55:カタチだけの婚約
さぁ、先ずはパック村の皆さんの解放だ。
私達は砦の屋上を目指す。
砦の内部には人は居らず、最上階に入っても誰とも会わない。
皆ずっと屋上…外で過ごしていたんだろうか?
体壊していないといいけど。
ガタァァン
屋上への鉄製扉はアッサリ開いた。
見渡す限り虚無顔ばかり。皆んな充分な休息と食料が不足していると思われ、目も窪んでヨレヨレ・ガリガリになっている。痛々しいよ…。クソっ邪神の欠片めぇ!
「私が浄化します」
マキシがズイッと前に出ると彼から美しい金色の光が放たれ、ついっと辺りが光に包まれたかと思ったら程なく光が消えた。
倒れちゃう!と思った瞬間、マキシが手を上げるとパック村の方々の体がフワッと浮いてそれからゆっくり床に寝かされる。
そうだよね、浮かした後優しく寝かせてあげられれば1人1人浄化しなくていいんだもん。
「流石だね、マキシ!凄いよ!」
「お褒め頂き有難う御座います」
ニコッとイタズラっぽく笑うマキシ。
ネコっとマキシの肩の導師トラが私を覗きこんだ。
「そろそろシャーロットの肩に乗りたいにゃ〜」
「フフッ、どうぞどうぞ」
モフッとした感触を頬に感じでテンションが上がる。
視線の端にいたブラン辺境伯様とエヴァンスギルド長は何やら協議中。時折難しい顔をしていたけど、何とか纏まったようでこちらに顔を向けた。
「砦の方はこのまま冒険者ギルド主導で対応することになった。パック村の者が気が付いたら先ずは避難所にいる家族に会わせる。数日間体調を診て移動できる体力が戻ったらドハルバティ領へ連れて行くつもりだ」
「シャーロット様はあの秘密の抜け道から我が家を経由してルビィ村へ向かわれた方が良いでしょう。さっきの男はエヴァンスが監視しますからご心配なく」
それから私達がルビィ村についたのはその日の夕方だった。
◇◇◇◇◇◇◇
「兄上の勇姿が見れず残念でした……」
フェリックス皇太子は兄が大好きなのだと知ってたけど、中々のブラコン臭。や、独占欲があるわけじゃないし、ちゃんと周りが見えていらっしゃるからソフトブラコン?ってことかしら?
確かにイケメンで立ち居振る舞いが優雅で優しくて強いとか憧れちゃうよね、マキシ。
「…フリーデル王国の関係者と覚しき人物が砦にいたとお聞きしましたが、こうなると余り時間がないですね、兄上」
「そうだな」
「シャーロット様、兄上と婚約しませんか?」
「はぁ?!こ、ここ、婚約?!」
「フェリックス?」
「そう、カタチだけでもいいから婚約するんです。幸い兄上には今は婚約者はいませんし、当時の婚約者候補だった方々は軒並みご結婚済ですし」
「いや、カタチだけでもって何で?…どうしてでしょうか?」
「フリーデル王国の奴らに見つかっている可能性が高いのですよね?
第2王子との婚約破棄は無効になったから、再度婚約を結んでもらうなどと言われたら?
戻ることを強制されかねなくないですか?聞けばジョシュア様の暴走でしょ?ジョシュア様が勘違いしてしまっただけで、婚約破棄は王命ではない、とかゴネられそうですよね。
ですが、この兄上と婚約したとなれば話は変わります。王族との婚約となれば相手方もを強く出れませんから」
ニッコリと皇太子スマイル繰り出されちまった。
「いや、その、私としては婚約者のフリをして頂けるのは大変有り難いことです。しかしながらマクシミリアン様にご迷惑をかけてしまいますし…何よりマクシミリアン様にメリット無いじゃないですか!」
「私は迷惑とは少しも思いませんよ。シャーロットさんの力になることが出来るのでしたら喜んで婚約者のフリを務めさせて頂きます」
「シャーロット、マキシにお願いするべきだよぅ〜」
モモ先生が上目遣いでこちらを見る。
「すみません、じゃあ、お願い、します……」
「はい!シャーロットさん、こちらこそ宜しくお願いしますね」
……フリーデル王国にはもう戻りたくない!
きっとあのままだったら前世の二の舞、過労死ルート第2弾よ!多彩な過労死ルートを経験したい訳じゃないわ!
絶対わたしゃあ、逃げ切ってやるわ!
パック村の皆さんの件も落ち着いていくだろうし、後はエヴァンスギルド長が対応されるし私の出る幕は終わっている。
なる早でザイル王国を出てアダルベルト皇国へ行くべきだ。
フェリックス皇太子はキラキラの笑顔をコチラに向ける。
「婚約の件はアダルベルトに着いてから改めて決めましょう。明日朝イチでここを出ましょうね、未来のお義姉さま」




