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モノクロの蝶  作者: Riviy
第十一章:モノクロ
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第百三十三ノ世界:思い描いた理想郷



「それは違うよ、神様」


その声がする方向にいたのは、村正に支えられた匡華だった。近くには夕顔がおり、創造神の証である粒子がポツポツと消えかけている。彼も彼で死が近いのだ。神様は匡華の言葉に怪訝そうに首を傾げた。


「貴方を殺したから、消滅きえるんじゃない。貴方ごと救うんだよ」


匡華の優しくも包み込むようなその言葉を神様は鼻で嘲笑った。何、言ってるんだ?こいつは。


「理想を、平和を求めて何が悪い?!やり直して何が悪い?!俺は創造神だ。繰り返しが赦される唯一の人材なんだよ!」

「違う。やり直しが効くのは、全てだよ!」


その言葉に神様は面食らったように上半身を少し反らした。そして、ようやく気づいた。いや、ずっと前から気づいていた。なのに、自分の理想を優先し、それに蓋をして来た。嗚呼、無様なのは俺か。


「…………理想を求めすぎて、道を踏み外したのは、俺か……はは」

「やっと気づいたか?それが、お前が犯した罪であり狂気。お前は、全ての()()()()()()()()を奪ったようなもんなんだ」


呟くように言い放った神様の言葉に夕顔が付け足すように言う。その言葉を最後に神様の動きは静かになった。「全ての世界が平和になれば良い」。叶う望みを持った理想。しかし、それを神の手では造り出せない。神が造り出せるのは、やり直しのチャンス、それだけなのだ。何処でさえ、平和を求めている。その平和のチャンスは、神様の世界への、理想への盲目的な感情で消えてしまった。

すると、神様は最後まで自分の行為を貫くつもりだろうか。逃れようと暴れ出す。しかし、それは全て無意味。そして、このあとだって。それを指摘するように神様は叫ぶ。


「それでも!もうこの世界全ては無意味さ。次世代の創造神がいない以上、チャンスも理想も平和も何もかもがない。救うだなんて無理なんだよ!」


神様が叫ぶ。だが、夕顔はニヤリと悪戯っ子のように微笑んだ。そして、隣にいる匡華の肩を叩いた。


「お前は次世代の創造神はいないから『創造』も『滅亡』も無理だと思ってるだろう?だがな、素質がある匡華こいついる」

()()()()()ってだけだろ?証である粒子がなけれ……」


そこで神様は気づく。匡華と村正を包むように交差した二色の小さな蝶の存在に。そして、その蝶には証である粒子が紛れ込んでいた。素質があるが、絶対、創造神になれるというわけではない。けれど、証がある以上、次世代は彼女だ。


「次世代の創造神は、決まり、救いを与えるのは決められた」


呟くように村正が言った。と、彼が持つ刀を雨のような、瑞々しい透明な煙が黒い光と共に包み込む。それらは匡華の二色の蝶とも調和していき、二人の姿を美しく、儚げに、可憐に、妖しく、妖艶にしていく。匡華は持っている小太刀を手放した。するとその小太刀に二色の蝶と粒子が舞い包み込んで行く。それは幻でもなければ、夢でもない。正真正銘の、現実。小太刀の姿は『キューブ』のように丸くて四角くで三角で、黒で白で、形が確定しておらず色もない。だがそれは次第に『キューブ』と云う名を持つに相応しいものへと形を変えて行く。軽く胸の前で手をかざす匡華の手中に出来上がったのは、かつて()()()()()()()()()()()箱、モノクロ色をした『キューブ』だった。本来色はモノクロではない。『キューブ』の所有権が次世代へと移った事により、その証拠のように色を変えたのだ。その久しぶりに見る姿に神様の動きが再び止まる。そこを逃すはずもなく。匡華の頭上に粒子が混ざった白と黒の無数の刃が浮かび上がる。匡華の手中で浮かんでいる『キューブ』が、緩やかに回転している。


と村正は匡華の手が震えていることに気づいた。それもそうだ。初めてのことであり、神を言い方によっては殺すのだから。その後の未来なんてわからないけれど、力を失い、死を目指すだけになった彼を葬るなんて恐ろしいものでしかないのかもしれない。ましてや相手は、創造神なのだから。キューブを支えるように出している匡華の片手に村正は自身の手を重ねた。それに匡華の体がビクリと動いたが、震えは止まった。匡華は横目に村正を見た。一人でなら、きっと無理だった気がする。さあ、神様を救いましょう。怨みに、負の感情に身を委ね、美しき理想を追い求めた結果、完全消滅を選んだ尊き創造神を。


匡華は背後に浮かぶ刃に意識を集中させた。すると無数の刃が神様に向かって進行を始める。神様が身を捩ってそれらをかわそうともがくが、捕らえている神様には到底無理だ。全ての刃が神様を貫き、貫いたところから粒子となって消えて行く。後方に勢いで軽く飛んで行く神様。消え行く神様のフードが外れた。その中から出て来たのはやはり少年の、幼いながらも全てを受け入れた表情で。そして、狐影にそっくりだった。神様は優しそうに、嬉しそうに笑いながら、消え行く体に、粒子に身を委ね、粒子となって消えた。一人の、呟きにも似た嗚咽が小さく響いていた。


神様、本当は良い人なんです…理想に目が眩んで先走っちゃった感じなだけで…!

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