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第一話 洗濯物落下、そして異世界行き

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 本日から新連載をスタートしますので、よろしくお願いします。


 本作は無断転載を題材としていますが、無断転載を擁護・許可する意図のものではありません。

 作者は現世でも、異世界でも無断転載を行ったことはありません。


 この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 日没が早くなってきた十月の上旬。

 俺は今日も仕事を終えて、アパートの三階の部屋に帰ってきた。


 今朝は炊飯器のスイッチを入れていなかった。

 今から炊けば八時前には炊き上がるだろう。



 その間に、俺はもう一つの“仕事”の成果の確認に入った。

 ノートPCを立ち上げて、『小説を書こう』のサイトにアクセスする。


 ——今日のPV数は、二件。


 あいかわらず、俺の作品はネット小説の山に埋もれている。

 一応二件のPVがあるとはいえ、たぶんbotによるアクセスだろう。


 せっかく書いた作品が生身の読者に届くことなく、AIの餌になっているのかと思うと、虚しく思えてくる。


 俺の書いた主人公は異世界で輝いている。

 なのに、その“親”である俺は現世でくすぶっている。

 もしも異世界の主人公が今の俺を見たら、どう思うだろうか?


 そう考えると、熱心に小説を書き続けている自分の姿に羞恥心すら覚えてきた。

 そして、この主人公たちに晴れやかな舞台を用意してやれない自分が不甲斐なかった。



 小説を書き始めたばかりのころは、誰かに届けばいい、と思っていた。

 商業化なんて視界にも入っていなかった。

 それでも、作品を書き続けるうちに「いつかは俺も」という想いばかりが育ち、その一方で自分の作品は“誰にも届かない”という皮肉な現実にぶつかっていた。



 ——それでも、俺は書くのが好きなんだ。


 だから、俺は今日もPCに向き合い、誰にも届かないであろう物語をキーボードに打ち込んでいた。


    ◇


 作業の手を止めて、スマホを手にして他の人の作品に目を向けてみる。

 そこにはPV数もUA数も、文字通り桁違いの作品が並んでいた。


 ——俺の二件なんて、本当に異世界の話だ。


 それらの作品も俺はしっかりと読んでいた。

 読者というよりも“参考”として。


 そのつもりが、どれも面白くて、引き込まれて、気づいたら結局自分も“読者”になっている。

 その結果、どこから参考にしていいのか、皆目見当もつかないのだった。


 「何やっているんだ……俺。」


 俺は、それら人気作をコピーしてテキストデータとしてスマホに保存した。

 明日の通勤電車で読む、俺の“教材”だ。


 「もう寝るか……。」


 俺はノートパソコンを閉じるとベッドに向かった。


 炊飯器と一緒に、洗濯機も回していたが、外に干すことは失念していた。


    ◇


 翌朝、俺は起きるとあわただしく出かける準備をしていた。


 スマホは充電を忘れて、洗濯物は夕べ干すのを忘れていたのだから、自業自得ではある。


 俺はスマホとモバイルバッテリーをひったくるように取ると、とりあえずスーツの内ポケットに入れた。


 その時、ベランダからさっき干した俺のワイシャツが風に飛んで下に落ちるのが見えた。


 「おいおい、ウソだろ………。」


 俺はベランダに出て、下の階を覗き込む。

 

 すると今度は、スーツの内ポケットから、スマホとモバイルバッテリーが落ちた。

 一階の芝生の上にそれらが落ちる鈍い音を耳にして、俺は朝から絶望的な気分になっていた。


   ◇


 早朝だが、非常事態だ。

 俺は一階に行き、呼び鈴を鳴らした。


 ——返事はない。


 三回ほど呼び鈴を鳴らしたが、やはり返事はなかった。


 俺はやむなく、アパートの裏手に回り、一階の庭を覗き込んだ。

 俺のシャツとスマホとモバイルバッテリーは確かにそこにあった。


 ——取りに行きたいけど、庭に入れば確実に不法侵入だ。


 どうしたものかと考えていたら、突然一階の部屋から大きな物音がした。


 ドンッと、重い家具か何かが倒れるような音だった。


 何事かと思ったが、同時にこれはチャンスだとも思った。

 本当に非常事態かもしれない、ということで庭に入る口実ができたのだから。


 俺は垣根を乗り越えて、庭に入った。

 シャツとスマホとモバイルバッテリーを回収する。

 ——幸い、壊れている様子はなかった。


 俺は、一応家の中に異常はないか見ておくべきかと思って、視界を巡らせようとした。


 その瞬間、それは起こった。



 俺の視界が突如まばゆい光に包まれたのちに、真っ白になったのだ。



 何が起こったのか分からないまま、茫然と立ち尽くしていると、足元の芝生の柔らかな感触が、次第に堅い感触に変わっていった。


 光が消えて視界が元に戻り、それが地面に敷き詰められた石畳の感触であることが分かった。


 ——辺りを見回すと、俺は中世ヨーロッパ風の街並みが広がる世界に降り立っていた。



 これが俺の異世界転移の始まりだった。


 第一話をお読みいただきありがとうございました。

 前作執筆時に、毎日のPV数に一喜一憂していたことや、「この作品がコミカライズ(もしくはアニメ化)されたら......」と妄想を繰り広げていた時の気持ちをぶつけたいと思い、本作を執筆しました。


 その前作、『異世界転生した俺、新たな仲間は前世のいじめっ子たちと同じ外見をしてました。~女神の祝福(スパルタ)の果てに、今度こそ自分の居場所を作り出す。~』も、キャラクターに愛着がわいている作品なので、読んでいただけたら幸いです。

 ※ この場に便乗して宣伝させてもらいました。


【前作はこちらから】

 https://ncode.syosetu.com/n5025ms/



 第二話は2026年10月17日17時10分公開予定です。


 この作品が面白いと思っていただけた方は是非、無断転載ではなく高評価・感想・ブックマーク等で応援していただけたらと思います。

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