79:飲まず食わずエルフ
(はぁ、シャーロットさんから色よい返事が聞けそうだったのに……間が悪いな……)
ちょっとがっかりしながらマキシが馬車を降りると、背が高くて色白な美しい男がいた。
(……エルフだな)
ドワーフ達がエルフをジッと睨んでいる。
(よくエルフとドワーフは犬猿の仲だというが、目の前の彼らもそうなのだろうか?)
「オマエは……」
ビージル翁がプルプルしている。
(ちょっ、喧嘩はやめてくれ……)
「アナタは……」
エルフもビージル翁を見てプルプルしている。
マキシはいつでも喧嘩をとめれるようにしようと体勢を整えた。
2人はお互いに指差し、
「「生きてたんか〜!!」」と笑う。
マキシは思わず近くのドワーフに尋ねると、この2人は大の仲良しだそうだ。
「「ドワッフアッファ〜」」
ずっと笑っている。楽しそうだけども。道の真ん中におられると馬車は身動きが出来ない。
困った近衛の1人が言った。
「私共は早く帰りたいのでちょっと避けてもらっていいですか?」
*******
マキシに案内され、エルフが馬車に乗り込んできた。
前世だとモデルみたいなスラっとした人ね。
精霊眼を持つエルフは精霊に好かれるんだけども、彼の周りにも小さな精霊が飛び回っている。
「こんにちは、美しいお嬢さん。
わたしはSランク冒険者のカールですよ、ヨロシクね」
バチーンとウインクしてくれた。
陽気なエルフね。
私のイメージする前世のイタリア人ってまさにこんな感じ。
陽気で女性を褒めてくれるの。
(因みにイタリア人に前世で会ったことは無い)
つい、ジッと見てしまったわ、いけない、いけない。
「はじめましてカールさん。私はシャーロットです。ヨロシクお願いします」
シマ社長とモモ先生はステルスモード。
カールさんを見てから2人の表情は引いている。
全然嫌いじゃないが、面倒くさい人で相手にしたくない時にこんな感じになる。
私は察すると2人から視線を外した。
「う〜ん?チカラのある精霊の気配がするんだけど気のせいかな?」
「そうですか?気のせいじゃないですかね?
それより、ビージル翁と仲が良しさんなんですか?
昔からのお知り合いとか?」
精霊の気配の話から反らしてみる。
「あぁ~、ビージルとは遠い昔に冒険者パーティーを組んでいたんだぁ」
「そうなんですね」
「うん、Sランクまでいったんだよ。だけど他のメンバーが年をとっちゃって引退しちゃってね……人間だったし。
元パーティーで生きてるのは、エルフのわたしとドワーフのビージルだけなのさ」
「カールさんはどうしてこんな辺鄙なところに?」
「ここを通るのはもう100年振りなんだが、村に立ち寄ろうと思ってね。温泉に入りついでに村の食堂でご飯を食べるつもりだったんだよ。山羊のシチューが絶品だったんだがなぁ。肉がホロホロとろけて……」
と、残念そうなカールさん。
「村で食べるつもりだったからさ、前日に飲み物も食べ物もぜぇ〜んぶ消費しちゃったんだよね。
マズかったなぁ。飲まず食わずでフラフラさ」
私が今まで会ったことのないタイプのエルフさんね。
行き当たりばったりで危なっかしそうだわ。
「なんで皆あの辺鄙な村にいたんだい?」
「あぁ、あの廃村に移住を検討していまして。今日は下見で」
「ほぅ、ほぅほぅほぅ!あの温泉イイだろぉ?
あの温泉はもっと評価されてほしいんだよねー」
「えぇ、私もそう思っています。これから王都に戻ったら皆に相談する予定なんですよ」
*******
【悶々とするマキシと応援する精霊】
シャーロットさんは、カールさんのような陽気なタイプが好みなのでしょうか?
私はどちらかというと、生真面目って言われることが多くて、楽しいタイプとはお世辞でも言えない。
2人の話が弾んでいるのを見るとちょっと凹んでしまいます……。
私の凹み具合に気が付いて下さったシマ様とモモ様が念話を飛ばしてくれました。
『マキシ、間が悪かったのねぇ~』
『シャーロットは多分マキシにイイ返事をするツモリだったと思うよ』
『シマ様、モモ様励まして下さりありがとうございます』
『マキシ、大丈夫、勝負は王都に帰ってからだよ!』




