63:カラオケ魔道具とあの歌声
王族のプライベートの音楽室。
今日の魔道具説明会にはケイトリン皇女、フェリックス皇太子、マキシと魔道具の開発者らしき人と、私とシマ社長とモモ先生。
「お待たせ致しました。
ワタクシは魔道具課主任のカールです。宜しくお願いします。
今回、カラオケ魔道具を作るという魅力的なお話を頂き、この度完成の日の目をみました。
是非新しい娯楽をお楽しみ下さい」
癖っ毛の小麦色の髪がフワフワしている。ちょっと興奮気味のようで、手がバタバタしとる。
繊細そうなイケメンがそんな感じだとなんか微笑ましいですな。
「カールはね、こう見えてオタカール公爵家の嫡男なんだ。弟に領地のことを殆ど任せて魔道具作りをしている魔道具バカでね」
ニコッとマキシが言うと、カール主任はバシバシマキシの肩を叩いた。
「失礼ですなぁ〜、マキシ様?」
マキシとは仲の良い幼馴染だそうだ。
幼馴染かぁ、羨ましい。私にもいたんだけど、聖女活動の激化で交流が途絶えてしまったんだよ。
よぉ〜し、アダルベルトでの生活で仲の良い茶飲み友達を作るわ!
カール主任は魔道具のセットを素早く終わらせる。
カラオケの魔道具は概ね私の説明通りの作りだ。
歌詞が映る画面(カラオケ映像までは難しかったらしい)と音が鳴るところ、楽曲が載っている冊子、楽曲を選択するデンモクみたいな魔道具。
「実際使っているところを見て頂いた方が宜しいかと思いますので僭越ながら歌わせて頂きます」
歌は歌劇:薔薇の皇太子から”なんと麗しいあのお方”だそうだ。カール主任の歌声に注目が集まる……。
「ほげぇ〜♪」
「「「!!」」」
……天は二物を与えなかった……。ジャイアン……。
カール主任アダルベルトのジャイアンだわ。
前世で見た歌ヘタ芸人日本一に参加したらブッチギリ1位を穫れる逸材だわ。
私の肩のシマ社長とモモ先生はプルプルしながら耳を抑えている。モフモフもペタッてなってる。
マキシとケイトリン皇女、フェリックス皇太子は固まっていた。きっと知らなかったんだろうな。
だってカール主任、見た目歌上手そうなんだよね。
まぁ、歌なんてそんなに歌う機会なかっただろうし、知らなかったのはしょうがない。
ただこの楽曲をカール主任が歌い終わるのを待つのみ。うっ……苦行。
……それから苦行は5分間続いた。カール主任は気持ちよく歌いきっていたんだけど、
「はぁ~、終わっちゃった。まだまだ歌い足らないなぁ。あと1曲いれようかな」と口走る。
「「「!!」」」
その瞬間、ケイトリン皇女、フェリックス皇太子、マキシ、私とシマ社長とモモ先生の心が一つになった!
「カール、凄いもの作ったな、お茶を飲もうか」とマキシがテーブルにつかそうとし、
「頑張ったカール主任の代わりに私が後は説明しますね」とフェリックス皇太子、
「ハハ、大丈夫ですよ」とカール主任が言えば、
「ウソ、目の下にクマが出来ているわ!これは座ってゆっくりしなきゃ」とすかさずケイトリン皇女が言う。
「皇女の優しさはありがたいんですが、魔道具課じゃ新製品開発の時なんて2徹くらいザラですから」
と、カール主任が笑って立ち上がったが、
「いえ、聖女から見ても大分心配な状態ですよ。どうか寝てください。“スリープ”」
シマ社長とモモ先生はそこら辺の精霊達にも手伝ってもらって、ゆっくりソファへ眠ったカール主任を寝転した。
私達は顔を見合わせ無言のまま頷いた。
部屋の外の近衛の方々にお願いし、カール主任は客間に運ばれていく。
—強制退場させちゃったわ。
「……私もこの魔道具使ったことがあるけど、盛り上がったよ、楽しかった。カール主任がいなかったからかもしれないが」
フェリックス皇太子が遠い目で言う。
例えば気心しれたマキシとカール主任2人きりの時なら音痴……音痴のことは言えると思うのよ。
ただこのメンツでそれは指摘しにくかった。
「笑ってしまったら失礼だと思って……キツかったわ」
正直なケイトリン皇女。
王族の3人組は頷く。歌の間表情を変えなかったのは流石だったわ。
私は笑わない様に頬の肉を甘噛しながら俯いていましたから。
それから、ドコか笑いを耐えることで疲れ切った私達は、午後に仕切り直しをすることにして一度解散したのです……。




