらいの子は皆、夢中になっているわよ」
「……」
そんな事より、ネオは早く刺繍の練習をしたかった。今日は新しい色でトッセコヨチ鳥の柄を刺そうと考えていた。
「…皆と遊んだ方が楽しいと思って」
「それはそうとネオ。神父様に聞いたわよ。アンタ、しばらく教会学校に行ってないんですって?
何で行ってないの?ダメじゃないの、ちゃんと勉強しないと」
「だって、つまらないんだもの」
小さい頃からずっと通っていて、もう新しい知識は得られない。知っていることを何度も聞かなければならないのは、ひどくつまらなかった。やりたいことに目覚めた今のネオには、あの教会の硬い椅子にじっと座っていることはとても耐えられなかった。
「何言ってるのっ!つまらないなんて!将来どうするつもり?きちんと教会学校へ行きなさい」
マニエはネオが勉強がつまらないからやりたくないという理由で、教会学校へ行ってないと思っているようだ。
「そうじゃなくて…」
「口答えしないの。子供のくせに」
「すまないね。あたしが畑の世話やら、家のことを手伝ってもらってるからね」
マニエとネオの間に、ボンジュが口を挟む。
「お義母さんもお義母さんです。私たちのいない間は、ネオのことをしっかり見てくれないと。将来きちんとした職業に就けなかったらどうするんです」
「いや、すまないね」
「母さん、僕、勉強するなら王都の魔法学院に行って勉強したい」
ネオはうっすらと頭に引っかかっていた事を口にしてみた。
「魔法学院??何を寝惚けたこと言ってるの。行ける訳ないでしょ!あそこは家柄が良い、お金持ちしか入学できないのよ。第一、魔法の才能が無いと。モックスプナタリオンの噛み跡、アンタにあるの?」
「それは…ないけど」
「変な夢は見ないで、現実を見てちょうだい。教会学校できちんと勉強して、商業都市で組合に就職する。それが一番安定した生活が出来るんだから」
「……」
マニエの考えは頑なだった。今は何を言っても無駄だろう。両親がまた出稼ぎで村を出るまでは言うことを聞かざるを得ない。このやり取りの間、トランは荷物の片付けをしていて、一切口を挟まなかった。ネオはそれが悲しかった。




