47:辺境伯邸へ
邪神の欠片の持ち主。
砦付近には邪神の欠片の禍々しいオーラを持つ者はいなかった。
やはり隠し通路で砦に出入りしていると思われる。
そう、3人は言っていた。
シマ社長とモモ先生は砦周辺の精霊達に協力を仰いでいる。
あとは…辺境伯邸。砦に繋がる隠し通路の出入り口の可能性が最も高い所だ。行ってみるしかない。
邪神の欠片の持ち主が誰か分からない限りは、村人を先に浄化するのは得策ではないと意見が纏まった為私達は辺境伯邸に急いだ。
◇◇◇◇◇◇◇
辺境伯邸に着くとシマ社長とモモ先生が早速周辺の精霊達に協力を仰いでいた。
精霊の小さな光達は情報収集に行ったのだろうか?何処かに行ってしまった。
私はぼっーとその光景を見た後立ち尽くす。
「シャーロットさん、どうしましたか?心配なら私の側を離れないで下さいね」
マキシ!心配そうな顔で私を覗き込まないでいただけませんかね?顔が近いわ!
私のような喪女街道を突っ走っている剛の者ではないと貴方の国宝級の顔面とさっきの囁きで一発K.Oされるわ。そこの所気を付けて!
辺境伯様の執務室に私達は入った。落ち着いた雰囲気の空間に珍しいインテリア?魔導具?みたいなものが置いてある。辺境伯様が冒険者時代に集めた物だったりして、ね。
皆が部屋に入るとすかさずマキシが結界と防音を張った。誰が邪神の欠片を持ってるか分からないもんね。
早速作戦会議かな?
と、そこに眩い光が現れ、2本脚で立った猫の姿が出てきた。
「やぁ、久しぶり、シャーロット!」
「導師トラ様?!」
導師がにこやかに手をあげる。ピンクの肉球がかわいい。
だけど、どう見てもトラ様しか来ていない様子。大丈夫なの?他の導師達に怒られない?『抜け駆け!』って…。それで前回立ち寄ってくれたのに会えなかったって聞いたよ?
「他の者達も、やぁ!」
相変わらずマイペースだが、そこがいいところ。
はじめましての辺境伯様とギルド長は高位の存在の出現に驚いているようだ。
(導師様とは…。高位の存在の方々は可愛らしいと決まっているのか?!)
(猫のお姿。猫神様の眷属と言われる導師様か。可愛らしい!)
「導師、どうされたんですのぅ〜?他の導師達に怒られない?」
「にゃ。今回は大丈夫。ジャンケンで勝利を手に入れたにゃ。仕事をチャチャッと終わらせたらシャーロットと遊ぶにゃ〜。…さて、仕事の話ね。実はね、ここ2〜3年邪神の欠片絡みの問題が相次いでいてね、てんてこ舞いなんだ。猫神様も眷属’sも総動員で対処してるんだけどね」
チラリとマキシを導師は見つめる。
「対処が出来る所にはそのまま任せてるんだけど、何分リソース不足でね。ここにある邪神の欠片の浄化をマクシミリアン君に手伝って貰おうと思ってね」
マキシは目を見開いたが、頷くと、
「是非お手伝いさせて下さい。今後の勉強になります」
笑顔を見せた。爽やかだな。
「欠片は沢山あるからね、いつ、また欠片の持ち主に会うか分からないから備えておくのはいいことだよ。にゃ」
同意の『にゃ』がかわいい。
辺境伯様とギルド長は口に手を当てている。同じポーズだ。やっぱり高位の存在ってあそこまで驚かせるものなんだね。慣れてしまった自分が怖いわ、気を付けて敬意を払わなくちゃね。
「ところで、導師は誰が邪神の欠片を持ってるか知っているんですか?」
「にゃ。建物内に2人いるよ。はぁ…本当、邪神って悪知恵が働くよね。多分核が砕かれることまで予想して自ら細かく遠くに飛び散りやがったし。推定10億個だよ、欠片。おかげ様でずーっと働き詰めなんですけど!」
イカ耳になりながら手を握りしめる導師。尻尾もびたーん、びたーんさせている。
「しかもあの欠片、操ったりしてる時は漏れ出した邪神の魔力で場所を辿ることが出来るけど、休眠したり操ってない時は見つけられない迷惑な仕様なんだ。許せないんだに゙ゃぁー!」
邪神の嫌がらせスキルが神レベル(神だけど)過ぎて震える。皆もきっと同じ気持ち、虚無ってる顔だ。
特に欠片に迷惑を掛けられたマキシと辺境伯様は虚無→苦虫を噛み潰したような顔にチェンジしている。
ご、ご愁傷様です。
「ときに導師、欠片を持ってる2人って誰ですか?」
「おぅ、シマ。1人はな、欠片のピアスを付けたメイドだ。テオドール君の息子の世話係みたいだぞ」
辺境伯様の顔が途端に青ざめる。
そこへ沢山の光がシマ社長とモモ先生の元にやってきた。情報収集してくれた精霊達だ。
「……☆」「☆」「……」
「有難う〜助かったのぅ〜」
やがて光達が何処かに行ってしまう。
「例のメイド、今テオドール君の息子にピクニックに行こうって誘ってるみたいだぞ」
「早く行こう!」
辺境伯様が弾けるように執務室を出て走っていく。
私達は後を急いで追う。




