54:砦の解放へと忘れてた面倒事②
「ロシナンテと名乗る者はいないか?見た者はいないか?」
かなり大きな声みたいで砦内部にいる私の耳に入ってきた。
ロシナンテ…私の偽名か?何で探されているのかしら?もしかして重傷者がいるの?!
私が思わず外に出るところを探そうとすると、エヴァンスギルド長が立ちはだかった。砦の天井は3メートル位?、横幅は2メートル位?だ。だけどギルド長が手を広げてるからいっぱいいっぱい、です。
うん、知ってた。ギルド長デッカイ!通れないね、こりゃ。すごすご引き下がる私。
「聖女シャーロット。何か怪しい。俺たちがここを出る時、冒険者達は遠巻きに砦を囲んでいるだけで戦闘はしていない。
そういう指示も出していたからな。それを証拠に誰か知らん男の声だけがよく響いているだろう?」
「そうですね」
「と、なると誰だ、アイツは?薬師ギルドはこっちには来ていないし、冒険者か?ポーションは山程あるのにわざわざロシナンテを探すのも不自然だ」
私は反射的にマキシを見た。マキシは頷く。
「フリーデル王国の関係者の可能性がありますね。シャーロットさんは目眩ましのコートを着ていますが念の為1人にはならないで下さいね」
「ロシナンテと名乗る者はいないか?見た者はいないか?有益な情報なら金一封渡す。本人を連れてきたら更に出す!」
あぁ~、確定。この人フリーデル王国の関係者ね。
捜索依頼を掲示していない今なら安全だと思ってたのに……
「恐らく依頼を出したついでに滞在の可能性が高い各所へ関係者を派遣したんでしょうかね。ここは国境の街ですし。街の方ではシャーロット様のお姿を見られていますし、目撃情報を得たでしょう。直近では砦派遣の冒険者を治療して下さいましたし、ロシナンテはシャーロット様ではないかと疑っているのは間違いないかと」
ため息をつくブラン辺境伯様。あぁ、面倒くさい!よりによって今なのか!つくづく厄介者だよ、フリーデル王国!
「全く、許可なく部外者が作戦中の場所にノコノコやってくるなんて非常識だ!」
エヴァンスギルド長がわしわし頭を掻く。
「…一先ず私のことは置いておいて、砦のパック村の皆さんをどうにかしましょう…」
見つかりたくないよぅ!心に灰色のインクが染みていく気がした。手先から体が冷たくなっていく。不意に右手を取られた、マキシだ。
「心配しないで下さい。アダルベルト皇国は貴方を守る為の準備は万端です」
綺麗な宝石みたいな瞳が真っ直ぐ私を見つめる。
マキシの大きな手の温かさが冷えた私の手を温める。
そうだね、きっとマキシなら安全にアダルベルトへ連れて行ってくれるはずだ。




