57:歓迎会よりカラオケ魔導具
私達はアダルベルト皇国に馬車で向かっている。
マキシが言ってた通り、王家の馬車の乗り心地は至福でした。
お尻が痛くなぁい!
乗合馬車は私のソフトな尻にダメージを与え、尻が2つに割れるかと危機を感じた。
あっ、元から割れてたか。
そんなことを思い出しつつ。
アダルベルト皇国に入って3日目。
ついに首都に着いた。
流石大国!!街並みは整っていて美しい。
教科書のイラストで見た平城京だったかしら?
あの碁盤の目の街並みのように区画が整備されていて、建物の高さも一定に統一されている。
聳え立つ王城は一際大きく、白く美しい。
えーと、これから私は王城へ行きまっす。
歓迎会して下さるんですって。
ワーイ、ウレシイナ……
はぁ、絶対気を遣いそう……きゅうっと萎れる私の頭をシマ社長とモモ先生が優しく撫でる。
「大丈夫だよ、シャーロット、取って食ったりしないって」
そこへマキシ参戦!
「シャーロットさん、食べたりしませんから安心して下さい!!」
キラキラしく安心をアピールされる。いや、そうじゃなくてだね……
◇◇◇◇◇◇◇
それから程なくして王城に着いちゃった。
王族の居住空間へお邪魔します。
うぅ、やっぱり凄い。
廊下は先が見えんし、その廊下には有名な巨匠の絵画がズラリと飾ってある。
さり気なく並べられた調度品も、国宝の匠が作ったオブジェとかだし。
絨毯はフリーデル王国王城の約2倍フカフカ(シャーロット調べ)だし、何より足が疲れない!!
コイツぁ〜いい絨毯だ、私の新居(廃村)に敷きたい!!How much!?
だが、今は聞けない。聞ける空気じゃない。
分かってます、今現実逃避しました。
猫を10匹くらい被る勢いで今日はいないと。
このままプライベートの歓迎会なのよ……。
今まではフリーデル王国の国王様王妃様や第2王子と一緒に(私はモブ状態で)、ご挨拶だったからそこまでじゃなかったけど、私とマキシがメインの歓迎会じゃ緊張の度合いも違う。
こんなに緊張してたら、同じ手と足を同時に出して歩きそう……カクカクカクカク……
あぁ、緊張しぃの私ならやりそう!!
掌に“人”って書いて飲み込むしかないわ。
いや、歩きながら書くの難し!!
代わりにシマ社長とモモ先生に書いてもらうか!!
混乱気味の私は2人に目配せして念話を送る。
—私の掌に人って書いて、飲み込むから!—
—何それ、新手の黒魔術?変なモノにハマっちゃダメだよ。猫神様が心配するだろ?—
—違うよ、緊張してる時のおまじないだよ—
—ねぇ~、それって、キュアで治らないのぅ?
緊張、状態異常みたいな感じじゃないのぅ?
おまじないの方がよく効くのぅ~?—
あ、キュア……そうですね。
私はキュアをコソッと自分にかける。
バクバクバクバクいっていた鼓動がいつものリズムに戻った。
—シャーロット、ヤバい時には僕らに念話を送るんだよ—
シマ社長の優しさが身に沁みる。
前世合わせてピー歳だけどコレばっかりは慣れないんだわ。
そうしていると、ある扉の前に着いた。
お付きの人が扉を開けようとした刹那、廊下の反対側からフェリックス皇太子がやって来た。
「お久しぶりです、シャーロット聖女。
この前ご依頼頂きましたカラオケという魔道具出来ましたよ!私も試してみましたが、実に面白いですね、あれは、」
「こらこら、フェリックス、早く入らないと扉の向こうで父上母上が待ちくたびれてしまうぞ」
マキシが苦笑しながらフェリックス皇太子の肩を叩く。
「あ、そうでした、つい」
そんな美しい兄弟のやり取りより、カラオケ!!
遂に出来たとは!!
早くカラオケの魔道具みたい、みたい!!
目の前の歓迎会のことは頭から消え去り、カラオケに思考を持ってかれる私だ。




