78:廃村温泉村計画
「み、皆買うのかい?」
「買いたいです!」
「勿論」「これ以外のもあれば買います!」
シマ社長とモモ先生の木彫りの像を皆、口々に購入希望と声を上げる。
ビージル翁が驚いている。
モフモフ精霊グッズ化……。
そうだ、ゆくゆくはここを温泉村にするんだから、
温泉村のキャラクターになってもらうのはどうだろうか?これは後ほど2人に相談ね。
シマ社長とモモ先生は興味深そうにその木彫りの像を眺めている。カワイイ精霊の横にかわいい木彫りの像、かわいいが渋滞!皆目がキラキラしていた。
一先購入希望の話はお城に戻ってからということで落ち着いた。
ところで、そう、温泉村。
はじめはそんな気はなかったの。
何で温泉村構想になったのかというと、ココ、泉質がイイとこなのね。湯量も多いし。
頼れるモフモフ精霊達からの話しだと、
【旧トパーズ村温泉 泉質について】
含硫黄 - ナトリウム・カルシウム - 塩化物泉(硫化水素型)ですって。
成分が肌からしっかり入ってくるタイプのお湯で、神経痛や胃腸痛等多くの病気に効能があるの。
私、泉質のことはココで話が上がるまで考えてなかったわ。
打ち捨てられた廃村の温泉だから、誰も興味ないだろうし、独り占めしようと思っていたくらい。
でもね、みんなの体調を良くする効果があるならココが気軽に使えるといいのよね。
——あと、馬車の中で何気なくマキシから聞いたことにも重なる。
「この辺りに来ると静かね」
「そうですね。人口が減っているそうなので、そのせいかもしれません。この周辺の村々は農業以外生計を立てるものがないので、若者が都会に出てしまうそうですから」
ふ〜ん、そうなのね。大変だなぁ……とその時は思ったの。
もしここにお客さんが沢山来てくれたら、村の人達にも仕事が出来るわ!って。
それこそ前は、日帰り温泉施設をつくる野望があったのよ。
でもよくよく冷静になると元手がなかったのよ、私。
なので、諦めて廃村スローライフを送ることにしていたの。
だが、私には今、印税があるんです、カラオケの。
懐が温かいのです!イケるのですよ!
私がやれる所はやって(整地とか、木材の切り出しとか)、節約すればイケるのです!
昼食が終わると村の中を皆で歩く。
かなり昔はそれなりに人口があったそうで、村の広さだけはかなり広い。
建物が大丈夫そうなのは教会ぐらいで、後は大抵ガタがきている。
温泉施設を作るなら立て直しが必要だ。
時間がかかかりそうね。
肝心の温泉自体はかなりの量が湧き出ていて、湖の様になっていた。溢れた分はというと近くの川に流れ込んでいる。
村の奥は深い森、さっき私達が整地した道の反対側には畑。さらに奥にはまた森が広がっている。
整地した道の先には山があり、山を越えた先には海があるそう。大きな山ではないので頑張れば海と山の両方を楽しめるポテンシャルを秘めた廃村だ。
今日はあらかた村や周辺を見て記録。今後についてはお城で協議する。
予定をこなした私達は帰宅の途についたのだった。
——馬車の中で——
「マキシ、私現場と泉質を見て考えを変えたわ。
ここを温泉村にしたいの。
そうすればこの近くの村々の人達にも仕事が出来るわ。
それに泉質がイイの。これで身体が癒される人もいる筈なの。私だけが恩恵を受けるダケじゃなく、他の誰かにも恩恵を受けて欲しくて……。
元々話していたことから外れちゃうけど、相談に乗ってくれる?」
「私はいつだってシャーロットさんの味方ですよ。
心配しないで。城に帰ったら話し合いましょう」
マキシの優しい言葉に安心する。
「良かった、ありがとう。
言うことをコロコロ変えて振り回してしまったんじゃないかと、ちょっと心配してたの」
「シャーロットさんはノリで決めてそうに見えてちゃんとしていますし、周りのことを考えて最適な方法を選んでいるのが分かっているので大丈夫です。
さっきも言ったでしょう?
いつだって貴方の味方だって。
……例えば、初めてフリーデル王国の夜会でお会いした淑女としての貴方も、ルビィ村でお会いした時の破天荒な貴方にも。勿論、今の貴方にも味方になります」
イタズラっぽく微笑みながら煽られたぁ?
「へっ?!もう、破天荒はないでしょう?」
私が異議を申し立てると、
「破天荒だろ?」
「破天荒なのぅ~。マキシを逃したら、シャーロットは破天荒キャラを封印して男を騙して結婚相手を探すことになるのぅ~」
「そう、マキシは素を出せるし、超優良物件!」
モフモフ精霊達に違う方向からやり込められる。
ぐぅの音も出ずに私が黙ってしまうと、
「そうですよ、超優良物件みたいですから今のうちに手に入れて下さいね」
マキシの綺麗な瞳と、モフモフ精霊達のキラキラした瞳に見つめられて私は……私は……どうしたらいいの?
顔はきっと今赤いわ。ほおが熱い。
分かってるよ、分かってる。
マキシに返事をしなきゃ。
「えっと、じゃあ、」
ガタガタガタン
急に馬車が止まる。なにがあったの?
「大丈夫か?返事をしなさい!」
なにかあったようね。
「助けてくだあぁ~い……」
助けを呼ぶ声がする。私は馬車を降りようと立ち上がるが、マキシが制止を促す。
「私が行きますからシャーロットさんは待っていて下さいね」




