59:ニセ婚約者と廃村の話
「廃村のことなら心配いらないよ。
幾つか選りすぐりの廃村があるから、またフェリに確認するといい」
微笑みの皇帝の口から、“選りすぐりの廃村”という、前世も今世もいまだ聞いたことのないパワーワードが出てくる。
……フフ、ありがたいことです。
廃村に住まわせて頂く代わりにキチンと整備しますよ!
「ありがとうございます。廃村リストを見るのが楽しみです」
♢♢♢♢♢♢♢
その後は和やかに会話が進んだんだけど……。
「冬のパーティーのことなんだが、そこで2人の婚約を発表する予定だ」
婚約……そうだった、フリーデル王国にバレそうになったら、連れ戻されないようにマキシに偽の婚約者になってもらう予定だったのだ。
「フリーデルにシャーロット嬢の居場所がバレたのか?」
「ルビィ村の浄化」
「アレが出来るのはシャーロット嬢だけです。
アレほど選りすぐりの魔導師達が束になって浄化に励んでも進まなかったのです。
そのせいで噂にあがっているようなのです。
今はまだ探りを入れている段階のようですが、時間の問題かと」
まさか自ら墓穴を掘りに行ったとは……。
でも、あのままに出来なかったのよね……。
「浄化必要があるからな。瘴気は私がコントロールしていたから魔獣なぞ生まれなかったが。
私というストッパーがいなくなったらあの廃村は魔獣の巣窟となっていた筈だ」
マキシの言う通り。
そうなればもう、あの辺りに採取に行くことはそれなり以上の冒険者じゃないと行けなくなるだろう。
「そうですよね……まぁ、後はコチラで上手くやりますので、大船に乗ったおつもりで」
フェリックス皇太子が微笑んだ。
「当日はマキシの復活と、シャーロット嬢との婚約発表も兼ねているからな。
それでマキシは“亜神”様になったと聞いたんだが?
何処まで開示するべきか、意見をくれまいか?」
「私は兄上の凄さを国中に公布したいですね。
きっと、アダルベルト中、亜神の存在に元気になるでしょう」
兄贔屓のフェリックス皇太子はキラキラお目目で熱弁を振るう。
「あら、私もお兄様が素敵だと皆に自慢したいですわ」
と、ケイトリン皇女。
そうね、亜神がいるということは争い事の抑止力になるのよね。そういう意味なら開示は良い事だとは思う。
問題は亜神と言って、信じてもらえるのかな?
それと、亜神だから何でも出来るって色々面倒事を押し付けられやしないだろうか?
私が仕事を押し付けられたクチだから、心配してしまう。
「必要なら、僕らがマクシミリアン皇子の正統性を証明しようか?」
私の両肩に乗っているシマ社長とモモ先生が皆の前に姿を現した。
「シマ様、モモ様!……ありがとうございます。
皆、シャーロット嬢の両肩にいらっしゃるのが光の高位精霊、シマ社長様とモモ先生様です。
お二人にも色々助けて頂いたんですよ」
マキシの紹介に、シマ社長とモモ先生は胸を張った。
モフッとしている。
「まぁ!!かわいら……素敵な御姿ですわ」
「ずっと見つめていたいわね……」
ケイトリン皇女も皇妃様もキラキラお目目になってしまった。
シマ社長とモモ先生の姿の可愛さにヤラれない人類はいないわよね。
皇帝も……両手で口を抑えている。
「かわいい……」
皇帝の口から小さく零れた呟きを私は聞き漏らさなかったぞ。




