40:ドハルバティ公爵家①
ドハルバティ公爵家。
おじさん2人と精霊2人は早朝に訪れると、使用人の制止を振り解き公爵の執務室へと向かう。
困惑した使用人達が離れて後ろから後に続く。
ブラン辺境伯は隣同士の領地なのもあり、度々公爵家には来たことがあったので自然に誘導している。
執務室の扉を開けるとドハルバティ公爵が執務机に書類を並べている所だった。
入ってきたおじさん2人を虚ろな目で見る。
顔色は不気味に青白く、生気がない。
少なくともブラン辺境伯は見たこともない表情だ。
シマ社長とモモ先生はドハルバティ公爵の胸元から邪気が出ていることに気がついた。
「お久しぶりです、ドハルバティ公。急用ありましたので罷り越しました。ちょっと宜しいでしょうか?」
「テオドール君、久しぶりだね。何の用だい?」
相変わらず表情は動かない。
「あぁ、やっぱり操られてるのぅ〜」
「そうだね。…テオドール君、あとはボク達に任せて。エヴァンス君と共に他の人間が邪魔しないように見張ってくれ。直ぐ終わらせる」
「「ホーリー」」
「ぎゃあああ」
2人が唱え達瞬間、邪神の欠片の断末魔が響き渡る。
今回の欠片はとてもとても小さいので、あっという間に片付く。胸の辺りから出ていた瘴気もキレイになくなった。これがもう少し大きい欠片だったら、浄化の力が強いシャーロットを呼ばないといけなかった。セーフだ。
見ると、ドハルバティ公爵は膝から崩れ落ちていた。
「ドハルバティ公!」
ブラン辺境伯はドハルバティ公爵を慌てて受け止めると、近くのソファに横たえる。 青白い顔に僅かに頬に朱が差した。
使用人達は遠巻きに心配しながら控えている。
その間をすり抜け、ドハルバティ公爵側近が走ってやって来た。
「ブラン辺境伯!何があったのでしょうか?!閣下は!?」
「ニコライ、久しぶりだね。私も話があるんだ、人払いしてくれないか?」
「しかし…」
「これは必要なことだ。それに、最近のドハルバティ公は変わったことなかったかい?理由を知りたくないかい?」
戸惑い暫く考え込んでいたが、やがてニコライは使用人を下がらせた。
「理由をご存知なのですね?閣下が変わられたこと…」
「それは詳しい方々から話しをして頂く」
シマ社長とモモ先生が姿を現した。
「なんと!」
「君もわかるだろう?高位精霊のシマ様とモモ様だ」
「高位精霊様、顕現下さり有難う御座います」
「この館にいる精霊達が教えてくれたよ。うん、ニコライ君は大分苦労したようだね。頑張ったよ。
テオドール君、彼はそこそこ神聖魔法が使えるんだ。但し、残念なことに全く磨かれていない。
これから、出来るだけ魔法を学んでドハルバティ公爵を支えていけるようにしたら、今後この様な事になる確率は減ると思う。テオドール君からもドハルバティ公爵に進言してあげてくれないか?」
「勿論です、シマ様!」
「私が神聖魔法を使えると?」
「そうなのぅ〜。ドハルバティ公爵に暫く避けられてなかったぁ~?邪の者は神聖を嫌うのぅ」
「来訪者は君が確認して問題無い者を会わせていたようだけど。他の使用人が勝手に商人を公爵に会わせた事がなかったかい?」
「はい、御座います。問題となりましたが、今回はお咎めなしとなりました」
「ほら、見てご覧」
シマ社長がドハルバティ公爵の胸元に掛かる今にも壊れそうな首飾りを触ると禍々しい黒い霧を発しながら見る間に朽ちた。
「首飾りの先に邪神の欠片がついたもの。欠片は例え小さな小さなものでも邪な意思がある。大きさによって影響力は違うけどね」
「コイツが近くの人間を操り、より自分の力が発揮出来る所へ持って行かせたんだよ」
「このあたりの漂ってる精霊達が教えてくれたのぅ」
「つまりは商人が操られ公爵家にやって来て、たまたま応対したその使用人までも操ったんだ。そして自分を公爵の首に掛けさせたのさ。操れるように」
「では、閣下は……」
「大丈夫だ。今回は欠片がかなり小さいから、大事には至らないし、完全に浄化済だから。但し暫く眠るだろう。あの欠片は取り憑いた人の魔力を使うから…疲れてるはずさ」
「よ、良かったぁ……」
大粒の涙を流すニコライを精霊2人が慰める。
シマ社長は片翼でテシテシしてるし、モモ先生は小さなお手々でテシテシしている。
おじさん2人は(うらやましぃ―!!)と、内心ぐぬぐぬしていたが、いい大人なので態度には出さない。




