48:1人目の邪神の欠片の持ち主
幸い、辺境伯様の息子…ヴィクトルは未だ彼の部屋に居た。
「ヴィクトル坊ちゃま、ピクニックの準備が出来ましたよ」
メイドが声を掛けるのが扉の前で聞こえた。
バアァン
辺境伯様が勢い良く扉を開いた。邪気が漂っている。
「ヴィクトル!」
ヴィクトル様は7〜8歳くらいだろうか?
ちょっと虚無ってる?ヤバかった、間に合ったよ。
メイドさん何処に連れて行くつもりだったの?
そのメイドさんも虚無ってる。
マキシの肩に乗っていた導師トラが片手を上げる。「マクシミリアン君、浄化をしてもらおうか。先ずは元凶のメイドからだよ。君はもう亜神だから、詠唱も何も要らない。ただ、こうしようとイメージするだけで出来るから。大丈夫にゃ、やってみるにゃん」
マキシが頷き片手を上げた。眩い光が掌から放たれるとメイドさんを包み込み、消えた。
途端に耳に付いていたピアスの石が崩れ去り消える。と、メイドさんは膝から崩れ落ちた。
「にゃ!素晴らしい、上手くいったよマクシミリアン君。お次はヴィクトル君?だね。やってみてよ」
マキシが再び頷き片手を上げた。眩い光が掌から放たれるとヴィクトル様を包み込み、消えた。
「あれ、ボク…」
瞳に光が戻ったヴィクトル様がボンヤリ小首を傾げる。
「ヴィクトル良かった!」
光の速さでムギュっと辺境伯様が力強く抱きしめる。ちょっと痛そうです。ヴィクトル様が辺境伯様の腕をペシペシしてる。
ギブだよ、ギブアップ!
「おい、テオ!ヴィクが潰れるぞ!」
エヴァンスギルド長が叫ぶ。
「あ、あぁ!!すまない、ヴィクトル」
「父上、危なく事切れるんじゃないかと思いました…」
腕を擦り擦り涙目で辺境伯様を見つめるヴィクトル様。サラッサラの茶色の髪に綺麗な緑色の瞳。
可愛らしいお顔。私がもしショタラブ属性だったら間違いなくハマっただろう。
「何事ですの?!」
そこへヴィクトル様に良く似た綺麗な女性が驚いた様子で現れた。格好から外出先から帰って来たばかりのようだ。出で立ちから多分辺境伯夫人ね。
「はじめまして、辺境伯夫人?私はマクシミリアン=フォン=アダルベルト。急用でこちらに伺った次第です。詳しいお話は後程辺境伯からお話があると思います。それまでお待ち頂けますか?」
「はじめまして、殿下。私はテオドール=ド=ブラン辺境伯の妻、オレリアと申します」
一瞬ぎょっとした表情を出されたけど、そこは辺境伯夫人、にこやかな表情に切り替えて卒なくカーテシーをされた。さすがね。
「オレリア、今この場は私に任せてくれ。また後でな」
そういうと夫人を優雅に部屋から連れ出し扉を閉める辺境伯様。
有無を言わさぬマキシと辺境伯様の連携に、きっとこれまでもこんな場面を上手く捌いてきたのだろうと感じる。歴戦の勇者感!
一方、ヴィクトル様は状況が掴めずキョトンとしておられる。
「ヴィク、また父上から話があるからそれまで待っとけ」
「分かりました。でも、モアおじさま、コリンヌはどうしたんですか?心配です。」
コリンヌ…世話係のメイドさんは、エヴァンスギルド長がソファに寝かせ済み。
「直に目がさめるさ。目が覚めたらコリンヌも含めて話しをするから。なに、心配することはないからそんな顔するな」
エヴァンスギルド長がヴィクトル様の頭をガシガシ撫でる。メイドさんが心配で八の字眉のヴィクトル様が可愛らしい。
私は念の為ヴィクトル様とコリンヌさんにホーリー・アーマーを掛けた。
「夫人に何か付与とかしなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫、ガチガチの防御の腕輪をメイドを含めつけているからな」
「さて、執務室に戻ろう。まだ案件があるからな。」
◇◇◇◇◇◇◇
「殿下、浄化とフォローをして頂き有難う御座いました!」
執務室に入るやいなや辺境伯様がマキシに深々と頭を下げる。
マキシは手をヒラヒラさせながら、
「大したことじゃないよ。浄化も今後の為だったし。実践の場を与えてくれて感謝してるよ」
「にゃ、じゃ、次の人物にゃ。其奴はね……」




