八の月・天照月
山に積もったように架かってった雲が段々薄くなり、手入れされた畑の畝のように形が変わっていく。空の青色も落ち着いたようにうっすらと彩度が下がり、日差しは「暑い」から「暖かい」と感じるようになった。これから暫く、からりと晴れた日が続くだろう。
村の共同畑では、麦が緑色の若い実を実らせて乾いた日差しを浴びていた。青々とした穂は陽の光の下で微かな黄金色を帯び、季節が変わり始めたことを告げている。
今日もネオは朝早くに目覚め、上機嫌で支度をする。午後には先週採ってきたツノオオミズの繭を紡ぐのをボンジュに教えてもらう予定だった。
午前中、刺繍の練習を一人でしようと、畑の世話や掃除を手早く済ませ、刺繍道具を取りに屋根裏に登った時だった。
「ただいま」
両親の声だ。ネオはドキリとする。両親が工業都市ガムシャーラから帰ってきた。
八の月・天照月の十五の日には、オーキー国一番の祭である国統一の日がある。
そうだ、国統一の日の前に帰ってくるんだった。
いつもなら二人が帰る日が待ち遠しくてソワソワするのに、他のことで頭が一杯になり、両親の帰宅をすっかり忘れていた。
「お帰り。マニエ、トラン」
ボンジュはいつも通りの様子で2人を出迎える。
「ただいま帰りました。お義母さん。あら?ネオは?」
「お帰りなさい、父さん、母さん」
屋根裏から降りて、ネオが両親の元へ向かう。
「お、ネオ。また大きくなったか」
父のトランが頭を撫でて、懐から箱を取り出し渡してきた。
「何?これ」
「遊戯札だよ。今、町で大人気なんだ」
ネオは箱をぐるりと眺めた。箱の裏に遊び方が書いてある。
六つの柄の一から十の数字が描かれた札と、一枚のモーベロン様札が入っている。皆に札を配り、同じ数字を二枚ずつ手札から捨てていき、最後にモーベロン様を持っていた人の勝ち!一人で遊ぶ時は、山札にしてよぉく混ぜて、モーベロン様の札が出るまで引き続ける!早ければ早い程、今日の運勢は良い。とのことであった。
箱を軽く揺らすとカタカタと音が鳴った。薄い木の板でできた札が入っているようだ。
何だろうこれは。
ネオは全く興味が湧かなかった。




