表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/32

その15

その時、閉じていた(まぶた)の向こうに光を感じた。

流れていた記憶が途切れ、その拍子で目を開けた。…エプロンのポケットが淡く輝いている。手を入れ探ると、光源はネオのくれたリボンだった。一体何事かと、手の平に乗せたリボンをよく見ようとした瞬間、リボンに(ほどこ)された刺繍が一際強く光った。


カッと(まばゆ)く輝いた光はワザワイノツカイに向かった。強すぎる光にボンジュは思わず目を(つむ)る。

何だ。何が起こっているのか分からない。


ァァッツアアアアアアアアアギャァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!


聞こえたのは凄まじい叫び声。先程の吠え声より大きなワザワイノツカイの叫びだった。相手に自身の優位を示す咆哮(ほうこう)ではない、恐れ(おのの)く悲痛な叫声(きょうせい)だった。

ビリビリと空気が震える。ボンジュは圧力に耐えるよう踏ん張った。


挿絵(By みてみん)


音が止み、ようやく光が収まって、そっと目を開ける。何故か、ワザワイノツカイの姿はそこになかった。逃げ去ったのかと思ったが、四方に通り跡は見当らない。代わりにあるのは、そこに居たことを示す木や草が踏み倒されてできた空間。そして地面に焼付いたように残る、タールのような黒い跡。

ワザワイノツカイは消えてしまった。存在した跡だけを残して、消えた。幻でもなく、立ち去ったのでもなく、消えて無くなってしまった。


足から力が抜け、ボンジュはその場にへたり込んだ。鼓動(こどう)が耳の奥からいやに大きく、ドクドクと聞こえる。


…生きている。


浅い息を体が繰り返す。下がった手からリボンがはらりと落ちた。落ちた感触で意識がリボンへ向く。汗が額からツッと流れた。


あの子には何も教えていない。何も知らない。…何も…知らない…はず


鼓動がさらに速くなった気がした。心臓は異常に動いているのに、体に全く力が入らない。

座り込んだまま、ボンジュはしばらく動けなかった。この時、ボンジュの力を取り上げ、心臓の動きを速めたのは、死を免れた安堵ではなく、ワザワイノツカイを消し飛ばす刺繍を刺したネオであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ